江ノ電の「鎌倉高校前駅」のすぐわきにある踏切は、「スラムダンク」など多くの作品に登場し、湘南のアニメの聖地と言われています。
丘の上の鎌倉高校から急な坂道を下ったところにある、その踏切の向こうには見渡す限りの青い海。そしてその前をときどき通過するのは、小さな小さな江ノ電の電車。
そんなシチュエーションで今でも人気の鎌倉高校前駅ですが、僕は偶然その前を通りがかって、大学時代のある女の子のことを思い出してしまったお話です。
きっかけは葉山の重要文化財「旧加地邸」
その夏の日、僕が向かっていたのは湘南の葉山。
逗子駅からタクシーに乗って到着したのは、この建物。
ま、ま、まさかこれ、風祭さまの別荘なんですか?
これは旧帝国ホテルを設計した著名な建築家、F.L.ライトの愛弟子である建築家・遠藤新さんにより設計された「旧加地邸」。
残念ながらこれは僕の別荘ではなく、初代の三井物産ロンドン支店長を務めた加地俊夫氏の別邸として昭和3年に建てられたものなんです
重要文化財に登録されているこの「旧加地邸」、普段は公開されていないのですが、僕たちはこの建物をセレブリティ向けの長期滞在施設やユニークなパーティー会場として貸出しできないか、という視察で訪れたのでした。
詳細は、またプランが完成した折にでも詳しくお伝えするかもしれませんが、まさに葉山という土地に相応しい邸宅でした。
おもわずそのまま僕が買い取っちゃおうかと思いましたが、「御用邸もあるんだから余計な買い物はするな」と宮内庁長官に怒られそうだったのでやめておきました。
そのままチャリで葉山の海へ
本来の目的を終え、いったん逗子まで戻ったのですが、せっかく真夏の葉山に来たのに、このまま鞄をかかえて帰るだけじゃなんのための人生かわからない、という気がしてきたので、逗子駅から電車に乗るのをやめ、市役所にあったシェアサイクルを借りてみました。
このシェアサイクルは、サイクルステーションがある場所ならどこでも乗り捨てができるので、このまま葉山から江の島あたりまで自転車で行ってみようと思います。
まずはお決まりの葉山マリーナへ。
僕のクルーザーはどこに置いてあるのかな、と探してみたのですが、よく考えてみるともともとそんなものは持ってなかったので見つかるはずありません。
そんなわけで、特にここに用事はないので海岸沿いに御用邸方面へと南下します。
こんなに静かな夏の葉山は初めてでした(といっても夏の葉山は2回目なので、ほぼ想像で言ってます)。
本来であれば、8月5日の葉山なんて道路は渋滞、ビーチは人で埋め尽くされるはずです(これはタクシーの運ちゃんが言ってました)。
ただ、夏の暑さだけがいつもと変わらず、いや、いつも以上にそこにありました。
2020、やっぱり特別な夏ですね。
太陽の季節の碑
海沿いの道で逗子海岸まで戻ると「太陽の季節」の碑がありました。
これは石原慎太郎(かれはもともとは政治家ではなく作家ですよ)の、デビュー作「太陽の季節」の芥川賞受賞50周年を記念して造られた文学碑。
ヨットを愛した慎太郎さんが、幼少期から逗子の海を遊び場にしていたことからここにつくられたんですね。
「太陽の季節」は映画化もされ、主人公役の石原裕次郎が、ナンパした女の子とムフフになり妊娠、中絶・・・以下略といったストーリーは「もはや戦後ではない」と言われたこの当時(昭和31年)でもかなり刺激的で、「太陽族」という流行語を生み、社会現象まで巻き起こす一方、「倫理性を欠く」という批判も多かったと言われています。
そのまま国道134号線に入り、海岸沿いをチャリで快調に飛ばし、鎌倉との市境の峠に入ります。
トンネルの手前でいきなり自転車通行帯も歩道もなくなったのに、車はビュンビュン走っているので一時は撤退も覚悟しましたが、トンネル内には1メートルもない路肩があったので、そろりそろりと手押しでなんとか峠越え。
目の前に江の島を望む稲村ケ崎公園は夕日の名所らしく、早くも何人かがスタンバっていました。
とりあえず江の島あたりまで行こうと思ってズンズン進んでいると、次第に右側(北側)から江ノ電の線路が迫ってきて、やがて海岸線と並走するかのように寄り添い始めます。
あれ、この感じ、何かで見たことあるぞ、と気づいたのが今回の話のメインイベントとなります。
そして初の鎌倉高校前踏切へ
そうです、あの「スラムダンク」のオープニングに登場する場所としてアニメファンの聖地と呼ばれる「鎌倉高校前1号踏切」がきっとこの近くにあるだろう、ということに気づいたのでした。
僕は「スラムダンク」もそのほかの作品も読んだことがないので、実はその踏切の風景と作品の中で出会ったことはありません。
けれども「鎌倉高校」という言葉に魅かれていた僕は、いつかその踏切を見てみたい、と思っていたのでした。
その踏切は、鎌倉高校前駅の少し東、鎌倉高校方面から下ってきた坂道が国道にぶつかる手前にあります。
ちょうど電車が来る前だったのでしょう、何人かの人たちが線路の脇や坂の上でカメラを構えていたので、僕もあわてて1枚撮影してみましたが、車がちょっと邪魔でしたね。
次の電車が来るまでの間、鎌倉高校前駅へ行ってみます。
ホームに立つと、本当に目の前に海が見えました。
鎌倉高校は女優の鈴木保奈美さんの母校ですが、県立の伝統校で、僕の先輩にも彼女と同級生だった人がいます。
そして僕の大学時代のクラスメイトにも鎌倉高校出身の女の子がいました。
僕は彼女とそれほど親しかったわけではないので、本当のところはわかりませんが、彼女は静かで真面目なタイプでした。
化粧も洋服もあっさりしていた記憶がありますが、そのぶんすごく自然な肌の白さと、すごく自然な細身のスタイルが印象的でした。
「鎌倉」という地名と、そんな彼女の姿が、なぜかとても似つかわしく感じていたことを覚えています。
こうして鎌倉高校前駅のホームに立ってみると、今でもホームの端っこで、文庫本を読みながら列車を待っている彼女と出会ってもおかしくないような気がしました。
再び列車がやってくる時間が近づいてきました。
真っ青な海と短い単線の踏切。
確かにこれだけでも十分絵になる構図ですが、ここに電車がやってくると、なぜこんなにも絵になる1枚になるのでしょうか?
鎌倉高校前駅1号踏切。
そこはいつか行こうと思ってなかなか行けなかった場所でしたが、なんとなく想像していた通り、ちょっと不思議な気分になる場所でした。
<2020年8月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
鎌倉高校前1号踏切の基本情報
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