知ってる人は知ってると思いますが、僕は日本全国の「美しい小学校」マニアです。
マニアと言っても旅先で見かける美しい小学校を、そっと写真におさめたりする程度ですが、たいていは中に入ることができず、外観を写すくらいしかできません。
しかし、年に数回、特別に中の見学もできる歴史的建築の小学校がある、と聞いてぜひ一度行ってみたいと思っていたのです。
それが愛媛県八幡浜市の「日土小学校」。
そしてそこは想像以上に素晴らしいところでした。
どこにでもあるような山村に、どうしてこんなに美しい小学校があるのか、と思うくらい。
伊予大洲は「肱川あらし」の季節
前夜、松山に泊まって始発列車に乗ると、今やすっかり映えスポットとして人気となった下灘駅を過ぎる頃が日の出の時間帯。
伊予灘は線路の北に面しているので日の出そのものは見られませんが、うっすらとピンク色に染まっていく空がしばらくの間列車と並走していました。
気象条件が合えば、本当はこの朝、行ってみたいところがあったのでした。
それは大洲の肱川あらし。
肱川あらしというのは、晴れた朝、大洲盆地で発生した冷気が強風とともに肱川を一気にくだって、河口の長浜の町が真白な霧に包まれる、という珍しい自然現象。
もちろん毎日見られるわけではないのですが、伊予の冬の風物詩として、一度は見てみたかったのです。
しかし残念ながらこの日の長浜はよく晴れていたものの、肱川あらしは発生せず。
肱川あらしが出ていれば、それが一番ダイナミックに見える展望台に登ってみようと思っていたのですが、ご覧の状況だったので、途中下車せずに先に進みました。
この日は寒波の影響で、南国愛媛も寒い朝だったのですが、前日の昼も気温があがらなかったので、寒暖の差があまりなかったのかもしれませんね。
段々畑のその奥に
そんなわけで、この日の目的地、日土小学校の最寄駅、八幡浜で下車します。
日土小学校まで公共交通機関で行くのはなかなかハードルが高く、まず八幡浜駅からバスに乗って旧保内町の「喜木」という停留所で降り、そこからさらに川沿いを上流に向かって3キロほど歩くことになります。
進むと、両側の山の急斜面は見事なまでのみかん畑。
道沿いの川には錦鯉?
やがて山あいに日土の小さな集落が現れます。
八幡浜市立日土小学校があるのはこんなところ。
国の重要文化財の現役小学校
この日土小学校は、愛媛県大洲市出身の建築家、松村正恒氏により設計された木造のモダニズム建築で、国の重要文化財。
日本建築学会賞も受賞したこの歴史的建造物は、現役の小学校でありながら、春休み・夏休み・冬休みにそれぞれ1日だけ、一般向けの見学会が行われているのです。
美しい小学校マニアの僕としてはぜひ一度見てみたかったので、今年の冬休みの見学会に合わせてやってきたのでした。
校舎に入ると、見てくださいよ、この美しい階段のフォルム。
連続する窓からいっぱいに日が差し込んで、これほど開放感のある学校の廊下を僕は知りません。
この日土小学校のもっとも特徴的な空間が、この小さな、小さな図書室。
色ガラスの引き戸の外には真下を流れる喜木川に乗り出すようにつくられたテラス。
晴れた日は、子どもたちはきっとここで川からの優しい風を感じながら読書をするのでしょう。
現役小学校だから感じるこどもたちの息吹
四国の瀬戸内国際芸術祭や越後妻有の大地の芸術祭など、廃校となった校舎を活用したアートで、校舎の中に入ることはあるのですが、やっぱり現役の学校だと子供たちの息吹があたたかいまま残っているのを感じます。
相合傘だと思ったら違ったけど。
どの教室も机は10個前後、おそらくそれが1学年の総数なのでしょう。
ストーブを囲った、明るい教室にゆったりとした時間が流れています。
担任のメグ先生。
こんな素敵な学校でだったら、校長せんせーやってみてもいいかな、と思います。
小学生にナイスミドルの魅力がわかるかどうか、ちょっと自信ないけど、愛媛大学教育学部卒の新任女子先生は恋に堕ちちゃいそうなのでやめておきますが。
どこかの大学の建築学の学生でしょうか、意外にも若い人たちもたくさん見学に来てました。
増築してできた新校舎も、木の香りがプンプン漂ってきそうな明るい空間。
愛媛の山あいのみかん畑に囲まれたところに、こんな天国のような小学校があるなんてね。
コンビニもゲーセンも、今はもう駄菓子屋さえも近くにないけど、こんな学校に通ってみたかったな、と思いました。
<2018年12月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
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日土小学校への旅
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