北国の遅い春、 風がなく月明かりもない夜に、富山・滑川では群れをなした「ほたるいか」が海岸に打ち上げられ、青白く光りながら息絶えていく、という美しくも儚い、幻想的な情景が見られるのだと言います。
それが「ホタルイカの身投げ」と呼ばれる自然現象。
これを見ずに「日本に恋する伝道師」が語れるか、って感じだったのでもちろんチャレンジしてみましたよ。
ほたるいかのまち、富山県滑川市
「ほたるいかのまち」と呼ばれるのは富山県の滑川市。
駅前の大きな看板にも水中に浮遊する「ほたるいか」が描かれています。
そしてもちろん町のキャラクター?もほたるいか。
よく北海道の別海町とかが人口の10倍の牛がいる、といった感じで紹介されますが、滑川でそんな感じの比較をしてみると、どれくらいの数字になるのでしょうか?
気になって調べてみたのですが、滑川のホタルイカのここ数年の平均水揚げ量は1800トン。ホタルイカ1匹10gなので年間の収穫は1億8千万匹!
一方、滑川市の人口は3万人ちょっとなので、 なんと人口の6万倍!総人口1億8千3万人のうちの99.99998%がホタルイカでしたっ!
まさにホタルイカに埋め尽くされた町なんですね。
そんな滑川のホタルイカ漁最盛期は3月~6月の時期。産卵の時期に富山湾にやってくるのです。
ほたるいかの身投げとは?
「ホタルイカの身投げ」と呼ばれる自然現象は、風がなく、月明かりのない春の夜に、群れをなしたホタルイカが海岸に打ち上げられ刺激を受け、青白く光りながら息絶えていく、という美しくも儚い、とても幻想的なもの。
普段は月明かりを頼りに移動するホタルイカですが、新月で月明かりがないと、地上の町明かりを月と勘違いして海岸に寄ってくるのでは、とも言われていて、時期的には4月の月明かりのない夜がもっともいい鑑賞のタイミングだと言われていますが、 この日はまさに4月の新月。
とかいいつつ日本一テキトーな旅ブロガーでもある僕は、事前にあまり調べものをしないので、この時期に滑川に来ればきっとホタルイカなんかわんさか見られるんだろうなー、くらいの感覚でやってきたのです。
出発前に「富山 ホタルイカ観光」とググったら「ほたるいか海上観光」というのがヒットしたので、おーそうか、ホタルイカは海から見るものなのか!とあまり深く考えずにその観光船を予約しておいたのです。
だってこれ見たら「おおお、これすげー」ってなりますよね、ふつう。
でもいろいろ調べるとやっぱり海岸に打ち上げられて息絶えていくホタルイカがあまりにも幻想的なので、船の出発前に近くの海岸でホタルイカの身投げも見よう、と前日の夜、滑川のホテルにチェックイン。
この近くでホタルイカの身投げがみられるところどこですか?
フロント氏
うーん、ホタルイカの身投げは砂浜が続いてないときれいにみられないので、この近くにはないねー
一番きれいなのは富山市まで行って岩瀬浜とか八重津浜の海水浴場あたりなので結構遠いかなあ。
げっ、話が違うぞ滑川!お前がホタルイカのまちじゃなかったのか。
人口の99.99998%がホタルイカのくせに、なんで隣の富山市においしいところ奪われてるんだ!
と僕が興奮して青白く発光しても仕方ないので、ホテルにある無料のレンタサイクルを使って、とりあえず翌朝未明に近くの海岸まで見に行ってみよう、ということにしました。
「ほたるいか海上観光」の出航は3時なので、翌朝未明2時にホテルを出発。
レンタサイクルで滑川漁港から海岸の遊歩道沿いに進めども進めども、富山湾越しの富山の町あかりしかみえません。
実はネットの伝言板でホタルイカの出没情報がリアルタイムで共有されているサイトがあって、その情報によると前夜からの出現状況はかなり厳しい模様だったのです。
春の新月の未明だったらわんさか出没するもんだ、と思っていたホタルイカですが、どうやら前日までの春の嵐で、富山湾に流れ込む川の水が濁っているため海岸まで寄りつかないのでは、とのこと。
ホタルイカが大量出現すると海岸から網でも捕獲できるので、それを狙って海岸沿いに出ている人もいるようですが、彼らの照らす懐中電灯の灯りが時々チラチラ光るだけ。
うーん、意外と繊細だぞ、ホタルイカ。
しかたなく海岸線に打ち上げられるホタルイカの身投げはあきらめて、船に乗船するため滑川漁港方面に戻ります。
港からは一足先に篝火を炊いたホタルイカ漁船が港を出ていきます。
このあと、この漁船が定置網を引き上げるシーンを見に行くのです。
いざ、ほたるいか海上観光へ
さて、ほたるいか海上観光の乗船受付場所は「ほたるいかミュージアム」。
おおお、朝3時前なのに結構な人がいますね。
シーズン中の新月の夜(朝)なので、月曜とはいえ予約がたくさん入り、この日は2艘の船が出航するそうです。シーズン中の週末はほぼ満員のようですよ。
そして滑川漁港に停泊していた観光漁船に乗って、午前3時、いざ出発!
