「石を投げればうどん屋にあたる」と言われる香川県には讃岐うどんの名店と言われるお店はたくさんありますが、あの村上春樹さんが「ディープ中のディープなお店」として紹介していたのが丸亀市にある「中村うどん(現在は「なかむらうどん」)」。
今回、ふとしたきっかけで丸亀に行くことになったのですが、大学時代、卒論で書いた「羊をめぐる冒険とその構造分析」が高く評価され、かつては村上春樹研究家としても名をはせた僕が、丸亀に行ってそこをスル―するわけにはいきません。
そんなわけで行ってみました、なかむらうどん!
丸亀行くなら「なかむらうどん」
仕事で高松に行くことになったので、かつて東京で一緒だったパイセンに連絡を取ったら「まずは丸亀に来なさい」とのお達しがありました。
丸亀市役所の観光課にわしの昔の部下がおるんで、ぜひ紹介したいんだわ
え?丸亀ですか!丸亀行くなら「なかむらうどん」行ってみたいんですけど
よしゃ、じゃあやつに案内させるわ
そんなわけでやってきました、丸亀!
フィリピン風バーベキュー店も映える、素晴らしい讃岐うどん日和ですね。
丸亀駅でパイセンと待ち合わせると、ほどなくして丸亀市役所勤務の後輩が登場!
チっす!今日はよろしくおなしゃす!
ところでなかむらうどんは漢字の「中村うどん」のほうっすか?ひらがなの「なかむらうどん」のほうっすか?
たぶんひらがなだったような気がするけど・・・漢字のお店もあるんだ?
自分もまだ行ったことないからよくわからないんすけど、ひらがなのほうっすね!了解っす!
おい、丸亀市役所観光課!行ったことねーのかよっ!
村上春樹さん絶賛の「なかむらうどん」
なかむらうどんが「漢字」なのか「ひらがな」なのか、と聞かれたのは、少々複雑な理由があるからなのです。
村上春樹さんが行った当時、漢字の「中村うどん」だったこのお店は、その後「なかむらうどん」に変わったのです。ちなみに現在、丸亀には「中村うどん」という人気店もあるので、村上春樹さんの本の記憶のまま「中村うどん」に行くと、違うお店に行ってしまうことになるのでご注意ください。
「中村(なかむら)うどん」について書かれているのは、村上春樹さんの「辺境・近境」という旅のエッセイ。
この作品の中の「讃岐・超ディープうどん紀行」の中で、なかむらうどんはこんなふうに書かれています。
そうこうするうちに中村父が新しいうどんを打ち終える。そしてそれをさっとゆがいて、葱と醤油をかけて食べさせてもらう。これは見事に美味しい。
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「中村うどん」に行って、できたてのうどんに巡り合えた人は幸せ者というべきであろう。
なかむらうどんは村上春樹さんのおかげか、今でこそ全国区の有名店になりましたが、当時は知る人ぞ知る地元の人向けのお店だったようです。
かつては看板もなく、わかりにくい路地の奥にあり、お客さんはうどんを勝手に取って自分で湯がいて、出汁をかけて、なんなら裏の畑からねぎを引っこ抜いてきて、自分で刻んで入れるようなお店だったようですが、今は代替わりをして、そこまで超ディープなお店ではなくなっています。
そんなこんなで現在のなかむらうどんに到着。
まだお昼前だというのに、たくさんのお客さんで店内はあふれていました。
お店の前に張り出されてるメニュー一覧。
かつては、かけうどん(大)が100円という時代もあったそうですが、今はさすがにそんなことはありません。でも讃岐のうどんはどこも安いですよね。
自分でやるのが「なかむらうどん」の基本
昔ほどのディープさはなくなってしまった、と言いましたが、それでも「伝説のセルフうどん店」と言われるなかむらうどんは、他店とはシステムが違います。
「かけの小」と注文すると、こんな感じでうどんをどーん!と渡されます。
そしてそれをグツグツに立ったお湯に自分で入れて湯がきます。
タイミングよくわからないけど、地元民をまねてちゃちゃっと水切りとかキメてみました!
そして自分で好きな具を選んで載せます。
おすすめはちくわ天、ということなのでそれに従います。
そして自分でドバドバと好きなだけつゆをかけて、ねぎやしょうがを好きなだけ入れてできあがり。
できあがったうどんは、となりにある食堂で食べてもいいし、外に出て目の前の讃岐富士を眺めながら食べてもいい。
つるつるでモチモチのできたてうどんを、みんな無言でズルズルすする音だけが響いています。
いやー、これはうまいわ(広島出身で高松勤務のパイセンは、まだ讃岐うどん大好き芸人の初~中級レベル)
これ、マジやばいっすねー(隣の坂出市出身の丸亀市役所職員)
丸亀郊外
美しい讃岐富士の麓
ひどくわかりにくい路地の先に
伝説のセルフうどん店
なかむら
はある。
ここはもう、かつて村上春樹さんが行った時のような「超ディープな場所」ではなくなってしまったのかもしれません。
それでもなお、ここはまだ、ある種の「辺境」なのかもしれないよな、と思ったのでした。
<2022年10月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
なかむらうどんへの旅
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