2015年の冬のよく晴れたある日曜日、スカイツリーがきれいに見えたので、日暮里駅で途中下車して、塔の見えるほう、見えるほうへとブラブラと歩いていると、雑居ビルの間から突然古びたアーケード街が現れたのでした。
そこは台東区日本堤にある「いろは会商店街」。あの「あしたのジョー」のふるさとだったのです。
今回は、そのとき突然僕の目の前に現れた、夢のようなうつつのような不思議な町での出来事を書いていますが、風のうわさではその後商店街のアーケードも取り払われ、たくさんあったジョーとその仲間のキャラクターグッズの数もずいぶん少なくなってしまったということです。
なのでここで書いているのは、その「想い出」にすぎない、ということを最初にお伝えしておきます。
突然現れたジョーのふるさと
あしたのジョーのふるさとに、迷い込んでしまいました。
冬のよく晴れたある日曜日、スカイツリーがきれいに見えたので、日暮里駅で途中下車して、塔の見えるほう、見えるほうへとブラブラと歩いていたのでした。
すると雑居ビルの間から、突然古びたアーケード街が現れたのでした。
ここは台東区日本堤にある「いろは会商店街」。
今はもうありませんが、このすぐ近くに、かつて泪橋(なみだばし)と呼ばれた橋がありました。
泪橋といえば、あしたのジョーで、丹下段平のジムがその橋の下にあったところ。
そんなわけでこの「いろは会商店街」があしたのジョーのふるさと、となっているのです。
ここは日本三大ドヤ街といわれる労働者の街、山谷にほど近い商店街。
すぐ裏には1泊2000円、3000円で泊まれる簡易宿泊所が並びます。
僕はあしたのジョーをTVアニメでも漫画でもちょっとしか知らないのですが、それでもこの有名なセリフは知っています。
この橋はな、人呼んでなみだ橋という。
いわく・・・人生にやぶれ、生活に疲れ果てて、このドヤ街に流れてきた人間達が、涙で渡る悲しい橋だからよ。三年ほど前のわしもそうだった。おめえもその一人だったはずだ・・・
だが、今度はわしとおまえとで、このなみだ橋を逆に渡り、あしたの栄光をめざして第一歩を踏み出したいと思う。わかるか、わしの言うてる意味が・・・?
少年院から出てきたジョーが、アル中の元ボクサー丹下段平と仲間の待つドヤ街に向かっている時のセリフですね。
「なみだ橋を逆に渡る」というこの有名なセリフは、当時この物語に熱狂していた人が聞くと、涙が出てくるほど懐かしいものなのだそうです。くじけそうになったり、あきらめて投げ出したくなると、この言葉を思い出して困難を克服した人々がたくさんいたのでしょう。
どんなに辛くても、歯を食いしばって頑張れば、きっと自分の力であしたを切り開くことができる。
「あしたのジョー」が多くの人々に受け入れられたのは、そんなテーマが底流に流れていたからなのだと思います。
と、そんな話をしておいてなんですが、本当の「泪橋」の名前の由来は、江戸時代、この近くにあった小塚原処刑場に向かう罪人がこの世との別れに涙を流してこの橋を渡ったことから付いたといわれています。
感動に水を差すようで申しわけありません。
当時の「いろは会商店街」の様子
いろは会商店街の店舗数は当時約30軒、「あしたのジョー のふるさと祭り」やミュージックフェスなど、あしたのジョーの街としてさまざまなイベントに取り組んでいて、ディープなファンも増えてきているようでした。
とはいえ、僕がここを訪れた日曜日の午後は、あまり人通りもなく、シャッターを下ろしたお店が多かったような気がします。
山谷の労働者も最盛期に比べればかなり少なくなったのかもしれませんね。
中を歩いてみると・・・
やはりディープです。
めっちゃディープです。
商店街の端にダンボール御殿はもちろんのこと、布団らしきものが敷いてあったりするのです。
もちろん道端で酒盛りしてるおじさんたちもよく見かけます。怖くて写真は撮れませんでしたが。
しかし最近はこのあたり、外国人のバックパッカーが多いらしいのです。
彼らにとってはドヤ街の安宿が魅力なのでしょう。
浅草も歩いて行けるし、スカイツリーも近いし、ロケーションも最高なのでしょう。
ダンボール御殿でおじさんたちに囲まれて、ワンカップをゴクゴク飲んでいるパツキンのおねーちゃんもたくさんいました。
今、フランスで大人気なんだそうです。
・・・すみません、ウソです。
いずれにせよ、なかなか見かけることのできない、ディープな商店街には間違いありません。
おっ、サチがこんなところに!
