ショートストーリー 夏の終わりのなごり雪【大分県】 謎の美女、というイメージのわりには、彼女は薄く壊れやすいガラスの幕のような、透明なベールをまとっているように見えました。いや、そもそも謎の美女というのは僕が勝手に思い込んでいただけで、別に彼女が自分で謎の女だと言ったわけではありませんでした... 2021.08.14 ショートストーリー
ショートストーリー 花のように花のように ~奄美の夜~ 勇気をしぼってその小料理屋ののれんをくぐると、カウンター越しに予想外に若い女性が一人、所在なさげに佇んでいました。店内には他に客はありません。視線があった時、瞳の奥にちょっと戸惑いの漣がたったように見えましたが、彼女はすぐに少し不器用そうな... 2021.03.05 ショートストーリー
ショートストーリー ひなたの匂い ~魔法のバスチケット~【長崎県/熊本県】 昔から路線バスに乗るのが好きでした。古くさい田舎のオンボロバスの一番後ろの席に座って、ゆらゆらと左右に体を振り回されたり、ピョンピョンと上下に突き上げられたりしながらどこまでもどこまでも乗っていくのが好きだったのです。そのバスは遅れていまし... 2020.11.29 ショートストーリー
ショートストーリー 頭ヶ島天主堂/世界遺産の天主堂のひと【長崎県・新上五島町】 Ⓒながさき旅ネット頭ヶ島(かしらがしま)天主堂は、有川から1日3往復(当時)だけ運行されるバスの終点、島の最東端にありました。有川にある病院からの帰りでしょうか、全員が顔なじみらしい数人のお年寄りと、この島の人は誰も知らないよそ者の僕を乗せ... 2020.09.03 ショートストーリー
ショートストーリー 幸せの黄色いバス ―バス停ものがたりVol.1【鹿児島県】 バスを待っていました。 鹿児島に出張していたときのことです。 初めて訪れる小さな町の、南国風の街路樹の下のバス停でした。 僕の隣には、南国にしては珍しい、透きとおるように色の白い女子高生がいるだけでした。 「バス、なかなか来ないね」 「1日... 2020.02.15 ショートストーリー
ショートストーリー 夜明駅 2018 【大分県・日田市】 大分にはいらっしゃらないんですか?僕が九州に向かっていることをつぶやくと、あるSNSの旅のコミュニティにいる女性からコメントがありました。僕と彼女はお互いにフォローしあっていて、オンラインでは時々話しているものの、もちろん今まで一度も面識な... 2020.01.01 ショートストーリー