いつかは宇宙から地球を見てみたい。
そんなふうに思っても、これまでの宇宙への旅といえば、(前澤さんみたいな)一部の超富裕層や、厳しい訓練を突破した人だけが行ける閉じられた世界でした。
ところが「宇宙の民主化」を唱え、週末に家族でふらっと宇宙に行けるような世界を本気で目指している人々がいます。
それが北海道「岩谷技研」の、気球を使った宇宙への旅、「OPEN UNIVERSE PROJECT」。
そんな岩谷技研のプロジェクトに僕の会社のメンバーが加わっているので、行ってみました!
誰もが気軽に宇宙に行ける世界へ
岩谷技研(いわやぎけん)は北海道江別市にある、気球による宇宙遊覧を目指す宇宙開発企業。
代表の岩谷さんはいつか宇宙事業を行いたい、と北大で航空宇宙工学を専攻し、ロケットについて学んでいましたが、それはまだ一般の人々にとって遠く、夢でも届かないような世界であることに気づいたのだそうです。
ロケットで宇宙に旅立つために必要なのは、数億とも数十億ともいわれるお金。厳しい訓練と宇宙空間に耐えられる体力、精神力。難しい言語の習得。。。
もっと気軽に人々が宇宙に行ける方法はないか、と考えていた時に見つけたのが「気球」でした。
岩谷さんは気球による宇宙実験や宇宙映像制作で事業をスタートし、大型気球開発に舵を切りました。
岩谷技研のミッションは、頑張れば誰でも用意できる程度の経済的負担で、厳しい訓練や鍛錬を必要とすることなく、子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで、すべての人を 「宇宙の入り口」 まで連れて行くこと。
でも気球で宇宙になんていけるの?
そんなふうに思う方もいるかもしれませんが、この気球は高度25000メートルまで到達し、眼下には青くて丸い地球、目の前には宇宙空間にきらめく星々が広がり、宇宙ステーションから見るものと変わらないかのような景色が広がるのだといいます。
これが岩谷技研宇宙遊覧フライトの紹介です。岩谷さんの思いの詰まった素晴らしい映像にもなっていますのでぜひご覧ください。
この岩谷さんの目指す世界に共感して「OPEN UNIVERSE PROJECT」の協賛パートナーとなっている僕の会社から、同僚が出向して北海道江別市の岩谷技研にいるので、一度お邪魔してみたいと思っていたのでした。
大麻「中町商店街」と「カフェテラス四季」
もともと岩谷技研の本社は札幌の北大の近くにあったのですが、僕が行く直前に札幌の隣の江別市にある工場に隣接した場所に本社も引っ越ししたばかりでした。
せっかくだから昼メシでも食べようよ
うちの会社の近くにはあんまり食事するような場所ないんですよね
ということだったので、札幌市内でランチを食べてから、最寄りの大麻(おおあさ)駅に到着。
大麻は札幌郊外の住宅地で人はたくさん住んでいますが、確かに駅前には気の利いた食事をする場所はありません。
30分以上早く着いてしまったので、岩谷技研がある北口方面を歩いていると「中町商店街」と書かれた何やら不思議な商店街がありました。
オフィスビルとか雑居ビルが並んでいて、いわゆる商店街という感じはしないのですが、とりあえず中に入ってみます。
奥のほうはちょっと商店街っぽくなってきましたが、開いている店はほとんどありません。
商店街の真ん中あたりは道幅が急に広くなっていて、ムダに開放感があります。アメリカ西部のネバダとかユタの砂漠地帯にときどき現れる小さなオアシスの町みたいですね。
と思ったら公園に入ったぞ!
公園の先にもまだ商店街は続いているのですが、なにか気の利いたお店がある気配を感じないので引き返すと、商店街の中に(さっきはぜんぜん気づかなかった)気の利いてそうなお店がありました。
「カフェテラス四季」。
モーニングと日替わりランチと午後のケーキセット。なんか絵に描いたような昭和の置き土産的喫茶店ですね。
一見さんは入りにくそう、とかそんなこと言ってる場合じゃないですね。他に選択肢はないのです。
想像通りの昭和喫茶!
