新潟と福島の奥会津を結ぶ只見線という超絶ローカル線があります。
超絶、という意味は「超絶に車窓が美しい」とか「超絶に山の中を走る」とか「超絶に列車本数が少ない」とかいろいろありますが、とにかく超絶なのであります。
ある時、僕は奥会津の郷土写真家、星賢孝さんの写真を見て、この只見線の只見川第1橋梁という場所にどうしても行ってみたくなったのでした。
きっかけは川霧と只見線の写真
深い緑の渓谷の川面から幽玄と立ち上る真っ白な川霧。
その中を鉄橋をしずしずと進みゆく白と緑のディーゼルカー。
すごいじゃないか、只見線。
こんな景色、一生に一度は見てみたいぞ!
この写真を撮影した奥会津の郷土写真家、星賢孝さんのFacebookをひそかにフォローしていた僕は、いつかこの景色を生で見てみたい、と思っていたのでした。
只見線が川霧に包まれるのは、夏の早朝と夕暮れが多いのだといいます。
そんなわけでとある年の7月に奥会津に向かったのでした。
亡き親父と乗った只見線
上越新幹線の浦佐で在来線に乗り換えて、新潟県の小出駅へ。
只見線はここから福島の会津若松までの135キロを結ぶ、長いローカル線です。
僕が只見線に乗るのはたぶんこれで4回目か5回目かだと思いますが、最初に只見線に乗った時のことはよく覚えています。
中学生の時、夏休みの家族旅行で会津に行くためここに来たのですが、直前に弟が熱を出したため母親も家に残ることになり、父親と二人でこの只見線に乗って会津若松に向かったのでした。
その時に小出から乗ったのが今はなき急行「奥只見号」。
結果的にそれが僕が父親と二人で行った、たった一度だけの旅でした。
当時、新潟行きの特急「とき」も停車して賑わっていた小出駅は、今はすいぶん寂しくなりましたが、小出を出発してすぐに渡る魚野川とその向こうに見える小出の町は、昔の記憶とあまり違わないような気がしました。
小出から途中の只見駅までは越後山脈の険しい峠を越える山岳区間で、列車の本数は1日3往復(+途中の大白川まで1往復)。
僕が乗ったのは7:58の始発ですが、これを逃すと13:11まで列車はありません。
それなのに僕が乗った列車はこの状態。
出発直前に3人になりましたが、あとは途中で乳飲み子を連れた若いお母さんが2駅ほど乗っただけ。
超絶ですね。
平日だったとはいえ、1時間20分近い乗車時間でのべ乗客4人は北海道の最果て路線を上回る乗車密度の低さですよ。
それでも2両ついてるのはなぜなんでしょう?しかもワンマンじゃなく、必ず車掌がいるし。
僕がこのあと乗った只見線の列車も全部そうでした。1両でもワンマンでも十分運行できそうなのに、謎ですな。。。
さて、列車は入広瀬駅を出ると本格的な山間部に入ります。
このあたりはトンネル鉄橋が続く深山渓谷の区間だったと記憶してましたが、川の水が思ったより少なく穏やかでした。
大白川の駅を出ると、その次の只見までの30分間、ひとつも駅がありません。
かつては田子倉という駅があったのですが、廃止されてしまったようで、これも北海道並みか、それを以上の秘境区間ですね。
磐越国境の長いトンネルを抜けると、車窓右側に田子倉湖(田子倉ダム)が現れます。
この田子倉湖から流れ出る只見川のほとりに少し開けた町が見えると、只見に到着します。
只見線のディーゼルカー、地味にペイント列車になってるんですね。
なんで縁結び?と思ったのですが、これは小出 「 こい(恋)で 」 と会津 「 あい(愛)づ 」を結んで運行しているからなんだそうです。
強引やなー。
まあ超絶ローカル線なのでお金のかからない範囲での精一杯の工夫なのかもしれませんが。
只見から会津川口までは代行バス区間
この只見線、この先の只見~会津川口間は2011年の豪雨の影響で、列車の運行はできません。
最近ようやく復旧工事の予定が決まりましたが、再開は2021年とまだまだ先のようです。
そんなわけでここから先はJRの代行バスに乗り換えとなります。
只見駅の改札で駅員さんらしき人と黒い制服にオールバックをキメたおかーさんが話し込んでいたのですが、どうやらこのおかーさんがこの代行バスの運転手だったようです。
そして予想通り乗客は僕ひとり。
ホームのはずれからたくさんのかかしに手を振られ、只見駅を出発します。
只見の駅前は、なんか日本っぽくないんだよなー、なんでだろう。
めちゃめちゃアバウトに言うと、スイスの高原の町みたいな感じです。行ったことないけど。
まるで鋭利な氷河に削られたような山が多いからなんでしょうかね?
ちょうど只見あたりが陰陽の境目なのでしょうか、バスが東に進むにつれ、どんよりとした灰色から、だんだんと青空がのぞいてきます。
バスの中から外の写真撮りまくってた僕に気づいたのでしょうか、オールバックのおかーさんは、眺めのいい場所に差し掛かると時々スピードを落としてくれたりして、なかなかやさしいぞ!
そんでもって時間調整で3分停まるので、下に駅があるから見てきてもいいよ、とか、かなりやさしいぞ!
右手に流されて欠落したままの只見線の鉄橋が見えますよー、とか車窓案内までしてくれたりして、あまりやさしいと惚れてまうやろー!
お互いあと20歳若かったら、このまま何もかも投げ捨てて、この代行バスで海でも見に行こうか!ってな話になったかもしれんけど。
・・・・・ならんか。
そんなこんなで只見から約50分、二人っきりのドライブはあっという間に終わり、代行バス終点の会津川口駅に到着しました。
只見線はここから再び鉄路がつながり、会津若松へと通じています。
<2018年7月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
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