日本を代表する陶器の町、有田に、まるでヨーロッパの大宮殿を思わせるような場所があるという。
その名は「有田ポーセリンパーク」。
しかしなんでまたこんな九州の片田舎に、モーツァルトのピアノコンチェルト第26番『戴冠式』の演奏会を夜な夜なやってそうな大宮殿があるのか!?
有田は、日本を代表する陶器の町(のハズ)
佐賀県の有田といえば、あのくりぃむしちゅーの有田哲平の出身地…ではなく(彼は熊本出身)、日本を代表する焼き物の町として有名ですよね。
列車で佐世保方面に向かうと、いつも有田の手前、上有田駅あたりの車窓から見える、いかにも「焼き物の町」という雰囲気が素晴らしくて、いつかここで下車してブラブラしたいな、と思っていたのでした。
しかし今回有田にやってきた一番の目的はここに行ってみたかったから。
なんかすごいでしょ?
なんでまたこんな九州の片田舎(…失礼)に
今度シェーンブルン宮殿でモーツァルトのピアノコンチェルト第26番やるみたいなんだけど、一緒にウイーンに行かない?
的な口説き文句が通用しそうな場所があるのだ有田!!!
ま、とにかく行ってみようと思います。
駅前の観光協会で自転車を借りようとすると
「あのー、今日は大晦日なので、窯元もお店も閉まっちゃってるところ多いので、おにーさんに似合いそうな200万円の有田焼とか買えないと思いますが大丈夫ですか?」
と受付のおねーさん。
そう、この日は年の瀬も押し迫った大晦日の午後だったのですが、だいじょーびだいじょーび。
今日は品定めだけしといて、あとで自家用ジェットで買いに来るから。
そんなわけで有田駅を出発します!
いざ「有田ポーセリンパーク」を目指すも
有田ポーセリンパークは、有田駅から山に向かって5,6キロなんですが、Google Mapくんが示してくれた道がなんか超裏道で、畑のあぜ道とか民家の路地を彷彿させるようなルートを進むと、なんかダム湖の裏みたいなところに出ちゃって、これはどー考えても迷ってるってやつたぞ!
人気のないダム湖に向かう上り坂を、僕はいつものように電動チャリでスイスイ進んでいたのですが、ちょっと先のほうにあきらかに電動じゃないレンタサイクルで、フラフラになりながら進む立ちこぎ女子を発見!
彼女もシェーンブルン宮殿にモーツァルトのピアノコンチェルト第26番聞きに行くのかもしれん。
僕が右手を差し伸べて、一緒に迷い迷われちゅらちゅちゅちゅ的な大晦日も悪くないぞ!と思って猛ダッシュしていたら、僕が追いつく直前で急にUターンして猛然と坂を下って行ってしまいました。
さすがに彼女も「私、迷ってる?」と思ったのでしょうか?
僕もそのままUターンして、ついでにもう一度人生もやり直してみよっかな、と思ったのですが、またすぐ後ろを追いかけると史上最愛のイケメンストーカーとして週刊文春に載っちゃいそうなので、困難だとわかってはいるものの、とにかく前に進むぜ!的な男の中の男を演じてそのまま進んでみました。
おおおおお、迷いに迷った末、なんか見えてきたぞ。
着いたどー!有田ボーセリンパーク!
なぜ有田にこんな大宮殿が?
有田ポーセリンパークは、ドイツ・ドレスデンのツヴィンガー宮殿を再現した有田焼のギャラリーを中心として、庭園や有田焼体験工房、登り窯、飲食店、土産売り場などの施設がある「酒・器」のテーマパークなんだそうです。
なんでもツヴィンガー宮殿を建てたアウグスト王はヨーロッパにおける東洋陶磁器の最大のコレクターで、宮殿の中には膨大な量の東洋陶磁コレクションが保管されていたのだとか。
そんなわけで、この有田に大宮殿があるんですね。ウイーンじゃなくってドレスデンだったけど。
最近はインスタ映えするスポットとして人気で、コスプレ―ヤーの聖地になっているようですが、この日このお城の前でバチバチ写真撮ってたのは中世貴族のふわふわドレスを着たコスプレ女子ではなく、大陸のほうからやってきた方々がほぼ9割でしたがね。
ツヴィンガー宮殿の前にはバロックふうの庭園が。
けっこう本格的にお金かけて作ってんなーと感心しましたが、よく見るとやっぱりNIPPON。
だって庭園の向こうに見える山々、有田とか伊万里とか佐賀の北西部でみられるの特徴的な岩山そのものだもん。
パーク内で陶芸体験や酒蔵めぐりも
パーク内を歩いていると、小高い丘の傾斜に沿って全長約55mの巨大な登り窯がありました。これは約400年前に有田で初めて磁器が誕生したときに使用されたという登り窯を再現したもの。年に2回程度、実際に火入れをして焚いているそうです。
有田焼工房では絵付けや手びねり、ろくろによる陶芸も体験できるようですが、ナイスミドルが一人で体験するのはちょっと痛い。
さっきの立ちこぎ女子が来たら、一緒にろくろでも回しながら人生振り返ってみようかと思ったけど、今頃「シェーンブルン宮殿で舞踏会」的なコスプレに大変身しちゃったのか、最後まで見かけませんでした。
さすがに大晦日の午後なので、広大な敷地にはお客さんはまばらでしたが、中国人をのせた大型バスが到着した時だけは、いっとき賑やかになる、という感じでしたね。
さっかくなので「ありたさんぽ」もやってみた
せっかく有田に来たからには、列車の窓から見えていたあの町並みは見ておきたい、ということで、そのあとは内山地区と呼ばれるところへ向かいます。
日本の磁器発祥の地として栄えてきた有田は「有田千軒」とも呼ばれ、古くは幕末からの商家や窯元の屋敷、洋館などが立ち並んでいて「有田内山重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。
列車に乗ると上有田駅から有田駅までの間に見える「いかにも焼き物の町」っぽい町並みはこのあたりなんでしょう。
内山地区のメインストリートから一本裏通りに入ったところにあるのが「トンバイ塀の裏通り」。
トンバイ塀とは、登り窯を解体した後の耐火レンガ(トンバイ)や、使い捨てた窯の道具、陶片などを赤土で塗り固めて作った塀のことで、窯元や絵付師が人通りの少ない裏通りに住み、屋敷と仕事場を高いトンバイ塀で囲み、やきもの作りの技法が外から見えないようにしていた、という有田らしい特徴的な町並みです。
内山地区の中心部近くにある香蘭社は有田を代表する老舗。
かつてはこの香蘭社が有田ボーセリンパークの経営にも関与していたようですが、現在は経営は伊万里の酒造メーカーに移っているようです。
観光案内所のおねーさんに、ここだったらやってるよ、と教わった「有田陶磁の里プラザ」にも行ってみます。
ここは有田焼卸団地と呼ばれる有田焼専門の大規模ショッピングモール。
23店舗が並び、日用食器・贈答品から営業用食器・高級美術陶磁器に至るまで厳選された陶磁器が勢揃いしているので、市井の庶民の皆様には大変便利な場所なのですが、窯元の人間国宝から直接その場で「これ、ください!」って買いたい僕としてはちょっと情緒を感じないんだよなぁー。
そんなわけで近くの窯元をブラブラ自転車で回ってみましたが、おねーさんの言うとおり、やっぱりどこもお休みでした。
ま、陶磁器はまた今度自家用ジェットで買いつけにくるとしよう。
<2017年12月31日 訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
有田ポーセリンパークの基本情報
有田ポーセリンパークへの旅
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