瀬戸内国際芸術祭が行われている「西の島々」の中でも一番西、愛媛県境にほど近い場所にあるのが、伊吹島。
その伊吹島へは香川県の西端の都市、観音寺からのアクセスとなります。
今回は伊吹島と、その玄関口、観音寺をぶらぶらと歩いたときのお話です。
観音寺って瀬戸内の平和な港町かと思っていましたが、意外や意外、一発逆転のギャンブルシティだったのです。
一獲千金!銭形砂絵「寛永通宝」と観音寺チャンスセンター
観音寺と言えば「青春デンデケデケデケ」。
なんじゃそりゃ?とお思いの方もいらっしゃるかと思います(というかほとんどの方はそうでしょう)が、これは芦原すなおさんの直木賞小説で、あの大林宣彦カントクにより映画化された青春物語のこと。
ベンチャーズのデケデケデケデケ・・・に電撃ショックを受けた高校生が、うどんと海しかない香川の片田舎で、ロックバンドを組んでひっちゃかめっちゃかやっちまう、というお話。
僕はこの映画、結構好きなのです。
その、うどんと海しかない片田舎といわれているのが観音寺なのです。
しかし観音寺を舐めてはいけません。
うどんと海以外にもあるのです、立派に世の中に誇るべきものが。
それが、これ。
銭形砂絵「寛永通宝」ですね。
これは海岸の白砂に描かれた東西122m南北90m周囲345mもある巨大な砂絵。
観音寺の町はずれにある琴弾公園の裏山の山頂展望台から見るとこんなふうにきれいな円形に見えます。
寛永10年(1633)に高松藩主、生駒高俊がこの地を訪れた際、それを歓迎するために一夜にして作られたものですが、今も当時と同じ絵柄で残っているのだそうです。もちろんその裏では毎年春と秋に市民のボランティアが 「砂ざらえ」を実施し、砂絵を美しく整えているからなのですが。
夜は緑色にライトアップされていて、今や観音寺随一の観光スポット。
この銭形を見れば健康で長生きし、しかもお金に不自由しないと伝えられ、多くの人々がこの絵を見にくるのだと言います。
まあ確かに生で見るとなかなか迫力があるんですよ。
そんなわけでどうもこの観音寺、最近は「銭」とか「金運」をキーワードに町おこしを狙っているようです。
たとえば公園にも寛永通宝。
マンホールも、もちろん銭形。
そしてなんとこの観音寺の町なかにある宝くじ売り場「観音寺チャンスセンター」。こんな地方の小さな売り場のくせに、なんと国内の宝くじ史上最高賞金額8億円を2本も出したのです!
なので年末ジャンボの最終日でもないのに、ひっきりなしに購入者がやってきます。
町のビルの壁には金運を前面に打ち出した巨大な看板が。
招き猫に寛永通宝に宝くじ8億円。
なんでもありですな・・・
ぜひ、宝くじを買いに、観音寺へ!
購入前に寛永通宝の砂絵を見ておくとさらに効果ありまっせ!
伊吹島のいりことかトイレの家とか
さて、伊吹島へは観音寺港から船で25分。
伊吹島の人口は574人で、セトゲーの西の島の中では最も人口密度の高い島。
それでも最盛期は4500人近くの島民がいたようですので、当時にくらべればずいぶんさびしくなってしまったのでしょう。
ここは良質ないりこの産地として栄えてきた島。
讃岐うどんの出汁に欠かせない煮干しいりこ。そのいりこの中でも最高とされるのが「伊吹いりこ」なのだと言います。
恥ずかしながらここに来るまで「いりこ」ってなんだかわからなかったのですが、イワシの煮干しのことなんですね。
島の沿岸部には平地が少ないため、中央部の高台が島の中心地となります。
アートも高台に集中しているので、みんな船を降りると港の前の激しい急坂を上るしかありません。
起伏の多い島にはりめぐらされた迷路のような坂道。
これがこの伊吹島の魅力でもあります。
夏だとこの坂道を上ったり下りたりするのはかなりきついでしょうが、今回は秋会期なのでなんとか大丈夫。
港からの急坂を上り、かつて小学校があったやや開けた場所にあるのが「トイレの家」。
これは前回2013年の芸術祭からある、この伊吹島を代表する作品です。
この日はなんとこのアートのクリエイターである石井大五さんが直接アートについて解説してくれました。
伊吹島の多くのトイレが母屋から分かれた離れにあるのを見た石井さんは、母屋と離れの関係が、四国本土と伊吹島、大都市と僻地の関係に見え、日本の辺境のように位置づけられた伊吹島を、トイレが象徴しているように見えたのだそうです。
