栃木県那須烏山市の「山あげ祭り」はユネスコの無形文化遺産にも登録されている貴重な伝統行事。
以前青春18きっぷを使ってJR烏山線で終点の烏山まで行き、町をブラブラしてたら偶然それを知り、以来ずっと行ってみたいと思っていました。
ある年、夏の高校野球の決勝戦を栃木まで見に行こうと思ったら、ちょうどその時にこの山あげ祭りも行われることを知り、少し足を延ばして行ってみることにしました。
栃木のナイアガラ「龍門の滝」へ
山あげ祭りが行われるのは栃木県の那須烏山市。
JR烏山線の終点「烏山駅」が最寄りなのですが、お祭りまでには少し時間があったので、一つ手前の「滝」駅で途中下車しました。
この「滝」駅の近くには文字通り「滝」があるのです。
それがこの「龍門の滝」。
駅から5分ほどの場所にあるこの滝から、山あげ祭りの期間中は烏山の市街まで無料の周遊バスが走っているということだったので、まずはこの滝を見てからお祭りに行ってみることにしたのでした。
下に降りてみるとなかなかの迫力。
栃木のナイアガラなんだそーです。
・・・うーん、ちょっと言いすぎだろ、栃木!
しかしまあまあ迫力のある滝ではありました。
この滝の上に烏山線の線路があり、運がよければ列車が通るんだそうですが、残念ながらこの日はタイミングが合いませんでした。
那須烏山の親分とか祭り美女とか
龍門の滝から周遊バスで烏山の市街に着くと、町はすでにお祭り一色。
各町内の山車が町なかのいたるところに出ています。
烏山の山あげ祭りは6つの町によって行われており、各町からこうした山車が出されています。
この山あげ祭りは歴史と伝統を誇る日本一の移動式野外劇として、前年末にユネスコの無形文化遺産に登録されたということで(当時)、今年は例年以上に盛り上がっており、このあと全町の山車が烏山駅からメインストリートをパレードするようです。
そんなわけで、各町の山車は次々と烏山駅前に向けて移動します。
烏山駅前広場に6町の山車が並ぶ様子はなかなか壮観。
壮観な屋台の中から見つけた祭り美女もなかなか秀麗。
いいじゃないか、烏山の祭り美女!
あの日からずっと行きたいと思ってただけのことはあるぞ!
午後3時、駅前での記念セレモニーが行われたあと、いよいよパレードがスタート。
各町の山車が続きます。
おおお、野外歌舞伎の役者さんもいますなあ。
おおお、これは烏山の親分!すごい貫禄。
駅前から烏山の目抜き通りを通り抜けた6台の山車は、市街中心部の4ツ辻に集結します。
各町の山車が4つの角で向かい合わせに並ぶと「ぶんぬき」がはじまります。
ぶんぬきとは各町の屋台が集まって行われるお囃子の競演のこと。相手よりもリズムの良さ、音量の大きさと力強さ、持続力などを競うのだそうです。
約30分間、屋台の笛、太鼓、鉦を万雷のごとく響かせます。
囃子方の交代は一切できず、交代した場合はその町の負けを意味します。
若衆達は大きなうちわで囃子方を扇ぎ、景気を付け雄叫びを上げて、最後はみんなトランス状態。
もうちょっと中まで潜入して、万一トランス状態に陥ってしまった祭り美女(祭り熟女も可)なんかがいたら、ゆっくり横になって休憩させることができて、なおかつなかなかよくならない場合は宿泊でもOK!なところまで連れ出して、なんとか救い出してあげたかったのですが、狭い四つ角なので人が多すぎて全然中に入れませんでした、残念!
烏山「山あげ会館」
烏山・山あげ祭りのメインイベントは野外歌舞伎ですが、開始までまだ少し時間があるのでいったん「山あげ会館」に行ってみることにします。
ここは以前に来た時も前を通ったのですが、中には入ったのは今回が初めて。
中に入ると映像や展示があって、山あげ祭りについて知ることができるようになっています。
中には「山あげ祭ミニチュア」というコーナーがあって、実際の舞台と街並みを5分の1に縮尺したミニチュア劇をやっています。
このおじさん、本物の人間のように見えますが、実は名物ロボットの「勘助じいさん」で、栃木訛りで面白おかしく祭を説明してくれるのだそうです。
「山あげ」というのは八雲神社例大祭の奉納行事のこと。
烏山の6町のうち、その年の当番町が担当し、烏山名産の和紙を幾重にも貼り、その上から山水画を描いた「はりか山」という舞台背景をバックに野外歌舞伎を行うのです。
このミニチュアでみるとわかりやすいですね。
この山あげ祭りがすごいのは、野外歌舞伎の舞台装置を人力で移動して、3日間の間に町じゅうのいたるところで上演されるという点なのです。
ようはある町かどで上演が終わったら、この「はりか山」と呼ばれる舞台背景をみんなで担いで移動して、次の場所でまた野外歌舞伎を行うというようなイメージでしょうか。
3日間で15-6ヶ所で上演し、その移動距離は約20キロとも言われています。
この「はりか山」を人力だけで持ち上げて舞台を設置する様子から、「山あげ祭」という名称となったのだそうです。
いよいよ圧巻の野外歌舞伎
山あげ会館を出て今夜の野外歌舞伎の会場である町の中心部に移動してみると、まさにこれから舞台の最終設営をしようとしているところ。
これが「前山」と呼ばれる一番手前の小さな「はりか山」。
まん中に「中山」をはさんで後ろのほうには高さ10mを越える「大山」が準備されていますが、これも全部その年の当番町のメンバーが一から作るのだそうです。
はりか山とはりか山は、遠近感を出すために、こんなふう距離を置いて設営するのだそうです。
そして出来上がった舞台がこれ。
おおおおお、町の中に本当に舞台ができあがった。
そして午後6時、いよいよ野外歌舞伎がスタート。
舞台の前には有料の桟敷席が設けられ、500円で座れるようなのですが、それ以外にも立ち見のお客さんや三脚たてたり脚立に乗ったりな迷惑なカメラおやじがいっぱいでなかなかよく見えません。
そんなわけで少し離れたところから望遠で写真を撮ろうとして振りかえると、こんな感じ。
スゴイですよね、町の一部を完全封鎖して歌舞伎やっちゃってますよ。
この演目「戻橋」は、鬼が化けている絶世の美女があらわれて「色仕掛けうっふーん」的な展開となるのですが、
あっ、しまった手を出しちゃった、ばかばかばかばか、俺!
となったかどうかはわかりませんが、最後にようやく鬼の正体が明らかになって大立ち回り、という内容のようです。
ちゃんと煙も出て、舞台上の特殊効果もあるみたいですね。
午後7時からは次の演目がはじまります。
夜の舞台は、また昼とは違って幻想的。
いいですなー、鬼でも狸でもいいから絶世の祭り美女(祭り熟女可)に化けて僕の前に出てきてくれないかなー
とそんな妄想をも抱いてしまうかのような、真夏の夜の幻想劇場でした。
※2021年はコロナウイルスの影響で、無観客で実施予定のようです。
<2017年7月訪問>
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