なんでも福岡の筑豊地域に「まさに世紀末というか、世界の終わりというか、とにかくすごい」駅があるというのです。
僕が想像する「世界の終わり」は村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」のような観念的というか、形而上学的というか、まあ非常に高貴でグレートなものなのですが、市井の庶民のみなさまが想像する「世界の終わり」というと、「マッドマックス」とか「インディージョーンズ」みたいなハリウッド大衆映画のイメージなんでしょうか。
うるせーよ、早く先に進め、という声が今にも聞こえてきそうなので、前書きはこのくらいにして話を進めましょう。
さて、日本で最も「世界の終わり的」な駅は、はたして高貴な観念上の存在なのか、それとも大衆映画的な存在なのか?(しつこい…)
日本で一番「世界の終わり的」な駅は、JR後藤寺線・船尾駅
日本で一番「世界の終わり的」な駅と呼ばれるのはJR後藤寺線の船尾駅。福岡県の筑豊地域、田川市にあります。
筑豊と言えば五木寛之の「青春の門」(古っ!)
日本の近代化を支えた黒いダイヤ、石炭の産地として昭和半ばまで大変賑わった地域ですが、炭鉱が閉山となったあとは衰退する一方。
かつては網の目のように張り巡らされていた筑豊地域の鉄道網も多くが廃線となり、現在は主要な路線が細々と運行している程度ですが、幹線でもないのに奇跡的に残っているJR後藤寺線にこの船尾駅はあるのです。
JR後藤寺線は、新飯塚駅と田川後藤寺駅を結ぶ 13.3㎞の短いローカル線。
博多方面からだと西側の新飯塚から乗るほうが便利ですが、僕は大分からの帰りに寄ったので、東側の田川後藤寺駅から乗車しました。
田川後藤寺駅は、筑豊の炭鉱都市だった田川の中心地のひとつ。
今も往時の賑いを偲ばせる銀天街などもありますが、現在の人口は最盛期の半分以下。いい感じの衰退っぷりが正直、僕の好みです、不謹慎ですが。
後藤寺線の車両はディーゼルカー1両でしたが、お客さんはそこそこ乗っていました。
そして「世界の終わり駅」へ。
船尾駅は田川後藤寺駅からひとつめ、約5分であっという間に到着しますので、けっして気を抜かず、ぜひ心してご乗車ください。
なぜかって?
それは駅に到着するとこんな感じだからです。
なんだよ、このシュールな世界観!
思わず降りちまったぜ!(いや、降りるつもりだったろ!)
しかし僕的にもっと刺さったのは、発車する列車を見送ったときのこのシーン。
ちょっとカッコよすぎないか?
これ、確かに世界の終わりだわ。
もう形而上学でも大衆映画でもどーでもいいけど、とにかくこれは確実に世界の終わりっぽい。
船尾駅の目の前は筑豊・麻生財閥のセメント工場
この船尾駅の目の前にどーん、とあるのは、麻生セメントの田川工場。
なので言い方を変えると、この船尾駅は「日本で一番セメント工場に近い駅」だと言えます。
福岡・筑豊の麻生といえば、みなさんもよくご存じのあの「あそーさん」ですよ!
あの「あそーさん」も、かつてこの麻生セメントの社長を務めていた時代があるのですが、いやもう筑豊に行くと麻生財閥、すごいんですわ。
筑豊の飯塚出身の友達と、麻生財閥の話をしたとき
そういえば飯塚のホテルから外を見たら、川向うに麻生病院がでーんと建ってた!
とか言ったら、
川沿いのは普通のホテルじゃないような気がするんだけど・・・
と突っ込まれて一瞬ドキッとしたのは秘密です。
ふつーのビジネスホテルもあります。調べてみると。
…そんなわけで、次の列車まで少し駅の外に出て歩いてみましょう。
世界の終わりを彷徨ってみる
と言っても、駅前には麻生セメント以外、何もありません。
ダンプカーが石灰の白煙をあげてときどき横を通りすぎるだけ。
少し歩くと郵便局と床屋さんが1軒ありましたが、その先を進んでもパラパラと住宅があるくらいで喫茶店どころか商店的なものもありません。
1キロちょっと歩いて県道に出れば、コンビニやレストランのようなものはあるようですが、この日は真夏の酷暑だったので、散歩はあきらめて早々に駅に戻ります。
駅に戻ったのはいいものの、ここは駅舎もない無人駅。
おまけに石灰紛が結構すごくて、ホームの椅子も白い煤がしみ込んでいるかのよう。
だって列車走るとこんな感じですよ。
もともとこの後藤寺線は石炭や石灰石を運ぶ貨物線だったらしいので、こんな工場の近く(というか敷地内)を走っているのでしょうね。
1時間後、新飯塚駅行きの列車に乗って船尾駅を出発します。
今度は車内からいよいよ世界の終わりへと突入するですが、この車窓も凄かった!
いやあ、来てよかった。
ホントに世界の終わり感すごかった!
<2019年7月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
船尾駅の基本情報
住所:福岡県田川市弓削田
船尾駅への旅
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