徳島市内の真ん中に聳える標高280mの眉山(びざん)。
市内のどの方向から見ても、その姿が眉のように見えることからその名がついたといわれています。
その妖艶な名前に魅かれて、徳島に来るたびに「眉山、いいなー」と思いつつ麓までは行くものの、実は一度も登ったことがなかったのですが、今回とうとうそのチャレンジの機会が訪れたのです。
菜々子が似合う眉山
徳島の眉山。
艶っぽい山です。
名前からしてなんかエロい。
ううっ、この松嶋菜々子も、たまらんっ!
そーじゃなかった。
徳島市内の真ん中に聳える標高280mの眉山は、市内のどの方向から見ても、その姿が眉のように見えることからその名がついたといわれています。
こういうシンボルがある街、いいですね。
どこにいても自分がどの方角にいるかがわかるし、なんというか、街がキュッと引き締まって見えます。
徳島に来るたびに眉山、いいなーと思いつつ、麓までは行くものの一度も登ったことがなかったので、今回こそ眉山に登ってみたい(ロープウェイだけど)と思っていたのでした。
徳島駅前をまっすぐに進むと眉山ロープウェイ乗り場があります。
この眉山ロープウェイは「阿波おどり会館」の5階から出ているのです。
眉山ロープウェイは、阿波おどり会館から発着
僕はこの阿波おどり会館にも入ったことがなかったので、今回が初チャレンジ。
阿波おどり会館には「阿波おどりミュージアム」「阿波おどり観覧ショー」「眉山ロープウェイ」があるのですが、恥ずかしながらわたくし、阿波おどりは見たことがなかった(泡踊りももちろん・・・)ので、ぜーんぶ行ってみようと思います。
まずは阿波おどりミュージアムに入館。
次に眉山ロープウェイに行ってみたのですが、先に眉山に行ってしまうと、閉館時間の関係で阿波おどりショーが見られないことに気づき、先に阿波おどりを観覧することにしました。
「阿波おどり観覧ショー」には昼は阿波おどり会館の専属連が出演、夜は33の阿波おどり有名連(「連」とは踊り子グループのこと)が毎日交代で1連ずつ出演し、一年中阿波おどりを目の前で楽しむことができるのです。
途中で観客に対する阿波おどりのレッスンもあります。
これはフランス人の女の子。
お遍路もそうだけど、外国人、多かったですよ。
アジア系だけじゃなくってフランス人とかポーランド人とか。
そして最後はみんなでおどろー!みたいなありがちなパターン。
僕ですか?
踊りましたよ。
松嶋菜々子みたいな編み笠姿の踊り子さんに優しく手を引かれて「ナイスなミドルの貴方と踊りたいの・・・❤」とか言われたら踊るでしょ、そりゃ。
そんでもっていよいよ眉山!
と思って5Fのロープウェイ乗り場に行ってみると、なななんと強風のため運転見合わせ!!!
君とは縁がないのか菜々子、じゃなかった、眉山・・・
前に来た時もやっぱり雨で、君は白い霧のヴェール纏ってたし。
眉山 ~阿波踊りのひと~
「今日は風が強うて乗られんよ。どこから来なさった?」
振り返ると、紺色のスーツを着た首の細いすらりとした女性が僕をまっすぐに見つめていました。
東京から、という僕の答えを聞くと、固かった表情が一瞬崩れ、困ったような憂いのある表情に変わったように見えました。
「せっかく遠くから来なさったのにあいにくやね。もしよかったら案内するけん…」
彼女はそう言って、どこからか持ってきた重そうな鍵の束を手に、僕をビルの階上へと導きました。
そこは運休しているはずのロープウェイ乗り場でした。
徳島市内の中心にそびえる眉山という名の妖艶で、美しい峰へはそこから登ってゆくのです。
本格的な強風はこのあとだから、今ならなんとか運行できる、と言って彼女はいくつもの電源やスイッチを入れはじめました。
扉の閉まる警戒音が、誰もいない5月の夕方4時の冷たい雨の中でひときわ大きく、いつまでも鳴り響いていました。
地上の台座から放たれて空中に飛び出たとたんに、僕と彼女だけを乗せた5メートル四方の箱は、ゆっくりと体を揺らしはじめます。
彼女は、それを合図とするように踊りはじめます。
いちかけ、にかけ、さんかけて
しかけた踊りはやめやれぬ
ごかけ、ろくかけ、しちかけて
やっぱり踊りはやめられぬ
ヤットサーヤットサー
ヤットヤットヤットヤット
彼女の吐く白い息で、ロープウェイの窓がだんだんと曇り、長い指先が糸のような残像を残しながらゆっくりと舞っています。
身体が伸び上がると、ヒールを脱いだ彼女の足頚がキュッと音をたてるかのように締まります。
その躍動感は、やがて彼女の纏う紺のスーツが溶け落ちて、白地に淡い青色を染めた浴衣や、目深に被った鳥追い笠が浮き上がってくるかのようでした。
風のせいでしょうか、山頂まであと半分の地点、そう、上下のロープウェイがすれ違うための分岐ボイントにかかる時、車両が左右に大きく揺れました。
彼女はあっ、と小さく声をあげると左側の窓に向かって崩れるように倒れかかりました。
間一髪でした。
彼女を後ろから抱きかかえると、白くて細いうなじが目の前で妖しげな匂いを放っていました。
「揺れとるけん、もう少し、このままでいとって」
そう言って彼女は僕の方へと振り返ると、ぴったりと身を寄せました。
ロープウェイは、霧に煙った眉山の山中で大きな弧を描くようにゆっくりと揺れたまま、いつまでも止まらないように思えました。
それは踊り疲れたせいでしょうか、彼女のドクドクとのたうつような激しい鼓動を身体越しに感じながら、僕はもう一度、彼女の妖しい香りのする、白くて細いくびをじっくりと見たいな、とぼんやりと考えていました。
<2018年5月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
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