実は、なんと僕には京都に舞妓はんの友達がいたのでした。
いや、正確にいうと「昔は舞妓はんだったかもしれない友達」、もっと正確にいうと「舞妓はんだったかどうかわからないけど、なんとなくそんな感じ」の友達が京都にいるのです。
そんな彼女と、真夏の京都で優雅なソワレ(夜会)を催したときのお話です。
京都の老舗純喫茶「ソワレ」
元舞妓だった(かどうかわからない)彼女は京都で暗躍しているライターで、とあるSNSで知り合って以来、もう5年くらいお互いかなり気まぐれにやり取りしてたのですが、彼女のライター名が「〇〇〇」という、まあ京都の花柳界では極めてオーソドックスな流派っぽい名前だったのです。
そんなわけで彼女は花街を引退して、今は京都のライターをやっている美しい女に違いない、と僕は勝手に思い込んでいたわけです。
彼女とはリアルで会ったことがなかったのですが、所用で大阪にしばらく滞在していたので、ちょっと京都にも寄ってみようかな、ということで彼女に声をかけると、2つ返事でOKが返ってきました。
意外と敷居が低いぞ、京都の元舞妓!
まあSNS上でも5年も付き合っていると、お互いB級スポット好きっぽいぞ、とか、意外とエロス的なサムシングも語れそうだぞ、とかなんとなくわかりつつ、ライターの端くれ同士、初対面でも一緒に飲みにいったら楽しそうだな、と思っていたのでした(たぶん彼女も)。
そんなわけで指定された待ち合わせの場所は京都、南座。
さすが舞妓はんは待ち合わせの場所からしてちゃいますな。
渋谷のハチ公前とか池袋のいけふくろうとか言ってる自分を見つめなおすきっかけになりました。
あら、風祭はん?
突然呼び止められてビックリ。
実は少し早く着きすぎて、どこかで少し涼もうと思っていたのですが、彼女はそれより前にいたようです。
僕は彼女の顔を全く知らなかったのですが、彼女は中学生の頃から僕の写真集を持っていたようで、僕がウロウロしてるのを知ってたんですね。
えー、ビックリ。和装で来るかと思ったらしゃれおつな洋風の帽子なんかかぶってるし、(鈴木京香+(阿川佐和子-20歳))÷2 みたいなタイプですね!
こんなにあっついのに着物は無理どす。
・・・ていうかなに言うてはるかわかりまへんわ
そんなわけでまずは彼女の記事でときどき紹介される、京都のいろいろな古い喫茶店のどこかに行きたい、というと四条河原町にほど近い1軒に案内してくれました。
ソワレですか。
渋いですな、「夜会」。
昔、京都の寺社仏閣に超強力なコネクションを持ってる女社長に、とある超有名寺院を貸し切ってパーティーしたい、とお願いしたら「~京の春のソワレ」的なタイトルの企画書があがってきたことがありました。
ソワレ好きなのか?京都の人は。
あの女しゃちょーも元舞妓だったのかなー、元舞妓って京都のいろんなところで暗躍してそーだなー、と思っていると、
私、花街とは何の関係もないのよ
(ということで以下、普通のことばに戻します)
ただ何となくそんな名前にしたんだけど、確かにいろんなところで関係者に間違われること多いわね。
と彼女は言いました。
このお店はため息が出るほど美しいゼリーポンチがインスタで大人気ということなのですが、残念ながらこの日はSold out。
店内はソワレという名前にふさわしくシックな雰囲気。
このブルーのライトは、女性をより美しく見せてくれる効果もあるのだそうです。
彼女が注文したのはレモンスカッシュ。グラスには昭和を代表する画家・東郷青児のイラストが描かれていますが、その東郷が足繁く通った喫茶店としても知られているのだそうです。
東華采館のエレベーター執事
ソワレを出ると、ではこちらへ、と彼女が案内してくれたのは四条大橋沿いの古い建物。
ん、京都なのに北京料理・・・でっか?
と思っていると、どーん!
おおお、川床やないですか!
この日も日中は40度近い猛暑日だったのですが、この川床に降りるといい風が吹いてきます。
鴨川の向こうに南座を望む、サイコーの席やないですか!
さすがやな、元舞妓はん(と便宜的に呼ぶことにします)!
ここは東華采館と言って、京都の中華料理の老舗名店。
20世紀の初頭から半ばにかけて日本に数多くの名だたる西洋建築を遺した、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ建築のスパニッシュ・バロック様式の建物。
ヴォーリズさん、いろんなところで名前をよく聞くけど、近江八幡に住んでたんだね。
そういえば「けいおん!」で有名な滋賀県の旧豊郷小学校もヴォーリズさんの作品だったな。
なのでお隣の京都でも同志社関係の建築物等々、結構作品を遺しているみたいです。
この建物、もとは大正時代に建てられたビアホールですが、戦後まもなく中華料理店となり、現在もビルすべてが東華采館として営業中。
一般席や個室、宴会場、テラス席、そして夏場は川床のほかに屋上でビアガーデンもやっているそうです。
食事が終わって会計を済ませると元舞妓はんがちょっとこっちに来て、というのでついて行くとなにやら妖しいエレベーター。
なんやなんや、この先に秘密の部屋とか用意されてるのか?
さすが元舞妓はん、なんとまあこんなにスマートな誘い方ができるのか!
と、のこのことエレベーターに乗り込んでみると、エレベーターガールならぬ、エレベーターおじさんが。
なんとこのエレベーターは日本最古のもので、今でも手動式の運転なんだとか。
エレベーターおじさんじゃなかったですね。エレベーター執事と言い直しておきましょう。
わざわざ用もないのに僕のために乗せてくれたんですね。
さすが元舞妓はん、ホスピタリティも最高ですね。
夜の京さんぽ
さて、食事も終わって次はどうしようか、という空気がふたりの間に流れます。
実は元舞妓はんが結婚していることは知っていたので、あまり夜まで引っ張るのも悪いかな、と思っていたのですが、本人はあまり気にもしてない様子です。
まあ取材もあるし、けっこう自由にやっているのよ
そんなわけで、真夏の京の夜さんぽに出かけることにします。
ま、彼女が全く躊躇もせずに、さあさあこっちへ、と歩きだしてたからなんですけどね。
四条通から花見小路通りへと入るとこの風情。
このあたりは夜に足を踏み入れたことはなかったんですが、やっぱ祇園は夜ですね。
お盆休みだけあって外国人観光客だけでなく日本人の観光客もたくさんそぞろ歩きしています。
もうちょっと人影が少なければ、もっとソワレ的な雰囲気になったのにな。
しばらく歩いて法観寺八坂の塔を正面に見上げる坂道へ。
元舞妓はん、僕のため右へ左へ遠回りしながらベストなルートを歩いてくれてたんだと思います。
二年坂。
ここも夜は初めてでした。
京都市街の方を振り返ると、祇園の古い町屋の上にはきれいな月が出ていました。
夏目漱石みたいに「月が綺麗ですね」と言ってみようかと思いましたが、なんだか彼女はその意味も知っていそうだったので、今回は自粛しておきました。
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