北海道中央部、旭川空港から車で10分ほどの場所にある東川町。この人口約8400人の小さな町に今、移住者や観光客が続々と増え続けています。
その理由は、大雪山麓の豊かな自然の中での暮らしと、北海道第2の都市、旭川からほど近いという利便性を両立することができるから、と言われていますが、もちろんそれだけで人が増えるわけではないと思っていました。
東川の何がそれほど住む人、訪れる人を魅了するのか、訪れてみて初めてわかったような気がしました。
「君の椅子」で東川を知る
旭川駅からバスで40分ほど、東川の町の中心にある道の駅「道草館」。
この道草館のある通りが東川のメインストリート。
この商店街、なんか日本っぽくないですよね?
この東川の商店街の特徴は、お店の前にユニークな木の看板があること。
東川は木製家具の工場が集まっている「木工の町」。
全国的に名高い旭川家具の約30%が東川町で生産されているんだそうです。
もちろん町内には家具工場のアトリエがあり、そこでお気に入りの家具や木工製品を買うこともできます。
が、僕が東川を知って、ここに来たい!と思ったのは、実は東川町のこの取り組みを聞いたことがあったから。
生まれてくれてありがとう
君の居場所はここにあるからね
こんなメッセージとともに、この東川町で生まれたすべての赤ちゃんに贈られるのが木製の「君の椅子」。
ううう、なんだかおとーさんジーンときちった!
(こう見えても一児の父です。娘大学生だけど)
誕生する子どもを迎える喜びを、地域の人々で分かち合いたい、というこのプロジェクト、素晴らしい取り組みですよね!
贈られる椅子は、毎年デザインを変えて東川町内の工房で製作され、歴代の椅子が東川町役場に展示されていました。
そしてこの東川町には、タイムカプセル付きの「新・出生届」や「新・婚姻届」などユニークな取り組みも多く、とにかく住民にあたたかい、というイメージ。
札幌とその周辺以外はほぼすべての市町村が厳しい人口減に苦しむ北海道の自治体の中で、この東川の人口が増えている一番の理由は、こうした住民に対するあたたかな取組があるからなんだろうな、と思います。
写真の町、東川
さて、この「君の椅子」の展示があった東川町役場には、もうひとつ、「写真文化首都・写真の町」というなんだか不思議な肩書きが付いています。
そう、東川町のもうひとつの顔は「写真の町」。
というか最近はこれをメインで売り出してる感じですかね。
当時、東川は写真に特に関わりあったわけではないようですが、1985年に突然世界にも類のない「写真の町」宣言を行い、以来30年、写真うつりのよい町づくりを進めたり、写真に関わる様々なイベントで町を盛り上げています。
その中の「写真甲子園」は全国の高校の写真部を対象に、三人一組のチームを組み、組写真で競い合うフォトコンテスト。
代表校がこの東川周辺に集結し、選手たちは北海道を撮影フィールドとして、人々との交流や豊かな自然環境に触れる大会です。
ちょうどこの年の11月に映画化される、ということで、町にはポスターがたくさん飾られていました。
町を歩くと、さっそくこんな通りが。
街灯の下に歴代の写真コンテストの入賞作や、壁には町の子どもたちが写した写真が飾られていたりします。
ちょうど紅葉の最盛期だったのでしょうか、この写真ストリートにきれいなイチョウの木があるなあ、と思って近づいてみると、なにやら撮影がはじまっています。
この女性は中国の人気旅行レポーターの趙さん(仮名)。
実はこの日は「日本のナイスミドルすぎるトラベルライター」である風祭哲哉氏が、このイチョウの下で「旅と我が人生」というタイトルで中国中央テレビのインタビューを受けることになっていたのです。
・・・・・・・・・というのは冗談ですが、この娘たち、中国か台湾からの旅行者でしょうか、3人できゃーきゃーいいながらイチョウの木の下でかわるがわる写真を撮りまくっています。
僕もこのイチョウの写真を撮りたかったんだけど、彼女たち、なかなか退きません。
日本人だとふつーは空気読んでちょっとしたら順番譲るんだけど、あちらの国からいらした方々にはまったくそういう思考回路はありませんね。
そんなわけでここは一回スルーして、ほかを観光してから戻ってくるのが賢明かですね。
美しい小学校マニアもうなる「東川小学校」
郷土館や文化ギャラリーがある東川町の文教地区を抜けると、まだ新しくカッコいい建物に突き当たります。
うわぁぁぁぁぁ、これが東川小学校。
北海道の美唄出身で、僕の大好きな、アルテピアッツァ美唄の安田侃さんの作品が玄関前に。
しゃれおつやなー、東川。
美しい小学校マニア1級の僕をこんなにうならせるなんて。
この建物、半分は東川小学校、半分は地域の交流センターとして使われているみたいです。
この開放的なガラス張りの窓が特徴的ですね。
体育館みたいですけど、これ普通の教室棟みたいです。
これ、どこかの現代美術館っていっても信じますな。
東川に来て、唯一残念だったのは、雲が多くて大雪山が見られなかったこと。
晴れていれば、このあたりからの眺めは最高だったんだと思います。
そう、東川は旭岳のふもとの町でもあるのです。
小学校やその周辺を30分ほどブラブラしたので、中国の娘さんたちの撮影会もさすがに終わったろう、と思って戻ってみると、あら、そこにいるのは再び趙さん(仮名)。
まだお気に入りのカットが撮れないのね?
趙さん、まあ確かになかなかかわいいけど、なんぼなんでも占領しすぎでないかい?
ということで今度は東川町文化ギャラリーの写真展を見てさらに30分後、ようやくイチョウの撮影に成功しました。
しかしインバウンドの波は日本人でもほぼ知らないようなこんな小さな町にも押し寄せているんですね(2017年当時)。
「暮らし体験館」に泊まってみる
すっかりこの町のファンになっていた僕は、その後も何度か東川を訪れ、ついには特別町民となり、町の株主になってしまいました(まあふるさと納税しただけですが)。
東川町には「ひがしかわ株主制度」というのがあり、ふるさと納税の形で寄付を行うと、特別町民となることができ、返礼品の形で町の様々な特典が受けられます。
その特典のなかの一つに東川町が運営する宿泊施設への無料宿泊というのがあったので、初めて東川に泊まってみることにしました(町なかにホテルは少ないのです)。
いくつかある中で僕が選んだのは「暮らし体験館」という移住希望者のための住宅。
移住希望者が中長期でおためし暮らしをする設定なので、中はマンションのようにひろびろ。
食器や調理器具がフルセットになったキッチンや洗濯機もあります。
そしてこんなベッドルームがムダに3つも!(違うタイプの部屋もあります)
ナイスミドルがひとりで1泊するために来るところではありません。
でもカップルで来てもお部屋余らせちゃいそうです。。。
そうだ、女の子3人と来るといいかも!!!
家族で来いよ・・・って話ですよね。わかります。
でもここに何泊かしてワーケーションとかよさそうです。
完全移住は難しいけど、夏の暑い時期だけ北海道に住む、みたいな多拠点居住には憧れるし、その時は東川町も間違いなく候補のひとつになりますね。
<2017年10月/2021年8月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
こんなところにひとりで泊まるとこんなストーリーも妄想しちゃいますね
東川町への旅
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