横手のかまくらは、ずっと前から行ってみたいお祭りでした。
大学時代の友人に横手出身の女の子がいて(彼女は雪のように白くきれいな肌でした)、彼女から何度かかまくらのときの話を聞いていたからでした。
それまで横手の町には何度か降り立ったことはあるのですが、かまくらの時期に訪れたことはなかったため、これはようやく念願の初かまくらを体験した時の話です。
今はなき寝台列車「あけぼの」で秋田へ
横手のかまくらは、毎年2月15日と16日に行われる小正月行事で、約420年の歴史があります。
町の至るところに作られた雪のやしろ「かまくら」の中から、地元の子どもたちに「入ってたんせー」と呼びかけられ、かまくらの中に入って水神様にお賽銭をあげると、子どもたちが甘酒やお餅でもてなしてくれる、という雪国の情緒ある行事です。
はじめてのかまくらへは、当時まだ上野から秋田経由で青森まで運転していた寝台列車「あけぼの」で行きました。
あけぼのは寝台特急ですが、寝台料金(6300円)がかからず、特急料金だけで乗車できる「ゴロンとシート」というというなんともお得なカテゴリーのシートがありました。
しかもこの座席は普通のB寝台席と同じものなのです。
ただ寝台車のように布団セットがついていないので、ベッドの上に直接ゴロ寝しなければなりませんが、布団があるかないかの違いだけで寝台料金がかからない、というそのお得感に誘われて、ためしに乗ってみることにしました。
別にケチったわけではありません。
風祭トラベルマーケティング研究所の所長として、あえて困難な道を選んだわけです。
その体を張った市場調査の結果は・・・・・サムっ!
布団がないので、とにかく寒い。
もちろん車内には暖房が入っているのですが、2月の新潟やら山形やら秋田のギンギンに冷えたすきま風がどこからか入ってきて、ごろんとシートに巣食うケチった星人たちに「それみたことかっ!」と襲い掛かってくるのです。
ちょっとこの車両だけもうちょっと暖房強くしてくれよ、と思いましたが、構造上1両だけ調整はできないのか、それとも戦略的に(寝台車との優劣差を出すために)寒くしているのかはわかりませんが、まー大変な一夜でした。
結論。
「ごろんとシート」に冬に乗る場合は、布団を持ち込むか(これは無理ですね)、いつも以上に厚着をして(股引とかタイツとかがマストレベル)乗りましょう。
というか、寝台料金ケチっちゃーいけません。
と、えらそーにアドバイスしてはみたものの、すでにあけぼのは廃止されているので、もう利用する機会はないと思いますが、「サンライズ出雲」とか「サンライズ瀬戸」とかにも「ノビノビ座席」という怪しいシートがありますからね。
ちなみにこれが秋田駅到着時のあけぼの。
昼のかまくらも絶対おすすめ
秋田から奥羽本線の普通列車に乗り換えて、約75分で横手駅に到着します。
かまくらというと暖かそうな橙色の明かりを灯した雪のやしろの夜の情景が浮かぶのですが、昼間もいろんなイベントが盛りだくさんで、結構楽しめるのです。
横手市街の中心部にある「横手ふれあいセンターかまくら館」の前に行くと、こんな催しが。
これも横手の小正月の伝統行事のひとつ、ぼんでん、と呼ばれる催しのひとコマ。
豪華絢爛な頭飾りをつけたぼんでんの秀麗さを競うコンクールの最中でした。
このぼんでんは明日、ここから約3キロを練り歩いて旭岡山神社に奉納されるのですが、最後は先陣を競って激しい押し合いが繰り広げられる勇壮な伝統行事だということです。
コンクールのあとには餅まきが行われ、地元の人々と観光客が入り乱れての餅取り合戦が行われましたが、結構たくさんまかれたので、本気の人は1食分くらいは取れたかもしれません。
これはかまくら館に貼ってあったぼんでんのPRポスター。
豪華な頭飾りのぼんでん、30本。
山の上の神社まで4キロを練り歩く男衆、853人。
男衆の中にいるいい男の数、自称も含めてだいたい八割。
あったか冬靴はいて、
数えに行こう。
なかなかやるじゃん、横手!
