四万十川というと日本一の清流と沈下橋で、最近すっかり高知を代表する観光スポットとなりましたが、小学生だった僕がばーちゃんちに遊びに行ってた昭和の頃はまだ観光客なんて誰もいなくて、近所のみーちゃんと一緒にすっ裸で川に飛び込んで、そのままいつまでもどこまでも泳いでいられるくらいだったのでした。
・・・と、いかんいかん、いきなり妄想に入ってた。
四万十にばーちゃんちなんてなかったし、みーちゃんも小学生になってさすがにすっ裸じゃマズイだろ。。。
ま、でもちょっと前までは、四万十川なんて沈下橋から川に飛び込む「川ガキ」の遊び場だったんですよね。
だから井上陽水さんの「少年時代」が僕の四万十川のイメージ。日本人のDNAにしみこんでいる甘酸っぱい夏の思い出、みたいな感じですかね。
「24の瞳」中村を出発
2016年初夏、何日か四国を回ったときにちょっと時間を作って初めて夏の沈下橋に行ってみたのですが、これがやっぱりよかった。それで今度はいつかこの四万十の沈下橋めぐりをしてみたいな、と思っていたのでした。
そんなわけでスタートは、四万十川河口の町、中村。
中村といえばわずか12人の部員で1977年の選抜甲子園で準優勝した「24の瞳」の中村高校ですな。
池田高校が「さわやかイレブン(11人)」、中村高校は「24の瞳(12人)」。
昔はこういう地方の(どっちも四国だけど)小さな学校が甲子園で旋風を起こしたことも多かったけど、最近はめったになくなりましたね。
さて、今回この中村で降りたのは、ここでレンタサイクルを借りて四万十川沿いを走ってみたかったから。
この中村をはじめ、四万十川沿いはサイクリングの盛んな場所で、中村から四万十川中流の江川崎まで、7か所のサイクルターミナルがあり、途中で乗り捨ても可能なサイクリングコースがあるのです。
今回僕がチャレンジするのはこの中村駅から江川崎駅までの全行程制覇コース。寄り道せずに進んで約40キロということですが、自転車で40キロや50キロは今までもふつーに乗っているので、なんくるないさーとか思ってたんですが、実は今までは電動チャリだったんですよね。
今回乗り捨てできる自転車には電動チャリはなかったのですが、まあそこそこのスポーツタイプっぽかったし、下流から上流へ向かうといっても、100mくらいしか標高は違わないので「四万十川レンタサイクルの似合うフォトコンテスト」ナイスミドル部門優勝候補の僕であればまず大丈夫だろうと、意気よーよーとスタートしたのでした。
中村の市街を抜けるとやがて真っ赤な「赤鉄橋」。
中村のシンボルといわれるこの赤鉄橋を渡り、四万十川の土手沿いに進みます。
さすが晴れ男!素晴らしい天気!
・・・・・と思いますよね、この写真見てると。
しかしなんだか漕いでも漕いでも進まねーぞー、と思ってたらこの日はめちゃくちゃ風が強い日だったのでした。
しかも北北西の風、風速5~6m。
んー、これってどう考えても北北西に進むんだよな、俺。
しかもですね、中流と下流で標高は100mも変わらないんだけど、道は四万十川に忠実に沿ってガンガンアップダウンがあるわけですよ。さらに風の抵抗を避けようと、屈んで漕ぐと背中のリュックもズシンと重い。。。
意外にハードだぞ、これ、と思っていたらようやく最初の「佐田沈下橋」が見えてきました。
佐田沈下橋と恋愛確率70%の出会い
佐田沈下橋は河口からいちばん近く、中村駅からここまで8キロちょっと。でも寄り道とかしてたら1時間近くかかったぞ。
沈下橋といえば四万十川の代名詞のような存在ですが、これは台風が多く、たびたび洪水の被害にあってきた地域の人々の知恵と工夫の結晶のようなもの。
大洪水で橋が水中に「沈下」しても欄干がなければ水の抵抗は軽減され流されにくくなるし、木などがが引っかかって水の流れが悪くなることによる更なる川の氾濫も避けることができる。
そんな理由から、こんなにシンプルでのっぺりとした姿になっているのです。
この佐田沈下橋は数ある四万十の沈下橋の中でも最長で長さ291m、もちろん自転車でも渡れるのですが、こわいよこわいよー
高所恐怖症の僕には、この「欄干のない橋」ってのはやっぱりかなりプレッシャー。
そんなわけでこれ、命懸けで撮った記念写真です。。。
レンタサイクルを貸してくれたおねーさんによると
ここを自転車で渡って川に落ちる人が3か月に1人くらいいるので、ここは手で押して渡ってくださいね
とのことでした。
佐田沈下橋を出たあとも四万十川に沿って右へ左へと曲がりながら、のらりくらりとしたアップダウンが続きます。逆風の上り坂、これが相当キツイ上に、この日は風の抵抗で下りでも漕いでないと止まっちゃいそうなレベル。
風祭さん、もしかして佐田沈下橋の近くで、リュックしょって歯を食いしばって自転車こいでなかった?
