茨城県の日立市の一画に知る人ぞ知るB級スポットがあります。
その名も「塙山（はなやま）キャバレー」。
キャバレーと言っても、ムフフな夜のお店そのもののことではなく、小さな飲食店が密集した町なかの一画を地元民がそう呼んでいるのだそうです。
そのネーミングセンスからご想像の通り、ここは昭和30年代のバラック街の佇まいを色濃く残した場所なのです。
塙山キャバレーの最寄は常磐線・常陸多賀駅
常磐線の日立駅からひとつ東京寄り、常陸多賀駅がこの塙山キャバレーの最寄り駅。
日立市の中心から5キロほど離れていますが、ここ常陸多賀には日立関係の工場も多く、駅前も結構にぎやかです。
駅から南へ約1キロほど歩く間、ファミレスや量販店が並ぶ、全国どこにでもあるような郊外の幹線道路沿いの風景が続いていたのですが、塙山と呼ばれる交差点に立つと、マンションや一般の住宅地の手前の非常に狭いスペースに、間口の狭い飲食店が密集する異様な空間が現れるのです。
どれも総トタン造りの小屋みたいお店が多く築何年になるのか想像もつきませんが、まだ現役の店舗も多いのです。
寂れてすでに廃墟となってしまったバラック飲食店街は、北海道の空知や九州の筑豊など、かつての炭鉱街に行けば、いくらでもあると思うのですが、こうしてすっかり時代から取り残されたまま、いまだに現役バリバリで営業している、という点がここがB級スポットとして名高いゆえんなんでしょうね。
塙山キャバレーの由来？
塙山キャバレーの大きさは、一辺30ｍ四方くらい。ほんのわずかな区域に身を寄せあっているお店の数は10～15軒くらいでしょうか。
なぜこんな一画がここに作られ、なぜ今でも残っているのか正確なところはわかりません。
茨城の日立といえば、今はもちろん日立製作所の企業城下町ですが、かつてこのあたりは常磐炭田と呼ばれる炭鉱地が広がり、日立製作所も日立鉱山で使用する機械の修理製造部門から発祥したのだと言われています。
ここはそんな炭鉱時代の繁華街の名残だと思えば、なんとなくわかるような気がするのですが、正解かどうかはわかりません。
かつてはこの狭い空間の細い路地の両脇に、さらに身を寄せ合うようにスナックや居酒屋が密集していたのです。
かつては、と書いたのは、実はこの塙山キャバレーでは2014年の冬の未明に火事があり、一部店舗が全焼してしまい現在は中央部が空き地になってしまっているのです。
かつてはこの部分にもぎっしりと店舗が並び、もっとディープな雰囲気を醸し出していたのだ、と言います。
それでもまだまだ往時の怪しげな雰囲気を残している路地もあり、昼間でも奥深くに入り込むにはなかなか勇気が必要です。
扉の向こうは別世界への入口？
昼間なので誰もいないだろう、と思って路地の中に入り込んで写真を撮ろうとしていると、なんとなくどこからかじっと僕を観察しているような視線を感じます。
よう子なのか、京子なのか、それとも別のお店からなのかはわからないのですが、誰かが無言で僕にこう語りかけてくるのです。
そんなところでうろうろしてないで、中に入って来なさいよ。
ここは写真を撮りに来る場所なんかじゃなくって、飲んで飲んで、ぐでんぐでんになって、こことは違う、別世界に行くための場所なんだからさ。
ねぇ、あたしと一緒に行こうよ、あっちの世界へ。
そうだよな、きっとどこかにそんな世界への扉があることを期待して、みんなここにやってくるんだろうな。
せっかくここまで来たんだから、僕も行ってみようかな、あっちの世界へ。
まだ開店前の雑然としたお店の中で、薄く透き通るような青い寝間着のままカウンターで足を組んでいる、まだ30代半ばのママを想像してそんなふうに決心した瞬間、どこからかウルトラレガシー級ママふうな女性が路地に現れ、まるで不審者を見るような視線で僕を見ながら通りの向こうへと消えていきました。
うーん、やっぱりまた今度、夜に出直して来よう。
まだまだ僕には敷居が高いみたいだ。
この日はまだ時間が早かったせいか、どのお店も開いている気配がなかったのですが、早いお店は午後2時くらいから開いているようです。
でもやっぱり夜に来ないと別世界には行けなそうですね。
＜2015年11月訪問＞ 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
塙山キャバレーの基本情報
塙山キャバレーへの旅
塙山キャバレーから歩いて帰れるホテル「ホテル ルートイン 日立多賀」👇
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