僕が個人的に「日本のチベット of チベット」と呼ぶ、徳島県の奥祖谷地方。そう「祖谷のかずら橋」で有名な場所ですが、あのあたりはまだ「日本のチベット」レベルで、本当にすごいのはそこから先。
その「日本のチベット of チベット 」の象徴が国の重要伝統的建造物群保存地区にもなっている落合集落だと思うのです。
そんな落合集落に、5月の最高のチベット日和の日に行ってみたお話です。
バスのドライバーと「松竹梅の法則」問答
JR土讃本線の大歩危駅からバスで約1時間半、落合集落に向かう三好市営マイクロバスは僕以外誰ひとり乗客はいませんでした。
「落合集落展望所」に行きたいんだけど、どこで降りたら一番いいか、と運ちゃんに聞くと3つくらい行き方があるんだとのこと。
松:一番近いけど一番ハードな坂道。
竹:距離も坂のキツさもそこそこの道
梅:坂はそんなにキツくないけど、距離がその2倍くらいある道
ははーん、これは行動経済学でいう「妥協効果」または「極端の回避性」とゆーやつだな。
「松竹梅」の3つの選択肢がある場合、多くの人は真ん中を選ぶっていう傾向があって、マーケティングの鉄則として知られてますね。
本当に売りたいものは「竹=ちょうど真ん中」のグレードにしておくとうまくいくってやつで、僕もよく企画を通すとき使う手法です。本当に通したい企画は「竹」にしておいて、「松」にありえないくらいどっひゃーの企画、「梅」に死ぬほどつまらない企画を並べると不思議なくらい「竹」がうまく通っちゃうので、みなさんもぜひ参考に。
・・・・・って三好市営バスの運ちゃんがそんなこと考えないか。
でもまあここで「竹」を選ぶのも愚かな大衆として操作されてるみたいで気分がよくない。
そんなわけで男は黙って「松」を選びます。
いーじゃないか、急坂!来るなら来い!
運ちゃんは、じゃーここで、と落合の集落を抜けたあたりにある郵便局前で僕を下ろします。
郵便局のすぐわきにいきなりキツイ坂があって、坂を下ったところで橋を渡ります。
そしてその先は上り坂。
おー、こーゆーことね。
でもまあ、歩くぶんには問題ないですわ。
さて、こんな坂道を延々と上って僕が向かっているのは「落合集落展望所」と呼ばれるところ。
この向かい側に見える集落を望む展望台です。
「落合集落展望所」へ
落合集落というのは、この奥祖谷の急峻な山に張り付くように建てられた家並みや畑が一面に広がる日本の原風景のようなところで、国の重要伝統的建造物群保存地区になっているところ。
この落合集落が対岸からきれいに望める場所がこれから向かう展望所なのです。
半分くらいまで上がってきたぞー。
坂道を最短距離で上ってたら、途中で間違えておばーちゃんちの畑に入っちゃったようですが、いーよーいーよ、うちの裏から行ったら近いから、と快く敷地内を通してもらえました。
バスを降りてから約20分で展望所に到着。
展望所には小さな見晴らし台があるのですが、ベンチには先客がいるようです。
・・・・・・と思ってたら、人形?
実はこの落合集落のさらに上流、奥祖谷二重かずら橋の少し手前に「名頃」という祖谷最奥の集落があるのですが、そこは集落の人口の倍以上のかかしがいることで知られている「天空のかかしの里」。
彼らもそこからやってきたんでしょうかね。
そしてこれが見晴らし台からの眺め。
いやー、これが見たかった!
僕の視線よりもっと上まで家が並んでいます。
谷底から集落の一番上まで高低差は390m。よくもまあ、そんなところまで開拓して住み着いたもんだ、と思います。
このビンビンのナイスミドルが谷底から20分もかけて上って来たこの場所よりずっと上のほうに住んでるばーちゃんとかいるんでしょうね。
落合集落から少し東向こうに見えるのが剣山かな、と思っていたのですが、地図で調べるとどうやら違うようでした。
落合集落とアレックス・カーさんの「ちいおり」
次のバスまで時間があるので、一度谷底まで降りて、今度は対岸の落合集落まで行ってみることにしました。
これが谷底のバス通り。酷道、もとい、国道439号です。
国道から落合集落への上り口にこんな案内がありました。
日本3大秘境と呼ばれる祖谷には平家の落人伝説がたくさん残されているのですが、この落合も平家の落人が隠れ住んだと伝えられている集落だそうです。
さっきまでいた展望所が対岸の山の中腹に見えました。
谷底から10分ほど登ったところにあるのが長岡家住宅。
ここは1901年に建築された古い民家。復元修理され、平成22年に完成したもので、落合集落の代表的な建造物です。
この日は時間がなくてそこから上には行けなかったのですが、この落合集落には1棟貸しの宿泊施設になっている古民家がいくつかあるようです。
その代表的なものが「篪庵(ちいおり)」。
アメリカ出身の東洋文化研究者、Alex Kerr(アレックス・カー)さんが「日本に残された最後の桃源郷のようだ」と惚れ込んで住みついていた奥祖谷に作った一棟貸しの宿です。
今回やり残した奥祖谷観光周遊モノレールにリベンジする時は、ここに泊まってみるのもいいかな、と思いました。
うーん、でもひとりだとちょっと寂しいかもな。
<2018年5月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
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落合集落への旅
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