さて、横手かまくら館に「かまくら」を1年中体感できるファンタジックギャラリーという施設があったので覗いてみることにしました。
入場料100円を払って中に入ると、かまくらを紹介するパネルや映像があり、一番奥に「かまくら室」というものがあります。
ここは1年中-10℃保たれて、かまくらの実物が展示されています。記念撮影用の袢纏なども用意されているので、かまくらの季節以外に来るにはいいかもしれませんね。
午後は、夜のかまくら会場となっているところを先取りしてブラブラと散歩してみます。
校庭には数個の大きなかまくらと、無数のミニかまくらが作られています。
夜はミニかまくらにろうそくの火が灯されて、きっときれいなことでしょう。
横手南小学校からすぐのところにある、羽黒町武家屋敷通り。
夜の本番を控え、職人によるかまくらのメンテナンスシーンなんかも見られて面白かったのですが、ここのかまくらは雰囲気ありましたね。
昼間の誰もいないお屋敷の立派な門前に、ポツンと佇む真白な無人のかまくら、風情ありますよ。
そんなわけで、かまくらはもちろん夜が本番ですが、昼も結構おススメなのです。
そして夜のかまくら
横手かまくらの主な会場は、横手城のある横手公園、羽黒町武家屋敷通り、二葉町かまくら通り、市役所本庁舎前道路公園の4か所で、期間中はこの4か所を結ぶシャトルバスが10分間隔で運行されています
二葉町かまくら通り会場まで歩いて行く途中、横手川を渡る蛇の崎橋にかかると、眼下にミニかまくらの灯りが。
おぉ、これはなかなか幻想的。
川原に降りてみると、ひとつひとつのミニかまくらの中にはろうそくの火が灯り、これ全部に点灯するの大変だろうな、と思うほどの数です。
二葉町会場は、普通の民家の並ぶ細い路地のところどころにかまくらが点在しています。
昔からこの通りのかまくらは町内会が主体的に運営していて、最も伝統的なかまくらの姿を残している会場だと言われています。
しかし人がたくさんいるので、なかなか中に入るきっかけがつかめません。
かまくらと言えば、中にいるめんこい子供たちから「はいってたんせー」と声をかけられて「おぉそうか、じゃあお兄さんもちょっくらお邪魔してみよっかな」的な感じでものごとが進むと思っていたのですが、とんでもありません。
かまくらの外には順番待ちの人々が待っているような状態だったので、ささっと一通り眺めてここは終わりにします。
横手公園は、横手城の天守閣とかまくらのコラボレーションが味わえる会場。
なんかこのままだとかまくらの中に入らずに終わってしまいそうなので、僕も順番待ちして、いざ、カマクラ!
かまくらに入ったら、まずは水神様が祭られている祭壇にお賽銭をあげてください。そうすると子供たちが甘酒や焼餅をふるまってくれますので、火鉢にあたり、子供たちとの「話っこ」を楽しみながら、雪国情緒を味わいましょう。
かまくらでの振る舞い方マニュアルにはこんなふうに書いてあったのですが、子供たち、結構あっさりしてました。
なかなか共通の話題もなく会話もさほど弾まないので、お餅食べて、甘酒飲んで、まあ雰囲気が味わえたからよしとしよう、ということであえなくかまくら体験は終了いたしました。
横手のかまくら。
ちょっと人が多すぎて、にほん昔話に出てくるような鄙びたかまくらではなかったけど、でもやっぱり来てよかったと思います。
欲を言えば、観光客もいないような普通の通りになぜかポツンとひとつだけかまくらがあって、「はいってたんせー」という声に誘われて中をのぞいてみたら、そこには色白秋田美人のお姉さんがひとり佇んでいた、みたいなシチュエーションがあるともっとよかったのですが。
<2013年2月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
横手かまくらへの旅
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