黒部峡谷鉄道と言えば、宇奈月温泉から欅平(けやきだいら)までの20キロを、黒部峡谷の絶景に沿ってトロッコ列車で走る、日本有数の山岳鉄道。
終点の欅平は、黒部川の両岸に険しい断崖が迫り、どう考えてももうこれ以上先にはすすめまへんわ、という場所にあるため、黒部峡谷鉄道に乗ってここまでやってきた観光客は、この欅平駅の周辺を散策してそのまま宇奈月へと戻るしかないのですが、実はこの先に行ける方法があるのです。
今回はその先の未知の世界へと進める特別なツアー「黒部渓谷パノラマ展望ツアー」に参加したときのお話です。
未知の世界へ行ける2つの方法
黒部峡谷鉄道の終点、欅平から先に行ける方法は2つあります。
ひとつは、この先の工事関係者だけが利用する地下トンネルやらエレベーターやらインクラインと呼ばれる地下ケーブルを使って立山黒部アルペンルートの途中、黒部ダムまで抜ける方法。
これは黒部の電源開発をしている関西電力が、水力発電事業理解促進のための見学会として「関電黒部ルート見学会」という形で一般の参加者を無料で案内しています。
しかしこれが大人気で毎回抽選必至。開催日も限られているので、なかなか思うようには参加できないレアなコースなのです。
もうひとつが、2015年から行われるようになった「黒部峡谷パノラマ展望ツアー」。
これは関電の黒部ルート見学会ほどは本格的ではないのですが、普通は入れない欅平から先の工事関係者だけの区域に途中まで潜入できる、というスペシャルな内容のものを有料のツアーとして一般販売しているのです。
そんなわけで今回はこの有料のスペシャルツアーに参加してみました。
ホントはもちろん関電黒部ルートの方に行きたいのですが、日程も合わず、抽選にもあたりそうもないので手っ取り早く金で解決ですよ。。。
まあ、パノラマ展望ツアーも人気があるので、早めに予約しないと参加できないこともあるかもしれませんが。
いざ、欅平の先へ
このツアーの参加者は黒部峡谷鉄道の宇奈月駅の2階で受付を行いますが、欅平までは一般のお客さんと同じようにトロッコ列車に乗って移動します。
終点欅平駅に着くと、パノラマ展望ツアーの参加者は駅舎の方へと向かう一般客とは反対歩行へ、長いホームを黒部川のさらに奥のほうに向かってすすみます。
そして参加者全員が集められ、なにやら物々しい説明とともにヘルメットが渡されます。
このツアーは1日4便催行されていて、僕たちはこの日の第2便目だったのですが、参加者は約50名。
定員以上の参加者だったらしく、50名が、さらに2つの班に分かれての行動でした。
やがて宇奈月から乗ってきたのとは別のトロッコがホームに入線してきて、僕たちはその列車に乗りこみます。
欅平駅のホームから先はすぐにトンネルになっていて、列車はそのまま黒部の山塊を掘り抜いたトンネルの中へ、ゴトリゴトリとゆっくりと進みはじめます。
距離にすると数百メートルくらいでしょうか、5分も経たないうちにトロッコは地中に設けられた「欅平下部」という乗降場(正式には関西電力黒部専用鉄道の駅)に停まります。
この施設は関西電力の工事関係者のための専用鉄道なので、本来はこんなに立派な看板はいらないのでしょうから、このパノラマ展望ツアーを受け入れるにあたってわざわざきれいに整備したのかもしれませんね。
トロッコを下車すると、目の前に「竪坑エレベーター」の乗り口があります。
標高が600mという表示がありますが、このあとエレベーターで200mの高さを昇ることになります。
人数が多いので、参加者は2班に分かれてエレベーターへ。
中は普通の大型エレベーターです。
違うところは階数表示じゃなくて、高さ表示になっていることくらいかなー、と思っていたんですが、実はこのエレベーターも立派な関西電力黒部専用鉄道路線の一種なんだそうです。
竪坑エレベーターの上部(正式には「欅平上部駅」)。
欅平下部駅から200m昇ってきたので、標高も800mになっています。
エレベーターから、ちゃんと線路が出ているのがわかりますか?
