おじいちゃんは鳥の先生だった。
毎朝、こうしん山にさんぽに行って、いろんな鳥をみつけてたみたい。
おうちには鳥の写真が何千まいもあるよ。
夏休みにおじいちゃんといっしょにこうしん山に行くと、すれちがう人はみんなおじいちゃんのことを知ってるんだ。
あの青い鳥はなに?
あれは「オオルリ」
すずめのなかまだけど、しっぽが長いでしょ。
あの美しい声の鳥はなに?
あれは「がびちょう」
よその国から来た鳥だからみんなにきらわれててちょっとかわいそうなんだよ。
おじいちゃんは毎日どこになんの鳥がいるかがわかっていて、「クロツグミちゃん」とか「オオタカくん」とか名前でよんでいて、まるで友だちの家にあそびに来てるみたい。
鳥たちも、おじいちゃんが来るとうれしそうにきれいな声で鳴くんだ。
いいなあ。僕も早く大きくなって鳥とお話がしたいなあ。
でもある日、おじいちゃんがとつぜん入院しちゃった。
いつものように鳥に会いに行くとちゅうで胸が苦しくなってきゅうきゅう車で病院にはこばれて、僕たちがかけつけたときには、おじいちゃんはもう話すことができなくなっていた。
そしてだれにもさよならを言わないまま、おじいちゃんは死んじゃった。
お別れのときにおじいちゃんの顔をみたら、泣いているような、笑っているような顔だったよ。
僕もさよならをいえなかったのはくやしいけど、おじいちゃんもみんなにさよならを言えなくって悲しかったのかもしれないね。だからちょっと泣きそうな顔なのかな。
でも、もしかすると、おじいちゃんも鳥になって今ごろこうしん山で「おおたかくん」とか「クロツグミちゃん」といっしょ空を飛んでるのかもしれないね。
「がびちょうのがびさん」とか「オオルリのルリちゃん」といっしょに歌をうたっているのかもしれないね。だからきっとちょっと笑っているのかな。
だから僕はいつかこうしん山におじいちゃんの野鳥の家をつくってあげたいとおもうんだ。
おじいちゃんのとった写真がいつでもたくさんかざってあって、おじいちゃんの友だちがいつでも集まってくる場所。
そして鳥になったおじいちゃんが友だちの鳥たちをつれていつでも帰ってこられる場所。
おじいちゃん、野鳥の家でまた会おう。
夏休みになったら、ううん、今度はもっともっとたくさん遊びに来るからね。
<了>
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