実はこの日、四国に住むライター仲間の女子がバイクで僕とすれ違っていたらしいのです。
なんたる偶然!こーゆーのは恋が芽生える確率70%以上のパターンなのに、声かけてくれよー。
そうかなーと思ったけど、あまりに必死の形相だったので声かけられなかったのよねー、もーひどい人。
ま、確かにこの日に限っては、「四万十川レンタサイクルの似合うフォトコンテスト」ナイスミドル部門優勝候補の僕でも、恋だの愛だの言ってるよゆーはなかったのです。。。
そんなわけで、次の三里沈下橋は道の上から。
沈下橋まで坂を下っていく気力、もうなかったんですよね、この時点で。
サイクルターミナル「かわらっこ」で涙のリタイア
中村を出て2時間弱、サイクルターミナルのある道の駅「かわらっこ」に到着。
ここまで20キロ弱なので、残りはあと20キロちょっと。
江川崎から乗る予定の列車時刻まで2時間半。頑張って漕ぎ続ければ間に合うかもしれませんが、ちょっと休ませてくれよー。
ここでご飯食べなきゃ昼飯食いっぱぐれそうなので、とりあえず道の駅で売ってたおばーちゃんの握り飯を買って小休止し、さてどーしたもんか、と悩んでいると目の前に魅力的な文字が。
バス・・・!!!
1日3往復しかないけど、13:19発江川崎駅行き、ってのがある。
時計を見ると12時半ちょっと過ぎ。乗れるじゃん。。。
お前、「四万十川レンタサイクルの似合うフォトコン・・・(しつこい)」とか言ってたくせに、このくらいでもうココロ揺れ動いてんのかっ!とかいう貴女に私は言いたい!
ちょっと見てみんさい、このこいのぼりたちの暴れん坊具合を。
90度どころか、130度くらいのすんごい角度になって泳いでるでしょ?
貴女だってこれみたら、いやーん元気すぎてムリー!って絶対思うって。
実はこのバスの存在、知ってたのでした。
これほどの命懸けの冒険ですから、まさかの時のためのセーフティネットとして、どこかのサイクルターミナルでこのバスに乗り換えれば、予定通り江川崎に着けることは調べてあったのでした。
これ一見、テキトーっぽくないように見えますが、いつでもテキトーに自転車を乗り捨てられるための極めて高度なテキトー戦略なんです。
そんなわけで極めて高度にテキトーな僕は、スタートから約2時間20キロでリタイヤしてレンタサイクルを乗り捨てることにしたのでした。。。
だってマジで前に進まないんだもん。
ごめんよ四万十、また今度リベンジすっから。
代わりに江川崎まで行くバスまで時間があったので、目の前の河原に降りてみることにしました。
ここは「かわらっこ」という名前の通り、いろんな川遊びの拠点となっていて、特にカヌーのメッカになっているらしく、たくさんの観光客がカヌーに挑戦していました。
カヌーもこんなに風が強かったら下りはいいけど、逆風の中、とてもじゃないけど上流になんか戻って来られないんじゃない?
と思っていたら、カヌーは下るだけで川上に戻ることはない、ということでした。
そっか、今回の自転車も逆だったら楽勝だったんだよな。。。
追い風を受けたカヌーは、あっという間に遠く高瀬沈下橋の向こうに消えていきました。
かわらっこの前からバスに乗って、本当は自転車で着くはずだった江川崎駅に向かいます。
途中、バスの車窓から四万十川の沈下橋の中でも一番絵になる、と言われている岩間沈下橋が見えました。
ただ残念なことに2017年の11月に橋の一部が陥没してしまい(特に増水でなったわけではないようですが)、現在は欠損した状態になっていました。
でもこの眺望、素晴らしい!
まさに井上陽水の少年時代、ですね。
<2018年5月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
四万十川サイクリングへの旅
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