実はトロッコ列車や機関車なども、このエレベーターに乗せて上げ下げしている、ということなのですが、入るんかいな?
憧れの「黒部川第四発電所前ゆき」列車
僕たちが参加している「パノラマ展望ツアー」は、トロッコ列車に乗るのはここまでで、ここからトンネル内を少し歩いて外に出て、登山道で展望台についたら終わりなのですが、実はこの欅平上部駅にはさらに奥に進む「黒部川第四発電所前」行きというのりばがあるのです。
きれいな看板してるだろ。ウソみたいだろ。旅客営業してないんだぜ。
しかもこんなふうに時刻表もあり、毎日定期列車も走っているのですが、一般人はこの列車に乗ることはできないのです。。。
そう、列車に乗りこんでいくのは重装備、もしくは工事服の関西電力の関係者のみ。
この先は、黒部川第四発電所前までの6.5kmをこの関西電力黒部専用鉄道のトロッコ列車が走っているのですが、途中には高熱隧道とよばれる超高温の岩盤区間があったり、仙人谷の付近では一瞬地上に出て黒部川の鉄橋を渡ったりと、聞いてるだけでよだれが出てきそうなレアな区間が続くのだそうです。
ちなみにこれが、この超高温の区間を通り抜けるため、特殊に加工された耐熱仕様のトロッコ車両。
おおおおおおおお、行ってみたいぞ、黒部川第四発電所前!!!
トロッコの本当の終点、黒部川第四発電所前に着いたら、そこから先はインクラインと呼ばれるケーブルカーと黒部トンネル内の専用バスを乗り継げば、あの黒部ダムへと抜けられるのですが、この「パノラマ展望ツアー」では行けません。
一般人が唯一そこに行く方法が、関電が社会貢献活動としてやっている例の「黒部ルート見学会」。
やっぱり次回は高貴なパワーで抽選をくぐり抜けて、そっちに参加しよ。
そしてパノラマ展望台へ
さて、肝心のパノラマ展望ツアーの方ですが、ここから先はトンネル内の線路の上を歩いて外に向かいます。
黒部川第四発電所とは反対の方向なので、ここはもう列車は走っていないんだと思いますが。
歩く距離は2~300m程度なので、すぐに終わってしまうのですが、最後は急な上りになります。
こんな急勾配に線路ついてるけど、トロッコ、上り下りできたんですかね?
外に出るとちょっとしたスペースがあって、ここで休憩。
ここからでもなかなかの眺望です。
今まで僕たちを誘導してくれた関電のおじさんたちから、ここで地元の山岳会のガイドさんにバトンタッチ。
でもってここから先の登山道は自己責任で、ということになっています。
いやー、そんなに脅さないでくださいよ先生!
事前にネットで見ると、結構怖い道を歩く、的な記載もあったので、地位と名誉と高いところが苦手な僕は、ここから先にはいかずに待っていようか、と思っていたのですが、誰もリタイヤしないようなので、(いつでもリタイヤできるように)一番後ろからついて行ってみることにしました。
結果、まあ何とかなるでしょ、という感じだったので、そのまま頂上の展望台へ。
頂上からは360℃まさにパノラマ展望台でしたが、標高は858メートルと意外に低かったですね。なんかめっちゃ上ってきた感あったけど。
頂上での滞在時間は20分くらいだったでしょうか、帰りはズンズン下って、再びトンネル内に入り、行きのコースをそのまま逆行して欅平に戻ったのでした。
パノラマ展望ツアー、確かにレア感はあったけど、やっぱ黒部川第四発電所前ゆきの看板見ちゃうとそっちも行きたくなっちゃうよね。
いつか抽選が当たりますように。
<2016年8月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
黒部峡谷パノラマ展望ツアーの基本情報
黒部峡谷パノラマ展望ツアーへの旅
黒部峡谷鉄道に乗るなら全力で宇奈月温泉「延楽」をおすすめします!
その理由はこれ!
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