そこは冬のどこかの海岸。しかも恐ろしく寒そうな場所。
大きな氷の塊に太陽、しかも極寒の東の空から生まれたばかりの、細く鋭いサンライズが差し込んでいる—
初めてその写真を見た瞬間、ここに行きたい、と強く思ったのでした。
ジュエリーアイスと呼ばれるその氷が見られるのは北海道の十勝にある豊頃町。
それ以来、僕の「行きたいところリスト」に何年も眠っていながらも、厳寒期の北海道の交通事情でなかなか行けなかったその場所に、とうとう行く機会が訪れたのでした。
「ジュエリーアイス」へのアクセス
「ジュエリーアイスを見たい!」と思ってもまず最初に問題となるのがそのアクセスでした。
ジュエリーアイスが現れるのは毎年1月中旬から2月下旬ころ、北海道豊頃町にある大津海岸という場所。大津の集落まではJR豊頃駅から1日2往復のコミュニティバスがあるものの、もちろん早朝に着くバスなどありません。
豊頃には宿泊施設が少ないため、通常は50キロほど離れた帯広市内や、十勝川温泉に泊まってレンタカー(もしくはタクシー)でやってくるしかないのですが、厳寒期の北海道で夜明け前に慣れない雪道を運転するのはあまり気乗りがしませんでした。
そんなわけで、ずっと行きたいと思っていながら、なかなか行動することができなかったのですが、昨年あたりからジュエリーアイスが「北海道の冬の絶景」として知られるようになり、帯広からの早朝ツアーなども企画されるようになってきたのです。
そこで、最初はこうしたツアーに参加してみようと思い、帯広に住む友達のカメラマン帯広帯子(仮名/👩)を誘ったのでした。
豊頃のジュエリーアイスツアーに行こうと思うんだけど、一緒に行く?
行きたーい!でもなんでわざわざツアーに参加するの?
え?だってジュエリーアイスは車だと雪道怖いって言ってたっしょ?
今年は雪ないから大丈夫!車で乗せてくよー
ということで、夢は意外にあっさり実現したのでした。。。
いざ、ジュエリーアイスと対面!
日の出前には海岸に着けるよう、帯広を朝5時前に出発し、大津海岸までは1時間とちょっとでした。ただし道路のコンディション次第で前後はあると思います。
駐車場に車を停め、外に出ると気温はマイナス9.4℃
今日は全然あったかいよ、と帯子は言います。
だって息吸っても鼻の中凍らないし、余裕でしょ。
事前に「死ぬほど寒い」と聞いていた僕も、これでもか、というくらい防寒対策してたので、まあ確かに想像してたよりは寒くなかったんだけどね。
駐車場のそばにはプレハブづくりの小さな休憩所兼ショップができていました。
ここ1,2年で観光客が急増しているのでしょう。
この日は週末、土曜日の朝だったため、駐車場にも車は多く、海岸にもたくさんの人がいました。厳寒の北海道の早朝、しかも不便な場所にありながら、これだけの人が訪れているのには正直びっくりしました。
車を降りると、海岸まではほんの数分。
これが大津海岸です。
わかりますか?大きな氷の塊が海岸線に打ち上げられているのが。
ジュエリーアイスとは、冬の寒さで凍った十勝川の氷の塊が太平洋に流れ出し、河口の大津海岸に打ち上げられる現象のことなのです。
なのでジュエリーという名前から想像するような小さな氷ではなく、実際はバカでかい氷の塊。
しかもこれが泥をかぶったりしてて、何も知らずにひとりで来てたら呆然としてしまうレベル。
波打際まで行けば、波に洗われた小さな氷の塊を見つけ出すことができるかもしれませんが、マイナス10℃の早朝に、冷たい波をかぶるリスクはあります。
とりあえず、比較的小ぶりで、汚れが少なそうな氷の塊を探して、帯子とふたりで別の氷の台座の上に運びます。
うーん、これは形がいいんだけど、汚れが目立つなあ。
とか言いながら、二人で見つけ出したのはこの氷。
台座の上にセットしたら、次の作業は磨き上げ。
帯子は3リットル入りくらいの水のボトルを5本、持ってきていました。
この水を氷の汚れている部分にかけて、磨くのです(お湯ならなおよし)。
そして磨いた後の姿が、これ。
どーですか!結構きれいになりましたよね?
いよいよ日の出。氷の塊がジュエリーになる瞬間
やがて日の出の時間が近づいてきます。
この日は地平線の上に薄い雲がかかっていたので、日の出の瞬間は見られなかったのですが、太陽が雲の隙間から姿を見せると、氷の塊が輝き始めます。
写真がうまければ、もっとスゴイ絵が撮れるんでしょうが、最初なのでこんなもんでしょう。
どこかのおじさんが探し出して氷の台座に置いた小さい氷の人形が残っていたので、これもカメラに収めてみます。
もしも水を持たずに行ってしまっても、こんなふうに、誰かが探したり磨き上げたりして残していった氷をみつけて写真を撮ることもできますね。
ジュエリーアイス観賞には朝に来る人が多いようですが、昼間でも夕方でも、気象条件によっては素晴らしい写真が撮れるようですよ。
駐車場に戻ると、ジュエリーハウスと呼ばれる先ほどの休憩所がオープンしていました。
暖かい食べ物や飲み物も用意されているので、ここで冷えた身体を温めながら休憩するのもいいかもしれません。
僕たちが朝食代わりに食べたのは1日15食限定の「大津DONセット」。
大津産の鮭フレークといくらの親子丼に、あたたかい海鮮汁がついて1000円。帯子がこれは絶対お得だ、というので食べてみましたよ。
そのほか大津の海産物や特産品などのお土産販売、ジュエリーアイスの写真も展示されていました。
豊頃のハルニレの木もおすすめ
豊頃町には有名な「ハルニレの木」があります。
ここはJR豊頃駅に近く、ジュエリーアイスから20キロ以上離れた場所にありますが、帰りにちょっと立ち寄ってみました。
グリーンシーズンには観光スポットとなっているようですが、この日はほとんど人の姿を見かけず、一面の雪の中にそれは静かにありました。
びっくりしたのは、太陽の光を受けて、雪がキラキラと光っていたこと。
わかりますかね?
まるで白い砂漠の上を白い蛍が飛ぶようにキラキラと光っているのが。
太陽が昇っても、外気はまだ零下10℃近いせいか、雪の結晶が融けることなくそのまま光っているのでしょうか?
ハルニレの木から戻ると、僕たちの足跡だけが雪原の中にまっすぐな道を描いていました。
<2020年2月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
豊頃ジュエリーアイスの基本情報
ジュエリーアイスへの旅(ここに泊まりました)
個人的に日本一洋朝食がおいしいホテルだと思っています。僕は毎年1回必ず泊まるホテルです
コメント