山形県長井市に知る人ぞ知る秘境絶景ツアーがあると聞き(聞いたのか、偶然自分で発見したのか忘れたけど)、さっそく行ってみたのですが、現地に向かう途中からまあまあの激しい雨。
なんでも山間の峡谷を小さなボートで潜り抜けるツアーみたいなので大丈夫か?とちょっとビビってたんだけど、結果的にはここまで来てこのツアーに参加しないなんてあり得ない、というくらい面白かったです。
※2022年度はグループでの貸切(一艘6名まで)のみ運航だそうです
レトロなロンドンタクシーで三淵渓谷へ
「日本の宝!秘境を巡るボートツーリング
絶景・ 三淵渓谷通り抜け参拝」
このツアータイトル、ムダに情報量が多いのでわかりにくいのですが、僕が行こうとしているのは山形県長井市にある「三淵渓谷」というところ。
長井市街からは10数キロ奥なので「道の駅 川のみなと長井」から出ていた循環バス(土日祝限定)に乗っていくことになります。
9人乗りのレトロなロンドンタクシー「まわるん」という名称でしたが、この日は貸切でした。
しかも45分も乗って運賃片道100円。
やっす!
(と、ここまで書いておいてなんですが、2022年度は残念ながら運航してないみたいです…)
「まわるん」は途中で「野川まなび館」という環境学習施設に立ち寄り、ここで乗船整理券を受け取ることになります。
バスには僕一人しか乗ってないので、整理券を受け取るのも一人。
もしかして今回のツアーは僕一人ですか?
はい・・・こんなお天気なので・・・
雨でも大丈夫なんですか?
はい・・・もともと雨が降りやすいところなので雨具はあるから大丈夫なんですけど(上目遣い)・・・
な、なんなんやその上目遣いは!
「大丈夫なんですけど・・・」のあとの・・・が気になるやないかっ!
でも行ってあげたら喜ぶと思います。うん、ぜひ行ってあげて!
いつの間にか雨が結構はげしく降ってきました。
え?こんな雨の中、屋根もない船に乗るのかよ!というレベルで降ってきたのですが、もう引くに引けない感じです。
やっぱり長井の市内と山間部は天候も違うんですね。
バスはずんずん高度を上げ、長井ダムの横を抜けて奥へ奥へと進みます。
やがて合地沢湖面広場と呼ばれる場所に到着すると、ここが船乗り場となっています。
僕以外に乗船客らしき姿はありません。
はーい、こんにちは!
という感じで、かなりフレンドリーなアウトドアおじさんが出迎えてくれましたが、雨はいっそい激しく降り続いています。
いざ、北の高千穂ボートツーリングへ
三淵渓谷という名前をほとんどの方は聞いたことがないと思います(僕も知りませんでした)。
そこは最上川水系の置賜野川(おきたまのがわ)をせき止めてできた長井ダムの「ながい百秋湖」の上流部にある深い渓谷のこと。
合地沢湖面広場と呼ばれるダム湖の一部からボートに乗ってしかたどり着けない秘境なのですが、数年前からグリーンシーズンの週末を中心に、ここをボートで通りぬけるツアー「絶景・三淵渓谷通り抜け参拝」が行われているのです。
この日はあいにくの雨でしたが、風が強くなければ運航休止にはならない、ということで、ライフジャケットと雨除けのポンチョを借りてさっそくボートに乗り込みます。
ひとりで!
天気が崩れそうなので当日に大量のキャンセルが出たのか、それともまだまだ認知が足りず、もともとガラガラだったのかはわかりませんが、とにかく6人乗りのボートに僕一人が載せられ、船頭のおにーさんと一緒に1時間のボートツーリングに出発です。
ちなみに6人乗りボートが4艘あるので、1度に最大24名までは対応できるそうです。
こうして船の上から見た感じは奥会津の「夢幻峡の渡し」に似てますね。
ここもダム湖で流れがないので、雨が降っていなければ水鏡になったり川霧が出たりするみたいだし。
「夢幻峡の渡し」と違うのはボートは手漕ぎではなくエンジンで動くこと。
なのでスピードを上げるとちょっと西表島のマングローブクルーズみたいな感じにもなります。
ガイドも船頭さんの肉声ではなく、テープが流れるので、おにーさんひとりと僕ひとりだとなんだかビミョーな空気。
10~15分ほど湖の上を移動すると、やがて両側から崖が迫ってきます。
おおお、この中をこのおにーさんと二人っきりで冒険するのか!
この先の異界でラスボスとか出てきたらどうするのか。
まさかこのおにーさんを守るために闘わなければならないのか、俺!
この三淵渓谷は、川幅が3~5m、高さ50mを超える断崖絶壁が約250m続いています。
これは北の高千穂と言ってもいいんじゃないか!
と言ってはみたものの、実際は高千穂よりずっとスケールは小さいのですが、川幅が狭く崖に間近に迫り昼なお暗い感じなのでむしろ秘境感はこっちのほうがありなのです。
三淵渓谷「通り抜け参拝」の意味
ところでみなさん、このツアー名が「三淵渓谷通り抜け参拝」となっていたのにお気づきだったでしょうか?
かつて奥州安倍氏の統領、安倍貞任に「卯の花姫」という若く美しい姫がいたのだそう。
源義家(八幡太郎義家)が東北地方に攻め入った際、この地を守っていた貞任の娘「卯の花姫」を虜にして
おとーさんの身の安全は保障する。早く戦を終わらせて僕と一緒に幸せになろう
とか言って貞任陣営の戦略を聞き出し、貞任を討ち取ってしまったのです。
・・・やるな、義家。
典型的な女たらしのパターンやな。
・・・って、羨望してどうする!
そのため自分を責めた「卯の花姫」はこの岩の絶壁から身を投げてしまい竜神となり、いつしか三淵の水神様となったのです。
そんなわけで、ここを通過する前には必ず船の上から水神様を拝むため「通り抜け参拝」となっているのです。
しっかし雨、めっちゃすごいんですけど!
動画でも、特に卯の花姫が身を投げたという狭い絶壁区間に入ると、滝のような音を立てて雨が落ちていますよね。
いつもこの区間だけはこんなに雨が強くなるんですか?
いや、普段はそんなことないんですけどね。。。
あ、もしかすると義家が迎えに来たと思って卯の花姫が歓喜の泉を溢れさせてるのかもしれないっすね!
あー、受付のおねーさんが「行ってあげて」って言ってたのはそういうことだったのか。
やるな、俺。
典型的な女たらしのパターンやな。
ということで、卯の花姫の物の怪(もののけ)を現代に連れて返らないように水神様に再び手を合わせて1時間のクルーズを終了。
天下の晴れ男もさすがに水神様の棲む世界では雨に降られ、あいにくの天気でしたが、天気のいい日にまた来てみたいですね。
まだまだ粗削りで認知の少ない場所ですが、素材自体は悪くない気がします。
もうちょっと物語とか演出的な何かがあるといいかもしれないですね。
<2019年7月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
三淵渓谷への旅
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