大阪の富田林といえば「寺内町」と呼ばれる戦国時代の宗教自治都市の古い建物が残る情緒あふれる町だと聞いていた。
ところがこの寺内町を歩いていると、ところどころの家並みの向こうになんだか謎の大建造物が見え隠れするではないか。
すわっ!これは富田林のサグラダ・ファミリアか、はたまた太陽の塔か?
話が違うぞ、富田林!
というか「すわっ!」ってどんだけ古い言葉使ってるんだ、俺!平安時代かっ!
富田林寺内町は情緒あふれる古い町並み…のハズ
大阪南部、富田林市の寺内町(じないまち)は戦国時代に一向宗(浄土真宗)の興正寺別院を中核に開発されたの宗教自治都市が由来。
東西約400メートル、南北約350メートルの広さの中にある約500棟の建物のうち、江戸時代から昭和初期頃までに建てられた181棟の建造物が伝統的建造物に特定されています。
なるほどなるほど。
これはさすがになかなか素晴らしい町並みですなぁ。
しかしここは危険だ。
横丁の路地から現れた和服姿の妙齢のマドンナと危うくぶつかりそうになって、あら、ごめんなさい、少し急いてたもので…と振り向いたその白いうなじから大人の色香がぷんぷん漂ってくる、みたいな事故がいつ起きてもおかしくないぞ。
古い町並みでの危険な恋を知り尽くしている僕が、そんなふうに期待、もとい用心しながら歩いていると・・・
すわっ、一大事!
なんか町並みの向こうに白いうなじじゃなくって、白い宇宙船みたいなのがもわーんと見えるんですけど!
これはサグラダ・ファミリアか、はたまた太陽の塔か?
「すわっ!」とかいまどき言わないですよね?
「すわ」: 【感】突然の出来事などに驚いて発する語。「すわ一大事」
大辞林 第三版
古い町並みに身を置いているからわざと古い言葉を発しちゃったわけではありません。
本当にびっくりしたんですよ、初めてこの白い宇宙船みたいなのを見たときは。
最初は目の錯覚かと思ったけど、よくよく見てみると、かなりリアルにはっきり見えるぞ、なんか岡本太郎とガウディを足して2で割ったみたいな何かが!
長崎の平戸に行ったときに、教会と寺院のコラボを見たことがありますが、衝撃度はその2万倍。
で、これは何モノかというと、実はコレ。
そう、あの桑田清原のPLガクエンですよ!
この富田林に本庁を置く、PL(パーフェクト リバティー)教団の「大平和祈念塔」という建てものがこの正体。
富田林の人々はもちろん、大阪近郊の皆さんにとってはこれは「富田林のサグラダ・ファミリア(命名はテキトー)」としてわりとふつーの光景のようですが、初めて見た人はビビるよね。
ここは「20世紀少年」の舞台か!みたいな感じで。見たことないけど。
実は初めて見たときはビビッてそのまま帰っちゃったのですが、富田林に2回目に行った時、この寺内町の町並みとPLの大平和祈念塔(以下、PLタワー)とのコラボレーションを楽しむだけじゃなくて、もちっとタワーに接近してみようと思ったのです。
そんなわけで寺内町からPLタワーの見えるほう、見えるほうへとズンズンすすんでみたのでした。
見れば見るほどかっちょいい!PLタワー
ノォォォォォォォ。
町の向こうに聳え立つ姿、めっちゃカッコいいですわ、これ。
ちょー近未来!
白いうなじも嫌いじゃないけど、白い飛行船も悪くないぞ。
寺内町の高台を下り、近鉄富田林西口駅を越え、再び住宅街のゆるやかな丘陵を上ります。
住宅街を越え、町を抜けると、白いうなじ、じゃなかった、白い宇宙船がとうとうその全貌を現します。
しかし見た感じ、ゴールはまだまだずっと先。
結構歩いたつもりだったけど、さすがにここでギブアップか・・・・・
ほっほっほっほ。そう簡単にこの白いうなじは手に入らんのだよ。
白い宇宙船の中では死神博士みたいな白髪ロン毛のじーちゃんが高らかに笑っています。
そして後ろ手に縛られてさるぐつわをされた和服姿のマドンナの口が「た・す・け・て」と苦しそうに動くとモニターが突然乱れ、ブラックアウトするのです。
こんなとき仮面ライダーがいてくれたら・・・
待てよ、仮面ライダーはいないけど、確かこのあたりに友達の女の子住んでたな。
いざ、PLタワーへ
そんなわけで、白い宇宙船を見上げる国道沿いの王将の駐車場で彼女と落ち合い、いざ、PLタワーへと向かうことにします。
よくよく聞いてみると彼女の家は、富田林ではなく隣の堺市の登美丘(とみおか)というところだったようでした。
おおお、あのキレッキレの登美丘高校ダンス部のある登美丘ですか!
突然呼び出された挙句、渋滞もあり、ここに着くまで1時間近くかかってしまったという登美丘登美子(仮名)は、僕が車に乗りこむと、確かにナイフのエッジのようにキレッキレな様子でしたが、それはダンスが、というより車内の空気がキレ気味だったような気がしないでもありません。
丘の上にあがり、PL病院の前で左折すると、広大なPL教団の敷地内の道路に入り、目の前にどーん、とタワーが見えてきます。
「人種、民族、国境を超え、宗教的信条を超え、あらゆる戦争犠牲者の霊を祀る」ことを目的として、PL教団の2代教祖によって建てられたこの大平和祈念塔の高さは180m。
実はPL教団の理念は「人生は芸術だ」という極めて岡本太郎的なものだそうで、なるほど、そういう点ではこれほど理念を忠実に体現するシンボルはないなあーと妙に納得。
ネットの情報によると、かつてはPL教徒であるか否かは関係なく、世界平和を祈念する意志さえあれば地上135mにある展望台までは入れたようですが、最近は入れなくなっているらしいのです。
それでもまあ旅を通じて世界平和に大いなる貢献をしている私だし、30年前はジュリアナ東京とかで芸術的にキレッキレなバブリーダンスを踊ってたかもしれない登美子ならなんとか入れてくれるんじゃないか、という壮大なる希望を持ってタワーの麓まで行ってみたのでしたが…
この先にある詰所にいた警備員のおじさんは僕たちの車を見つけると両手で大きく「×」のアクション。
まるでそれは昔「俺たちひょうきん族」の番組最後の懺悔コーナーで、ニセキリストが「懺悔せよ」という意味で「×」を出すと、それが大御所だろうとアイドルだろうと問答無用で水をかぶらなければならないシーンを思い起こすほどの冷厳で不可逆的なものでした。
一瞬、目くらまし作戦として彼女に荻野目洋子の「ダンシングヒーロー」をキレッキレに踊ってもらおうかと思いましたが、現実的には平野ノラっぽくなりそうだったので、 この厳格な宗教施設には挑戦的すぎると判断し、潔く諦めることにしました。
でもまあ、ここまで接近して見られたので満足です。
残念だったわね、せっかくここまで来たのにね。
そんな声にふと隣を見ると、そこにいたのは 白いうなじから大人の色香が漂う和装のマドンナではなく、赤いワンピースからバブル臭がプンプン匂いたつボディコンの登美子でしたが、このタワーに似合うのは、意外にもこっちのほうかもしれないな、と思ったのでした。
でもなんか他の人のブログとか見てると2階までは今でも入れるみたいなんだよね。あの日だけダメだったのかな?詳しくは各自調べてみてください。
<2017年9月訪問>
最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
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