ヨーロッパのお城や宮殿をはじめ、世界中の有名建築をモチーフにした美しい建物(しかも学校や公民館などの公共施設)が点在し、「メルヘンのまち」と言われているのが富山県の小矢部(おやべ)市。
メルヘンなんてそんな甘っちょろい・・・とか思ってたら、予想以上に本気で、全力で想像のナナメ上だったお話です。
メルヘンの街、小矢部とは?
小矢部市は富山の西端、石川県との県境近くにある全国的にはあまりメジャーではない地方都市。
そんな小さな町に古今東西の有名建築をモチーフにした豪華絢爛な建造物がいくつも建てられています。
なぜ小矢部がそんなことになったのかというと、かつての市長が建築士で、
市民や子どもたちが夢や希望を持ち、世界に羽ばたいていけるような地域のシンボルをつくろう
という想いから、世界中の建造物の美しいところを選りすぐって、小中学校や保育園、公民館などの公共施設を建てまくったのだそうです。
そんなわけで、誰がつけたか、小矢部市の代名詞は「メルヘンの街」となったのです。
市内にはめっちゃ広い範囲に35ものメルヘン建築が点在しているのですが、小矢部市には無料のレンタサイクルがあり、市内のいくつかの場所で借りることができます。しかも電動もあってめっちゃ便利。
スタートは小矢部の玄関口、石動(いするぎ)駅。
1日で全部をまわるのは無理なので、いくつかの代表的な建物をターゲットにして、その途中にあるものにも立ち寄る感じでめぐり始めると、いきなり畑の中に突如メルヘンっぽい建物がありました。
これは「松沢公民館」。さっきのは背面で、こっちが正面だったんですね。
本体はボストン公会堂、塔屋はロンドンのセントポール寺院だそうですが、公民館というより北軽井沢にある僕の(将来の)別邸という感じですね。
すぐ近くのJAには「メルヘン米」の文字。
よくみるとこれもメルヘンっぽい建物だけど、これはJAが勝手にメルヘンチックに建てたもので、メルヘン建築には認定されていません。市の公共建築ではないですしね。
ただ、小矢部のメルヘンに賭ける意気込みがマジだということは十分にわかりますね。
まるでハリーポッターの学校?「小矢部市立大谷中学校」
最初の目的地に向かってずんずん進むと、広大な田園の中になんかすごい建物が見えてきました。
これは「小矢部市立大谷中学校」。私立「聖ホグワーツ学園」とかじゃなく、普通の公立の中学校です。
ハリーポッターかよ!
間違いなく僕が今まで見た中で、一番ド派手な公立中学校です。
校門の横にいた、二宮金次郎先生だけが、わずかにここは日本だということを教えてくれています。
というかなんというテキトーな和洋折衷!
この学校、本体の塔屋は東大安田講堂、正面は東大教養学部、高さ47mの塔の先端はオックスフォード大学の学生寮、体育館は大阪中之島 中央公会堂で内部は国立劇場、クラブハウスのドームは、フィレンツェの大聖堂というラインナップで構成されているそうです。
なんでもありやん!
ただただメルヘンのためだけにつくられた塔。
国内のどの大学よりも立派なクラブハウス。
そこはかとなくラブホ感ただよう体育館。
元小矢部市長、GOOD JOB!
と叫んでしまいたくなるような、想像のナナメ上行く中学校でした。
しかしどう考えても国賓の子息の学び舎にしか見えない・・・
サイクリングターミナルで「充電させてもらえませんか?」
続いて市内南部の丘陵地帯へと向かう通り沿いにあったのが「旧薮波保育所」。
ここは古今東西の名建築とは一線を画し、おとぎの国「メルヘン」がテーマだそうですが、今でもアート建築として通じそうですね。
かつて保育所として子供たちがあそんでいた空間も自然に還りつつあります。
若干地味な感じはしますが、この「小矢部市消防団薮波分団」もメルヘン建築のひとつ。
高さ20mのサイレン塔兼ホース乾燥室は、スイスのチロル地方の山小屋のイメージだそうです。
広大な小矢部のメルヘン建築めぐりをするためには30キロくらいは自転車には乗るので、電動サイクルのバッテリーが少し心配だったのですが、出るときは満タンだったのに、まだ半分もまわる前から残量がどんどんなくなってきました。
あー、これはあかんやつや!
