僕は以前絶景写真集が好きでよく見ていた頃がありました。
そこで偶然目にしたのが岩手・小岩井農場の一本桜。雄大な岩手山を背景にして、満開の桜の花びらをたたえながら、広い大地にたったひとりで凛と立つその姿は、見事というほかありませんでした。
長い冬に耐えて春を待ち、ほかの桜たちが咲き終わった5月、ようやくその全身いっぱいに淡いピンクの花をまとうその姿。なんだか希望が見えてくると思いませんか?
小岩井農場一本桜との出会い
小岩井農場、一本桜。
図書館で見た「日本の絶景」みたいなタイトルの写真集で、僕はこの一本桜を知ったのでした。
それは真冬の白い雪原の上で、凍って割れてしまいそうな白い雪の花を咲かせている、幻想的な一本桜の写真でしたが、いつか桜の季節にここに行ってみたい、と思っていたのでした。
反面、こういった絶景写真は、プロのカメラマンが最高の一瞬を狙って撮った写真が多く、実際に目の前にした眺めがあまりにも違いすぎて、がっかりしたという経験は少なくありませんでした。
いや、むしろ写真にかなうものはほとんどなかった、といったほうがいいかもしれません。
だからわざわざここまで来てみたものの、実際にそれを目にするのはちょっと怖かったのです。
僕がこの一本桜に会いに行ったのは5月のGWも終わりの頃。小岩井農場の一本桜の見頃は、例年GWの後半なのだと言います。
前日に弘前城の桜を見たのですが、まもなく散り終わるころだったので、本当にまだ咲いているのか心配だったのですが、この一本桜は東北の桜の中でも遅咲きなのだと言います。
盛岡から小岩井農場へ
小岩井農場は盛岡駅から路線バスで通常は40分ほど。
JR田沢湖線に乗って小岩井駅まで行ってそこからバスで行くこともできるのですが、列車の本数が少なく、盛岡からのバスの方が便利ではあります。
が、この日は、超満員。
盛岡駅前のバス停に着いてみるとすでに長蛇の列で、本来乗りたかった時間のバスに乗れませんでした。
こういう時は増便して2台目のバスが来ることもあるので、もしかしたら臨時のバスが来るかと思ったけど、そのまま1時間後のバスをお待ちください、とのこと。
GWももう中盤で、きっとこういう状況が毎日続いてるんだろうし、なんらかの手が打てるんじゃないの?と思ったけど、田舎のバス会社にはそんな余裕もないのかもしれませんね。まあ文句いうくらいならタクシーに乗ればいいんだし。
でもって1時間後のバスも、運よく座れたけど、これもやっぱり超満員。
しかも小岩井駅のあたりで国道から分岐して牧場に向かう最後の一本道が、5kmに1時間かかる渋滞とのことで、路線バスが抜け道の迂回ルートを通るという貴重な体験をしながら、ようやく終点の小岩井農場まきば園に到着。
朝の時間帯に着きたかったんだけど、予定より1時間半は遅くなっちゃった感じでした。
小岩井農場、そんなにすごいところだったっけ?
まあ天気いいし、お手軽で、お金のかからない遊び場だからかな、と考えればそれも納得。
GWに小岩井農場まで行く方は時間に余裕を持ってお出かけください。場合によっては盛岡からレンタカーを使うのも手かも知れませんね。
まきば園から一本桜へ
一本桜のベースとなるのは観光牧場にもなっている「小岩井農場はまきば園」。
開花期間中はまきば園からシャトルバスも出ていますが、徒歩20分程度ですので、ここは絶対歩きがおすすめです。
一本桜は「まきば園」から北西へ1.5キロほど先の広域農道沿いの牧草地内にあります。
5月のGW時期は、小岩井農場やまきば園内の桜も満開であることが多いため、これらの桜並木も同時に楽しめます。
まず桜満開の牧場内を通り抜け、まきば園の北にある交差点を曲がり広域農道へ。
とにかく午前中のきれいな光線のうちに行ってみたいので、早歩き気味に進むとやがて牧草の向こうに、岩手山が雄姿を現わします。
そうきたか。早すぎだろ、絶景!
そう、もうこれだけでもかなりいい眺めなんですが、この先に、さらに一本桜があるかと思うと、さらに気も急いてきます。
なんだか岩手山に西の方から雲が少しずつ近づいていて、そのうち雲をかぶっちゃいそうで心配だったのです。
そしていよいよ一本桜が見えてきました。
これが孤高の「小岩井農場一本桜」
ようやく出会えたのでした。
雄大な岩手山をそのまま背景にして、満開の桜の花びらをたたえながら、広い大地にたったひとりで凛と立つ姿は、見事というほかはありません。
写真で見たのはこの風景じゃなかったけど、こっちのようが写真よりも素晴らしい気がしました。
一本桜はエドヒガンという種類の桜で、約100年前に植えられたと言われています。
この草地は、今は牧草を収穫するための畑ですが、昔は牛の放牧地でした。牛は暑さが苦手なので、夏の強い日差しから牛を守る「日陰樹」として一本桜は植えられたのでした。
牧草地内は立ち入り禁止になっているので、一本桜は広域農道沿いから眺めることになります。
最近はやぱり人気スポットになっているらしく、路肩の駐車場には、自家用車だけでなく、時々観光バスなどもやってきますが、一本桜の魅力は車でやってきてはわからないんだよな、と思います。
最初に小岩井農場の桜並木があって、次に岩手山の勇姿が現れ、期待に少しずつ胸を膨らませながら歩いてきて、最後に一本桜がその姿を現したときの感動は、車でのそれとは比べ物になりませんよ。
もったいないぜ、クルマのお客さんたちよ。
小岩井乳業工場見学も
まきば園から一本桜に向かう途中に小岩井乳業の工場がありました。
せっかくなので帰り際、ちょっと寄り道して見学と牛乳の試飲し、小岩井牧場まきば園の方に戻ると、もうお昼頃の時間帯でしたが、入場券を買うための長蛇の列でした。
ディズニーランドでもないのに、入るまでにこんなに並ぶかと思うと、なんだか気が滅入っちゃって、まきば園はパスすることにしました。
まあ一本桜を見ただけで十分満足しちゃったしね。
こんな時だからこそ見てほしい、一本桜。
一本桜はたったひとりで長い冬に耐えて春を待っていたのでしょう。
ほかの桜たちが咲き終わった4月の終わりから5月の初めにかけて、ゆっくりと、しかしその全身いっぱいに北国の遅い春への希望を背負って晴れやかに咲き誇るのです。
ここには希望がある、と思いました。
本当は、こんな暗い話題の多い今だからこそ、見てほしい桜です。
今年、この桜が満開になるころには、いろんなことがいい方向に向かってるといいですね。
<2014年5月訪問/2020年3月執筆> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
小岩井農場一本桜の基本情報
小岩井農場一本桜への旅
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