秋田内陸縦貫鉄道(路線名は秋田内陸線)は、鷹ノ巣から角館までの100キロ弱を結ぶ長大なローカル鉄道。
かつての国鉄阿仁合線と角館線の間に新たに線路を敷設して1989年に全通した比較的新しい鉄道なのですが、途中、マタギと呼ばれる伝統的な狩猟が行われているほど山深い地域を通るため、過疎化と人口減で常に廃線の危機と隣り合わせ、苦しい経営が続いています。
実はこの鉄道の現在の社長は、僕の会社の関係者なので密かに応援しているのです。
そんなわけで頑張る秋田内陸縦貫鉄道としゃちょーにエールを送ろうと訪問をしたお話。
北秋田の桃色の花園?
秋田内陸縦貫鉄道(以下、秋田内陸線)の北側の始発駅(角館方面行)は奥羽本線と接続している鷹ノ巣駅。
鷹ノ巣は平成の大合併で周辺3町と合併し、北秋田市という、巨大な面積をしめる名前の自治体になったようですね。
えらい広い面積になったなぁ、と駅前の観光案内版を眺めていると、なぜか強烈なパワーを発しているスポットを発見しました。
げ、マジかよこれ。
ひとり旅のナイスミドルにこんなのみせちゃ、あかんやろ。
これは桃洞の滝(とうどうの滝)と呼ばれる名勝。
その姿から女滝とも呼ばれ、安産、子宝、縁結の滝として親しまれているのだそうです。
そりゃそーだわ。
名前からして桃色の洞って、おもわせぶりすぎるぞ!
ぜひ生でみせてほしいぞ。
と思ったのですが、ここは山深い秘密の花園にあり、気まぐれにぶらっとたどり着ける場所ではないようです。
残念ですが、いつかこの桃色の洞を生で見るまでは、都会の秘密の花園で桃色の洞を探そうと思います。
たった1両の急行「もりよし」で出発!
いきなり脱線しましたが、気を取り直して秋田内陸線の鷹巣駅へ。
今回乗ったのは、1日1往復(プラス一部区間運行)だけ走っている急行列車「もりよし」。
急行と言ってもたった1両で、結構混んでます。
「もりよし」というのは沿線の「森吉山」が名前の由来。
たぶんこの山だと思うんだけど、隣に座ってたおじーさんに聞いてもわかりませんでした。
いや、正確に言うと、おじーさんの秋田弁がなに言ってるんだか全然わからず、正しいかどうか不明ということなんですが。
途中には5か所、田んぼアートもあったりして、がんばってるんですよ、秋田内陸縦貫鉄道。
僕が秋田内陸線に乗るのは今回が2回目なのですが、前回来た時は乗り通しで終わってしまったので、今回は沿線の中心駅である阿仁合駅で降りてみました。
これが阿仁合駅舎。
突然ですがこの形、なんだかわかりますか?
・・・・・わからない
答えは「幸せの形」なんです
それ、「お仏壇のはせがわ」!
(おててのしわとしわを合わせてしあわせ~ってCM知ってます?もしかして関東エリア限定?)
とか思わず突っ込んじゃったかもしれなせんが、この駅の形、何かの数字に見えませんか?
そう、この駅は数字の4が背中合わせになって「4あわせ」の形になっているのです。
この阿仁合駅が北緯40度のところにあるので、こんなデザインになっているんですよっ!
専念寺の煩悩あふれる「振り向き如来像」
阿仁合の駅前には「内陸線資料館」がありました。
よくある感じの小さな鉄道資料館だったのですが、奥に行くと阿仁マタギルームが。
マタギはクマなどの大型獣を捕獲する狩猟集団だったとのことですが・・・
こえーよ。
こんな敷物の上には座れません。
旧阿仁町(現在は北秋田市)はかつて鉱山で栄えた町でもありました。
阿仁合駅から徒歩5分のところにある「伝承館」はその阿仁地区の文化を、後世に伝える資料館で、すぐ隣には阿仁鉱山にやってきたドイツ人技師の官舎だった異人館も残っています。
その阿仁の見どころの一つが「専念寺」。
内陸線の線路わきにある小さなお寺ですが、ここに「振り向き如来像」と呼ばれる珍しい仏像があるというのです。
拝観料の代わりに300円を納めてお守りをもらって本堂の中に入ると、仏壇の向かい側の天井近くにそれはありました。
想像していたのよりはかなり小さい仏さまでしたが・・・
おおお、これは優美な仏さま。
振り向いてますね、本当に。
修業の途中で、きっと後ろからナイスミドルにでも声をかけられたんでしょうね。
わたしだって時にはナイスミドルに煩悩したりするのよ。
だからあなたも1度や2度の煩悩で、深く心を病ませることはありません。
きっとそんなことを伝えてくれているんだろうな、と激しく心強く思っていたら、実はこの如来さま、何かにコケてつまづいた姿なんじゃないか、と言われているんだそうです。
そんなわけでこの如来さまは「煩悩」ではなく、「失敗」を恐れるな、という意味をあらわしているのだそうです。
ま、そりゃそうか。
阿仁の花火と灯籠流し
町を歩いていると、お祭りの屋台並び、ところどころで「阿仁の花火と灯籠流し」という幟がはためいていました。
お盆も過ぎた日曜日なのにおかしいな、と思っていると、予定していた日が雨で、今日に順延されていたようです。
残念ながら花火や灯籠流しの時間まではいられないのですが、会場まで行ってみました。
会場は阿仁合の駅の裏あたりの阿仁川沿い。
この日もまだまだ残暑の厳しい1日でしたが、きっと花火が上がり、灯籠がこの川を下ると、この山深い町にも秋の風が吹くようになるのでしょう。
写真にして今、あらためて見直すとそうでもないのですが、その日、高台から見下ろした阿仁の町は、なんだかとっても「日本に、もっと恋する旅」的な絵でした。
秋田内陸線は「スマイルレール」
夏の遅い夕暮れはまだちょっと先ですが、西に傾いた太陽が山の端にかかるころ、阿仁合の駅を出発します。
秋田内陸縦貫鉄道には新たに「スマイルレール」という愛称が名づけられています。
まるで絵に描いたかのような、のどかな里山の原風景の中、この土地の人々が旅人に向ける笑顔は実に素晴らしいのだと言います。
そして訪れる旅人が笑顔になって、次々に新たな旅人を呼べば、地域もさらに笑顔になる。
そんなスマイルの連鎖をつなぐのが秋田内陸縦貫鉄道。
内陸線が走ると、鉄道マンも沿線の人も、笑顔で手を振っているのがわかるでしょうか?
頑張ってほしいですね、秋田内陸縦貫鉄道!
<2019年8月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
秋田内陸縦貫鉄道(秋田内陸線)の基本情報
秋田内陸縦貫鉄道(秋田内陸線)への旅
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