と思ったら、大通りから「いろは会商店街」アーケードへの入口のところにジョーが帰ってきてました。
190cmもあるようで、近くで見るとなかなかでかいのです。
今日は手ぶらで帰ってきているように見えますが、ときどき山谷のおじさんたちが悪戯して、コンビニのポリ袋とかを持っていたりすることもあるそうです。
ちなみに名前は「立つんだ、ジョー!」に引っ掛けて、
「立つんだ、像」
というそうです。
これも山谷のおじさんたちが考えたんでしょうか?
商店街の外もディープなスポットが
商店街からさらにスカイツリーに向かって歩いてみました。
途中で見つけた名店っぽい雰囲気のお店。
ここは「土手の伊勢屋」という老舗の天麩羅屋さん。
昼時とは全く関係ない時間だったのですが、みなさん並んでますからね。
やがて東京に住む、いや、日本に住む男性たるもの、必ず一度は憧れたことがある桃源郷への交差点が。
この交差点をピッ!と西の方へと曲がってしまえば、そこはもうめくるめくムフフの世界・・・
しかし私はそんな誘惑には負けないのだ。
信号が変わると同時にそのままとっとと通りすぎます。
都立浅草高校の横を抜け、もう間もなく隅田川畔に着こうかという頃、こんな神社を発見しました。
今戸神社は浅草七福神の1つであり、招き猫の発祥の地であり、縁結びで有名なパワースポットであり、沖田総司終焉の地である、というたくさんのタイトルを持ったホットな場所なんだそうです。知らなかった!
ここには古事記に登場する夫婦の神様である伊弉諾尊(イザナギノミコト)と伊弉冉尊(イザナミノミコト)が祀られている上に、江戸時代に「招き猫」が初めて作られたのがこのあたりだった、ということで良縁を招く神社として婚活ガールに大人気なんだそう。
もう夕方近いのに、確かに結構並んでます。
残念ながら僕はもう独身ではないので、彼女たちの幸せな人生に協力するわけにはいかないのですが、日本の人口維持のため一肌脱いで、この横あたりで婚活バーでもやってあげようかな。。。
この神社の絵馬に書かれているのは馬ではなく「カップルの招き猫」。
絵馬じゃなくて、絵猫ですな。
おまけに丸い形をしているのですが、これはなんでも「角が立たない」「円満に収まる」ように角をとってあるのだとか。
ふーん。
まあ、ゲン担ぎもいいけど、若い人はゲンばっかり担いでないで行動しないとね。
書を捨てよ、町へ出よう。
ブラを捨て、旅に出よう。
草を食うな、肉を食え。
やっぱ、婚活バーだな。
隅田川の土手に出ると、スカイツリーが目の前に見えたので、今日のゴールはこのあたりにします。
思わぬところに迷い込んでしまいましたが、これこそテキトー散歩の醍醐味!
楽しい気分で来た道を戻っていると、またこの看板が。
確かここを西に曲がると鶯谷駅への近道になるんじゃないかな。。。
書を捨てよ、町へ出よう。
ブラを捨て、旅に出よう。
草を食うな、肉を食え。
<2015年1月訪問>
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