フォークシンガーのイルカさんが唄った名曲「なごり雪」。
この「なごり雪」 がホームの発着メロディになっているのは、大分県の津久見駅。
なごり雪って、確か東京から去っていく君を唄った歌のはずですよね。
なぜこの九州の小さな海沿いの駅になごり雪のメロディーが流れるのか?
今回はその理由をご紹介します。
「なごり雪」は津久見出身の伊勢正三さんの作品
僕が最初に買ったレコードは「なごり雪」。
もちろん歌っていたのはフォークシンガーのイルカさん。
「なごり雪」といえばイルカさんのヒット曲として有名ですが、実はこの歌を作ったのは フォークグループ「かぐや姫」のメンバーだった伊勢正三さん。
伊勢正三さんの出身地がこの大分県津久見市だったことが、この「なごり雪」と津久見駅の関係なのです。
津久見は大分から特急で約40分、東の豊後水道、西の九州山地につながる山々に挟まれたわずかな平地に広がる人口1万8千人の小さな都市。
僕は高校野球が好きなので、元ヤクルトの川崎憲次郎などが甲子園で活躍した津久見高校の名前は知っていましたが、それ以外は全国的にあまり名前の知られた町ではありません。
伊勢正三さんはこの津久見に生まれ、中学卒業後は大分市内の高校に進学したのですが、高校時代に寮に入っていたので、毎月実家に帰省して寮に戻るときは、この駅で切なさを感じていたのだと言います。
高校を卒業して上京し、初めて詩を書いたとき、「春が来て、きれいになった君」を見つめる僕の切ない想いを表現しようとしたら駅のホームから出て行く列車の映像が思い浮かんだのだと言います。
だから彼の切なさの原点は「津久見駅」。「なごり雪」の原点も津久見駅だった、と伊勢正三さんは言っています。
エモすぎる津久見駅のカーブ
津久見駅は東九州の大幹線「日豊本線」にあるので、僕も今まで何回も通り過ぎたことがあるのですが、こうして降り立ったのは初めてでした。
駅は豊後水道の津久見湾に沿って線路が大きくカーブしている途中にあって、駅のホームも大きくカーブしたまま作られているのでした。
特に駅の跨線橋から大分方面を眺めると、ホームの線路は大きく弧を描き、その向こうのトンネルに向かって名残惜しそうにカーブしているように見えました。
このカーブはエモいな、と思いました。
時計ばかりを気にしながらホームに立っている僕。
列車のデッキには、春が来て去年よりずっときれいになったのに、遠くへと旅立ってしまう君。
発車のベルが鳴ってドアが閉まり、列車はゆっくりと動き始める。
追いかけようと思うのに、まるで魔法にかかったように足が動かず、その場で立ち尽くす僕。
やがて列車は大きく右へと弧を描き、僕の知らない町へと続くトンネルに吸い込まれてゆく。
音もなく降る、季節外れのなごり雪がホームに落ちては溶けてゆく。
・・・やばいよ、自分でこれ書きながら泣いちゃったよ。
「なごり雪」記念碑と、ホームの発着メロディ
津久見駅の1階玄関ホールには「なごり雪」の記念碑が建てられ、伊勢正三さんのメッセージと、歌詞の一部が刻まれています。
津久見駅のホームで「なごり雪」のメロディが流れるのも、そんな理由があったのです。
そのメロディは伊勢夫妻がアレンジしたピアノ曲で、2009年から流されています。
僕は列車の「発車ベル」だと思っていたのですが、実際は列車が到着する案内放送の前に流れるもので1分ほど続くでしょうか。
そりゃそうですよね、発車ベルにしてほんの5秒か10秒で終わっちゃもったいないですよね。
それではそのメロディの一部をお聞きください。
ヤバい、また泣きそうになった!
ここで聞く「なごり雪」はグッときますね。
映画「なごり雪」のロケ地は臼杵
この曲をモチーフにして、大林宣彦監督によって製作された映画「なごり雪」があります。
大林監督が津久見の隣町「臼杵」に惚れ込んで、そこで映画を撮ろうと考えたときに思い浮かんだのが、この「なごり雪」だったのだそうです。
映画の主題歌を唄うのは、もちろん伊勢正三さん。
臼杵の美しい町並みが、この切ないメロディーにマッチしてとても情緒的な作品でもあります。
臼杵にはロケ地めぐり専用のパンフレットもあり、僕ももちろん巡ったのですが、その話はまた今度別の形で紹介しますね。
<2019年1月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
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