アカデミー賞外国語映画賞や日本アカデミー賞最優秀作品賞などを受賞した映画「おくりびと」。
この映画の主なロケ地が山形県の酒田市だと知って、いつかロケ地めぐりをしたいと思っていました。
そんなわけで街なかに残る古い洋館や、歴史ある倉庫街、そして雄大な鳥海山麓の美しい風景とともに、主演のモッくん(本木雅弘)になりきって旅をしたお話です。
群馬のシブがき隊、酒田に参上!
山形県の酒田市は、江戸時代に北前船と西廻り航路で栄え「西の堺、東の酒田」と称されるほどの港町でした。現在も山形県庄内地方の中心都市として知られています。
僕は酒田に来るのは何度めかで、旅の途中で市内に泊まったりしたこともあるのですが、なぜかあまりゆっくり町をめぐったことはなかったのです。
その酒田は、本木雅弘さん主演の映画「おくりびと」の舞台となった場所。高校時代は群馬のシブがき隊と言われていた僕がいかないわけにはいきません。
左からヤッくん(薬丸裕英)、モッくん(本木雅弘)、フッくん(布川敏和)ですよ!
ま、本当にシブがき隊と言われていのか、実は自分でそう思い込んでいいたのかは、ちょっと記憶があいまいですが、美容院に行ってシブがき隊のヘアカタログを見せて
とりあえず、こんな感じのパーマかけてください
といったのは事実です。
ということで、今回は30数年ぶりにモッくんになりきって、じっくりと「おくりびと」のロケ地をめぐる旅に来てみたのでした。
酒田のシンボル「山居倉庫」
港町酒田のシンボルと言えば「山居(さんきょ)倉庫」。
ここは明治時代に旧酒田藩主、酒井家によって建てられた米保管倉庫で、かつて米の積出港として賑わった酒田の歴史を今に伝える建物。白壁や土蔵づくりの12棟の倉庫群のうち、現在も9棟が農業倉庫として使われています。
古くはNHK朝の連続テレビ小説「おしん」の舞台としても有名ですが、「おくりびと」でもこのプロムナードが登場しています。
山居倉庫から山居橋を渡ってすこし歩いた先にあるのが、江戸時代から酒田を代表する豪商であった「本間家旧本邸」。
その栄華は「本間様には及びはせぬが、せめてなりたや殿様に・・・・」という歌まで読まれるほどだったそうで、今の酒田があるのはこの本間家あってこそ、といわれるほど地域の発展のために貢献したそうです。
この日泊まった旅館のおやじさんが何度も「本間家あっての酒田ですよ」と言ってたくらいです。
NKエージェントのオフィス「日和山小幡楼」
「おくりびと」で主人公のモッくんがだまされて就職してしまった葬儀社「NKエージェント」のオフィスとして使われていた古いビルは平成10年に廃業した「旧割烹小幡」。
ロケの時に使われていたのは大正時代に建築されたモダンな洋館でしたが、老築化のため2021年に改装され「日和山小幡楼」という名前となり生まれ変わっていました。
1階は「カフェレストラン日和亭」となっていましたが、夕刻の閉店後だったため中には入れませんでした。
この洋館の隣にあるのが和館で、日和山に隣接した高台にあり、日本海や港、市街を一望できることから「瞰海楼(かんかいろう)」と呼ばれ、皇族や板垣退助も訪れた市内有数の老舗料亭だったそうです。
現在は和館の1階がベーカリー&カフェ、2階が交流スペースになっています。
「日和山小幡楼」の「日和山」というのが、このすぐ横にある小高い公園。
小さな灯台の向こうに夕日が沈む風景が美しい場所として知られています。
ここに「おくりびと」のロケ地となった「旧割烹小幡」洋館の玄関を復元したものが展示されていました。
日和山地区は、お寺や神社とともに、かつての酒田の花街や遊郭があった場所で、今でもその面影を伝える建物がいくつか残っています。
これは明治28年建築の料亭「山王くらぶ」。酒田で一、二の格式を誇った老舗料亭でしたが、現在は北前船でにぎわった時代を伝える展示エリアと、傘福と呼ばれる酒田のつるし飾り制作などの体験工房となっています。
そのほか、妖しい場所もたくさんあるのですが、それは「酒田の遊郭旅館に泊まる」編で詳しくお話します(笑)
鳥海山麓でモッくんになりきる
酒田で「おくりびと」のロケ地巡りをするなら、どうしても行ってみたい場所がありました。
それは酒田駅から電車で20分ほどのところにある「遊佐」にあります。
駅前のメインストリートを20分ほど歩くと、市街地から田園地帯となり、目の前に現れるのはこの景色。
この月光川の河川敷に目指す場所があります。
「おくりびと」を観たことのあるみなさん、この景色に見覚えありませんでしょうか?
え、わからない?
じゃあ大ヒントでこれでいかがですか?
間違えた!あまりにモッくんに似てるもんで!!
回答は、こちら!
そう、主人公のモッくんが悲しいとき、心を落ち着けたいときにチェロを弾いていた場所だったのです。
映画のイメージを再現するため、この河川敷のロケ地だった場所には椅子がおいてありました。
チェロがあれば僕もここで弾いてみたかったんですけどね、残念。
遊佐からの帰りの電車に乗ると、鳥海山がしばらくの間ずっと追いかけてくるようでした。
「おくりびと」を観終わると、なんだか透明で美しい残像のようなものが残っているのは、この鳥海山と庄内の美しい田園風景のせいなのかもな、と思いました。
<2022年5月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
酒田への旅
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