春先の未明の日本海上はとても、とても寒い、と着いてから知ったので、前日にあわててコンビニで雨がっぱとホカロンを大量に仕入れてとりあえず防寒対策。
というか事前に調べとけよ、俺!
船は港を出ると沖合い1キロから2キロほどのところにあるホタルイカ漁の定置網の場所まですすみます。
するとさっき篝火を焚いて先に漁港を出ていた船の漁師さんたちが定置網を引き上げ始めます。
この網を引き揚げると、刺激を受けたホタルイカたちが全身を青白く発光させながら浮かび上がってくる、というのがこのほたるいか海上観光のハイライト!(というかそれを見るだけにみんなこの船に乗っています)。
定置網を照らし出していたライトが消され、真っ暗な海の中から少しずつ定置網が引き上げられると・・・・・
ど、ど、どーですか?
網の中でホタルイカが青白く光る姿、超一瞬だけ見えますよね。視力1.5くらいあれば。
僕はなんと3匹×0.2秒も確認できましたっ!
定置網は2か所にある、ということで、もう一つの方に移動しましたが・・・
あのポスターに写っている、滝のようなほたるいかの発光シーンはなく、こちらもあまり変わりませんでした。。。
ドンマイ!滑川。
自然の神秘なので、そ-ゆーこともあるさ。。。
ということで、大量の時の画像をイメージでご紹介します。
残念だった方、ほたるいかミュージアムもあるぞ!
この滑川のいいところは、そんなとき、「ほたるいかミュージアム」でリベンジできること。
朝4時半に帰港し、いったんホテルに帰ってひと眠りしたあと、再びこのほたるいかミュージアムに来てみました。
このほたるいかミュージアム、その名の通りホタルイカに関する日本で唯一のミュージアム。
ミュージアムのメインイベントは、ほたるいか海上観光や海岸での身投げが見られなかった人のために行われる、「ほたるいかの発光ショー」。
中は撮影禁止なので、ここではご覧いただけないのですが、3月~5月頃のホタルイカのシーズン中のみ、実際に滑川の海で捕獲してきたほたるいかを使って発光ショーをやるのです。
海上観光で見た定置網と同じ原理で、鑑賞者が「いっせーのせー」でホタルイカが入った網を持ちあげると、刺激に反応した彼女たちが、妖しく光って僕を惑わせる・・・みたいな感じ。
ちなみに富山湾にやってくるホタルイカはすべてメスなんだそうです。オスは海中で子孫の繁栄の為のミッションを終えると、そのまま本当に昇天してしまうんだそうです・・・
いーなー、そういう人生も。男の本望ですな。
また、ここには「ホタルイカの女子に自由にタッチ!やさしくさわってね、食べちゃいや~ん」的な、いいのか、このご時世にそんなセクハラみたいな刺激的なキャッチコピーで?というコーナーもありました。
そんなわけで僕も「やさしくするからこっちにおいで」と彼女を捕まえて、手のひらの上に乗せてみました。
イテテテ。
噛まれてるよ。
館内にはホタルイカを「これでもかー」っていうくらい食べられるレストランもあります。
いいのか?ホタルイカミュージアムなのにホタルイカ食いまくって?
僕が行った数日後にここに行った知人の女子がそう疑問を呈していましたが、なかなかおいしかったようです。
結局食いまくったのかよ!
このホタルイカミュージアム、
「えっ?ホタルイカしか住んでないような滑川に遠路はるばるやって来て、午前3時から船に乗ってこれっすか?」
的な僕みたいな人間には確かに救いともいうべき施設でした。
だけどやっぱり次はホンモノが見たいかな。
<2018年4月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
ほたるいか海上観光の基本情報
ほたるいかの身投げへの旅
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