ちょっと妖艶なママとかなり高齢の大女将がお店を切り盛りしていて、カウンターには常連っぽいおじさま(おばさま?)、奥のテーブルには近所のマダムのグループがいます。
札幌なんかでランチしないで、ここで食べればよかった、と思うようなメニューの数々。
おなかはいっぱいだったのですが、このメニューに妙に惹かれました。
出てきたのはカラメルシロップたっぷりの四角いプリン。
いい店あるじゃないか、大麻中町商店街!
すっかり落ち着いてくつろいじゃいましたが、今日の目的はここじゃなかった!
いざ、岩谷技研へ
岩谷技研本社があるのは大麻駅からほど近い場所。
宇宙をイメージしたのでしょうか、青い塗装にIWAYAのロゴマーク。ちょっと見ただけではここが世界を変えるようなスゴイことをやっているようには見えませんね。
1階はR&Dセンターのデスクが並び、技術者っぽい制服姿の人たちが、見たこともないような機器をいじっていたりミーティングしていたりして独特の雰囲気なのですが、なんだかめっちゃ熱量を感じます。
僕がお邪魔したのは、引っ越してまだ2日目か3日目だったのでオフィスもまだ雑然としていたのでしょうが、未知のものにチャレンジする志士にとっては、そんな空間が妙に似合っていると思いました。
同僚から話を聞くと、プロジェクトは順調に進んでいて、有人での上空10000メートルの飛行実験もクリア、次回有人飛行で25000mに到達したら、いよいよ実際にお客様を載せての商業運航となります。
すでに2024年度提供予定の宇宙遊覧フライト第一期搭乗者募集は終わっていて、希望者の中から面談等によって5人の搭乗者が決まっているそうですが、お値段は2400万円。
うーん、まあ前澤さんの数十億にくらべればお安いけど、まだ家族連れていく感じじゃないね
はい、でもいずれは100万円台にすることを目指してるんですよ!
おっと、それならふらっと週末に行けそうな気がしてきた!!!
商業運航の一号機は、操縦士と旅客の2名乗りからスタートしますが、順次4人乗り、6人乗りへとキャビンを大型化し、気球の運用やメンテナンスも効率化していくことにより「週末、宇宙に行く?」という世界が可能になるのだといいます。
そんなわけで本社に隣接する気球工場にも案内してもらいました。
なんかムダにジャンジャンバリバリ軍艦マーチとか流れてそうな工場なんだけど、あってる?
実は気球の工場にはサイコーなんですよ
実は岩谷技研の気球工場は元パチンコホール。たしかに大きな気球を作るには広大なスペースが必要ですね。
そんなわけで大麻駅前にあったパチンコ店を居抜きで借りて気球工場にしちゃった、というわけですね。ただスペースを確保するためにパチンコ台を全て撤去するというたいへんな作業があったそうですが。
工場内では、メイトさんと呼ばれるスタッフが、超大型のバルーンを丁寧に手作りしていました。こんな大変な作業をして超大型の気球を作っても、使うのは1回のフライト限りだそうです。
宇宙遊覧フライト用に開発された2人乗りキャビンも展示されていました。
直径150cmの大型窓を搭載し、視界性もバツグン。宇宙空間から地球の姿をじっくりと眺めることができます。
第1期の宇宙遊覧フライトはパイロットとふたりきりの旅となりますが、今後は4人用、6人用とキャビンの大型化も計画しています。
そうなれば、いつか本当に家族で宇宙旅行に行ける日が来ることでしょう。
僕の会社のロビーラウンジにも、このキャビンが展示されています。
会社でも協賛パートナーになっているということに加え、創業者の岩谷さんは僕の大学の後輩でもあるので、この取り組みを個人的にも絶賛応援しています。学部はぜんぜん違いますが!
気球での宇宙遊覧フライトは、上昇で2時間、宇宙空間で1時間、下降で1時間、計4時間の日帰り旅。
いつの日か宇宙空間に1時間も漂いながら地球を見たら、どんなことを感じるのでしょうか。
そんな夢のような世界は、今まではぜんぜん想像もつかなかったのですが、近い将来そんな日が来るときのために、もっと宇宙的想像力を磨いておかないとですね。
<2023年11月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
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