最近の僕の旅のバイブルのひとつになっている「地元パン」の本。
日本全国各地ならではのレトロな菓子パンやユニークなオリジナルパンがこれでもか、と紹介されているので、ときどき旅先で買って食べ歩いています。
そんな地元パンで、けっこう大々的に紹介されていた、豊橋にある洋菓子店「ボン . 千賀」に行ってみたお話です。
レトロかわいい「ボン . 千賀」
仕事で豊橋に何日か滞在することになったので、出発前に豊橋の地元パンを探してみると、巻頭に堂々2ページを使って紹介されているお店がありました。
全国あまたあるパンが掲載されている中、この扱いは横綱まではいかないけど大関級の地元パン名店に違いない!
それが豊橋駅前大通りにある「ボン . 千賀」。
新しくできた高層マンションが立ち並び、豊橋鉄道の路面電車が行き交う賑やかな通りの一画に、そこだけ昭和が取り残されたような2階建ての建物がありました。
前面ガラス張りの店内には、ショーケースの中に並ぶ生菓子と、焼き立てパンの陳列カウンター。
そして今まで見たこともないような弾力のあるフォントの看板。
ボン●!かわいい💛
「ボン」というのはフランス語で「おいしい」という意味があり、かつてはモダンなお店の象徴として使われていた、ということですが、それにしてもこんなに弾む必要があるのか!
そう、ここはムダにレトロかわいいお店だったのです。
昭和レトロな喫茶室も併設
店内に入ると、焼き立ての惣菜パンのほかに、袋づめにされたオリジナル菓子パンも並んでいます。
豊橋の地元パンと言われるのは、まさにこれらの菓子パンなのですが、すぐに買って帰るのはNGです。
そう、「ボン . 千賀」には併設の喫茶室があるのです。
ここもレトロでめちゃめちゃいい感じなので、菓子パンは持ち帰りにして、惣菜パンとコーヒーで喫茶室も楽しんでみることにしました。
「ボン . 千賀」は大正元年に菓子卸業「千賀製菓」として創業、終戦後から菓子やパンの製造がメインとなり、このカフェは1979年の店舗改装でできたのだそうです。いわゆるアラフィフですね。
まるで夜はお酒が出てきそうなカウンター。しかも昼はママが手作りランチを食べさせてくれるやつですね。
現代のベーカリー併設のおしゃれなカフェとは183°くらい違います。
昔見たことのあるようなアイスクリーム、もとい、アイスクーヘンの冷蔵庫。
そして出てきたのはコーヒーとあたためたクリームチーズパン。
ん?ピザ豆オーダーしてないんですけど!
コーヒーの付け合わせで出てるくる「豆菓子」。このあたりはさすがに愛知県ですね。
店内ではパンの横でしれっと「地元パン」の本も売っています。
なんと著者の甲斐みのりさん監修の地元パングッズまでありました。
やっぱりこの本をみて全国各地からやってくる人が多いんでしょうね。
「ボン . 千賀」の「パピロ」と「レモンクッキー」
喫茶室では地元パンもイートインで食べられるのですが、今回はホテルで食べることにしました。
持ち帰りにした地元パンは「パピロ」と「レモンクッキー」。
「ボン . 千賀」の中でも特に特徴的な地元パンとされている代表的な2つのパンです。
パピロは一見、何の変哲もないコッペパンのように見えますが、中に砂糖を混ぜたバタークリームが入っていて、まさに昭和の懐かしい味。
そしてこちらがレモンクッキー。クッキーと名前がついているように、パン生地はかなり歯ごたえがあって、甘食をめっちゃ固くしたような食感です。
中にレモン風味のクリームが入っていますが、とにかくクッキー部分が大きいので、思った以上にボリュームがあります。そして口の中が渇くやつ。
このレモンクッキー、またの名をデセール(フランス語でデザートのこと)というそうです。
豊橋市民、こんなに口の乾くものをデザートにしてるなんてすごい!
実は東三河地域では「デセール」は「デザート」のことではなく、地域のローカル菓子パンの一種で、「ボン.千賀」以外にも多くのパン屋さんで独自のデセールを販売しているのだそうです。
そんなわけで地元パンだけじゃなくて、レトロ喫茶も楽しめる「ボン . 千賀」、わりと最強でした!
幻のローカルパン、「たけの子パン」をめぐる冒険
実はこのあたりにはもうひとつ有名な地元パンがあるのです。
それが豊橋の隣、豊川市のヤマトパンでつくられている「たけの子パン」。
1日の出荷数も限られ、暑い夏場は生産されないことから「幻のローカルパン」とも言われています。
「幻」とか言われると、意地でも手に入れなきゃいけないような気がしてきた・・・
たけの子パンが買えるのは、豊川にあるヤマトパンの直営店と近隣の一部のスーパーに限定され、豊橋だと駅のキオスク(ベルマート)か市内の「クックマート」というスーパー。
ということで、豊橋に着いた日の夜、さっそくトラムに乗って郊外のクックマートまでいってみます。
が、たけの子ぱんの「た」の字もありませんでした。市内から往復2時間もかけたのに!
たけの子パンはクックマートでは14時頃から店頭に並ぶので、夜だともう売り切れちゃうんですね。
駅のキオスクは火・木曜の限定販売ということなので、さっそく火曜日の朝、行ってみます。
あー、たけの子パンは14時くらいにならないと入ってこないんだわ
残念ながらこの日も仕事で昼間は動きがとれず。たけの子パン、たしかに難易度高い!
そんなわけで翌水曜日、この日は昼間に時間があったので、14時の販売開始に合わせ、わざわざ名鉄に乗って豊川のクックマートに行ってみます。
めちゃめちゃ売ってた!
こうして汗と涙の苦難の冒険の末、ついにたけの子パン、ゲットしました!
ただ、帰りの新幹線に乗るために駅に戻るとキオスクにもあったけど!
火・木限定販売ちゃうんかい!わざわざ豊川まで行っちまったぞ、キオスク!
そんなわけで、帰りの新幹線で、いざ幻のローカルパンとご対面。
たけの子パン、といっても中にたけのこが入っているわけではありません。
この形が取れたてのタケノコそっくりなことから、たけの子パンという名前になったのだそうです。
中に入っているのは、ほどよい甘さのホイップクリーム。
このホイップクリームが溶けてしまうため、夏場は販売していないのだそうです。
外はサクサク、中はふわふわ。
たけの子パンは、たしかに「幻のローカルパン」にふさわしい難易度と味でした。
<2023年10月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
「ボン.千賀」への旅
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