そこでこのトイレを島の中心のようにつくることで、伊吹島に暮らす島民に、自分自身が中心である、と考えてほしい、という思いからこの作品が生まれたのです。
建物は、11本の光のスリットが通るように設計されています。
うち6本は、この島を中心として世界の6大陸の6都市へと向かって広がる世界を、残りの5本は、島の伝統的な行事の開かれる日と夏至、冬至の日の午前9時の太陽方位の方向を示しています。
迷路のような光のスリットの通り道は、まるでこの島の路地のよう。
季節や時刻によって、光の角度や、光の雰囲気が大きく変わり、路地の表情もその時々によって違うのだそうです。
トイレの家なので、もちろん本当のトイレとしても利用できます。
こんな青い空を見上げて開放感あふれるトイレなので、普段なかなか出ない人も、ここだとすっきりするとかしないとか。。。
トイレの家の向かい、旧伊吹小学校舎の中に入ると、そこで展開されている作品「沈まぬ船」。
島の人たちや小中学生らと一緒に約6万個の浮きを使って作り上げた魚群のイメージは迫力満点。
「魚群」なんて、まるでパチンコの激熱リーチみたいですね。
でもこんなスゴイ魚群が出れば、100%確変大当たりって感じですね。
廊下を進むと、バイクゲームやりたい人が募集されてます。
やりたいやりたい!
これは「伊吹島ドリフト伝説」と呼ばれるアート(たぶん・・・)。
実際に取材して本物さながらに設定された伊吹島の路地を、スーパーカブ(?)で制限時間内に一周できたらミッション完遂!というレーシングゲームなのですが、これがかなり難易度が高いらしいのです。
なんといっても伊吹島の路地は迷路のように細くてぐにゃぐにゃしてますからねえ。
目の前でお兄ちゃんがやってましたが、家や壁に衝突したり、路地から飛び出してきた猫をよけてコケたり、神戸からやってきたセトゲー女子(28歳独身・歯科衛生士・彼氏いない歴6ヶ月)に見とれてガードレールをつき破って海に転落したり、と散々で、隣で見ていた彼女にひっぱたかれてました。
僕もチャレンジしてみようかと思ったのですが、セトゲー女子の誘惑に100%負ける姿を娘に見せるわけにはいかない、ということで今回はパスしました。。。
きっとこうい島のじいちゃんだったらクリアするんでしょうね。。。
ビートルズの名曲アートとかプライスレスな夕日とか
島の坂道をさらに上に行き、昔、保育園があった眺めのよい場所にあるのがフィリピンのアーティスト、アルフレド&イザベル・アキリザンさんによる「Here, There, Everywhere」。
ビートルズの名曲と同じタイトルのこのアートは島の林から切り出した竹を支えにしていりこ加工で使う網を組み合わせてつくったパラボラアンテナのような作品。
アンテナの真ん中に登って、そこから外の世界を見ると、こんな感じ。
ちょうど正面に、仲よさそうに寄り添うカップル。
まさにポール・マッカートニーのうたったあの美しいラブソングのラストフレーズ、
I will be there and everywhere どこにいたって 僕は君のそばにいるよ
Here, there and everywhere ここにいても、そこにいても、そう、どこにいても
Here, There and Everywhere (Lennon-McCartney)
の世界で、ちょっとうらやましく思いました。
なので制作者の本当の意図はわかりませんが、ここは自分の大切な人へ、愛を叫んで世界中に発信する場としていいのではないかと思います。
みなさんもぜひ、伊吹島の中心で愛を叫んでみてください。
伊吹島から観音寺への最終フェリーの出発時間は17時20分。
秋会期の10月から11月にかけては、ちょうど瀬戸内海に夕日の沈む時刻と重なるのです。
伊吹島の回りには、大きな陸地や島がないので、天気がいいと水平線近くに沈む夕日を見る絶好のポイントなのだそうです。
この絶景は想定外。
ギリギリまで島を見て歩いていたので、船に乗り込むのが遅く、船内の座席に座れず、仕方なく親子3人で外のデッキの床に座り込んでいたのですが、まさにプライスレスなサプライズでした。
<2016年10月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
観音寺/伊吹島への旅
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