岡山県真庭市の勝山町並み保存地区は、まちじゅうにユニークなのれんが飾られている「のれんの町並み」として知られる町。
いや、きっとほとんど知られてないですね。だから「日本に恋する伝道師」たる僕がこうして紹介してるんですから。
そこは映画「男はつらいよ」の最終作にも登場した、寅さん最後の作品のロケ地にふさわしい、情緒あふれる町でした。
露天風呂西の横綱「湯原温泉 砂湯」の最寄、中国勝山駅へ
勝山町並み保存地区があるのは、JR姫新線の中国勝山駅。
かつてここは「勝山町」という独立した自治体でしたが、市町村合併により現在は真庭市となっています。
この中国勝山からさらに山奥にある湯原温泉に、全国露天風呂番付で「西の横綱」とされている「砂湯」があります。
かつて僕はこの中国勝山から湯原行きのバスに乗り換えて、ひとりで湯原温泉に泊まったことがあるのですが、なぜか結局砂湯にはいかなかったのでした。
だってこれだよ!
この砂湯、全力で混浴なんですよ。別名「西の混浴野天風呂の横綱」とも言われているくらいすっぽんぽんで開放的な空間。
女子は水着や湯あみを着て入ってることが多いようなので、当時お年頃だった僕がたったひとりで色白もち肌の体躯をフルオープンにして入ったら、女子たちの刺すような視線が集まってしまうリスクを回避したに違いありません。
もちろん今は酸いも甘いも知ったナイスミドルとして恥じらいにも少々免疫ができているのですが、当時とは別の魅力を備えた体躯にはなっているため、むしろ今回の方がを重大なリスクが予見されるため行かないことにしておきました。
当時の湯原温泉には旅館にも混浴があったので、ここでリスクを回避しても大変なことが起こることもあるんだけどね。
勝山町並み保存地区の檜舞台とのれんの町並み
のっけからすっかり話がそれましたが、中国勝山の駅前交差点には「檜舞台」という通りができていました。
勝山は木材の産地でもあるため、ヒノキを組んだアーケードとなっていて、「檜舞台」は「ウッドストリート」とも呼ばれています。
この通りを抜けると酒蔵や旧家といった古い建物と、それらをリノベーションした工房やカフェなどが並ぶ勝山町並み保存地区に入ります。
また、ここは「のれんの町並み」と呼ばれるだけあって、通りに面したほとんどの店舗には色とりどりののれんが下がっています。
もとはこの通りにある草木染めの工房でつくられたのれんをかけていたお店があったのですが、それが1軒、また1軒と増えていったのだそうです。
これはクルマの修理屋さんですかね。
郵便局?と思ったけど違うみたいです。ちょっとトラップかけてきてる。
勝山はかつて出雲街道の宿場町として栄え、あの文豪、谷崎潤一郎先生も戦争中ここに疎開し、「細雪」はここで書かれていたそうです。
そう、ここなかなか素晴らしい町並みなんですよ。
でも湯原温泉に胸をときめかせていた頃の僕の脳内は
「湯」「湯」「湯」
「混」「男」「女」「混」
「❤」「❤」「❤」
みたいな感じだったので、こんなに素晴らしい町並みがあるなんてまったく知りませんでした。
というかまったく眼中になかったのかもしれません・・・
寅さん最終作品のロケ地
町並み保存地区の奥の方に進むと、全国的に有名なお酒「御前酒」の蔵元で、200年以上の歴史をもつ「御前酒蔵元 辻本店」があります。
江戸後期から明治にかけて建てられた建物は、登録有形文化財に登録されていて重厚そのもの。
同じ辻本店の向かいの建物の前には「男はつらいよ 」ロケ地の碑があります。
この作品は、男はつらいよ 第48作(最終作)である「寅次郎 紅の花」。
晩年、病気ですっかり痩せてしまった寅さんが、最後の力を振り絞って紡ぎ出した最終作です。
この作品は寅さんが永遠のマドンナ「リリー(浅丘ルリ子)」と奄美の加計呂麻島で一緒に暮らしていた、という設定ですが、岡山の美作地域でもこの勝山のほか、津山や美作滝尾駅がロケ地になっています。
この勝山は「辻本店」で寅さんが日本酒を試飲して酔っ払ってしまうシーンで登場するのですが、いかにも寅さんがぶらっと歩きそうな町並みで、最終作にふさわしいロケ地だと思いました。
寅さんと見てきた、一番美しい駅「美作滝尾」
寅さん最後のロケ地といえば、ここも忘れてはいけません。
同じ岡山にあるJR因美線の美作滝尾駅。
古き良き昭和の日本の香りを残す木造駅で、現在は無人駅ですが、駅舎の中は往時の雰囲気を残したまま美しく整備されています。
そしてその奥に寅さんがいるのです。
実はこの美作滝尾駅も、「男はつらいよ」の最終作「寅次郎紅の花」の冒頭で、寅さんが切符を買い、列車を待つホームでトンボの目を回すシーンに登場したことで知られています。
駅舎にはその時の撮影シーンの写真も残っていますが、寅さん(渥美清)さんはこのとき、すでにがんが転移し、無理を押しての撮影だったと言われています。
到着して20分ほど、ちょうどいい時間に、2,3時間に1本しかない1両のディーセルカーがやってきました。
山田洋次監督が「寅さんと一緒に日本中の駅を見てきたが、これほど美しい駅はもう日本のどこにもない」と語ったと言われる美作滝尾駅も、同じく寅さんの最後を飾るにふさわしい場所だと思いました。
<2019年4月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
勝山町並み保存地区への旅
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