古いバッテリーだと、見かけは満タンでも、消耗が早く、あっという間になくなってしまうことがあるのです。
ところが、メルヘン建築スポットに「サイクリングターミナル」という建築物があるのですが、なんとここが小矢部のレンタサイクルステーションのひとつにもなっているのです。
近すぎてよくわからないのですが、ここはルネッサンス様式の東京駅がモデルになっていて、各種自転車の貸し出しのほか、バーベキュー場や宿泊施設になっています。
すみませーん、駅で借りたレンタサイクルのバッテリーが切れそうなんですけど、充電させてもらえませんか?
あー、駐輪場にバッテリーあるからテキトーに使っていかれ
出川哲朗かよっ!
1時間くらい充電したおかげで、すっかりパワーを蓄え、再びメルヘン建築めぐりを再開します。
「蟹谷中学校」の高さ42mの尖塔はオックスフォード大学、校舎中央はベルサイユ宮殿、左右は迎賓館となっていて、館内の125mの廊下は「体力づくり」の場として利用されているとのこと。
こちらは「蟹谷小学校」。校舎と時計台は東大教養学部なんだそうです。東大好きですね。
富山は地方の中では高校生の東大進学比率が高いのですが、こうやって幼いころから東大に通ってるからなのかもしれませんね。
こちらは「旧北蟹谷保育所」と「北蟹谷公民館」の競演。
「北蟹谷公民館」は日本銀行本店(旧千円紙幣の裏)、塔屋は三越デパート本店がモデル。
「旧北蟹谷保育所」は東京工科大学(現東大工学部)がベースで、中央部分はなんと長崎の大浦天主堂。
贅沢な保育所だったんですね。また東大だけど!
石動中学校と喫茶「源平」
再び市内の方に戻って、最後に「石動中学校」を見て終わりにしようと思います。
石動中学校もメルヘン建築を代表する建物ですが、巨大すぎて近くに行くと全貌がわかりません。
キャッスル・オブ・スピリットと呼ばれるスイスの中世の城をモデルに、中央の時計台は英国の国会議事堂ビッグベンがモデルとなっています。
一階のピロティは安定の東大法学部で、建物は田の字型に4ヶ所が吹き抜けになっています。
これでいったん目当てのものを見終わったので、自転車で駅の方に戻り始めると、何やら防災無線が突然鳴り響きました。
こちらは小矢部市防災無線です。ただいま、震度4の地震が発生しました
自転車で爆走してたせいか、僕はまったく気づかなかったのですが、隣の石川県の能登半島で最大震度6強の地震があったようでした。
とりあえずしばらく駐車場で様子を見ていたのですが、特にその後は何もなかったので駅に戻ると、列車は運転見合わせとなっていて、再開の見込みはわからない、とのこと。
しかたなくどこかで時間をつぶそうと駅を出ると目の前にありました、いい感じの喫茶店が。
店の名前は「源平」。
石川県との県境にある倶利伽羅峠で有名な源平合戦が繰り広げられたことが由来でしょう。
中に入ると期待どうりのレトロ純喫茶感にあふれていました。
先客はいなかったのですが、あとから地元の常連さんがやってきて
けっこう揺れたけ?うちなんかかたがってつぶれんじゃねえかとそぼれたわ
(結構揺れたよね、うちなんか傾いてつぶれるんじゃないかと驚いたよ)
※風祭富山弁研究所訳(推測)
とか話しています。
このあといつ列車が動くかもわからないので、とりあえずお腹に何か入れようと、レトロ純喫茶王道メニューのナポリタンも楽しみました。
結果的にほどなくして列車は運転再開しましたが、結果的にはいいお店を知ることができました。
<2023年5月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
メルヘンの街小矢部への旅
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