中之条ビエンナーレシリーズ第4弾、完結編。
2日間にわたる中之条ビエンナーレの最後の訪問地は、「六合エリア」。
六合とかいて「クニ」と読める人は100万人に1人くらいしかいないレベルの知られざる小さな集落ですが、この六合には実はすごいところがたくさんあったのでした。
日本のインカ帝国「大子駅」へ
今は中之条町と合併してしまいましたが、かつてここは六合村といって、日本のチベットと呼ばれる群馬の中でも特に山深い秘境の村だったのです。小さい頃地図帳マニアだった僕は、よくこの六合村の地図を眺めてどんなところなんだろう、と妄想していたのでした。
だってほとんどまっ茶色だったんですよ、この村。平野だと緑で標高が高くなるにつれて薄緑⇒ベージュ⇒薄茶⇒茶になる、というあの地図のことですよ。
普通はどんなに山奥の町や村でも中心部はベージュだったり薄茶だったりするのですが、この六合村は鬼のような茶色ばっかりで、どんだけ高いところに住んでんだ、ここのおじいさんやおばあさんは!と子供ながらに心を痛めていた優しき少年だったのですよ、僕は。
そんなわけで僕は(たぶん)初めての六合村をすごく楽しみにしていたのです。
チャツボミゴケ公園から再びペアピンカーブの続く険しい山道を下ったり上ったりしながら進むと途中でこんなダムに出ました。
「品木ダム」だそうです。
このダムは通常のダムのように治水や水資源確保、発電のために作られたのではなく、水質改善という目的を持った珍しいダムなんだそうです。なんでも このダムに流れてくる水は強い酸性で、 このまま下流に流すと農作物はおろか、草木も生えない地獄のような風景になってしまうため、ダム湖に一時的に水を溜め、中和したあと下流に流すのだそうです。
あー、そりゃそうだよね。
チャツボミゴケ公園見てきたのでその理由、よーくわかります。
国道292号線に出てしばらく下ると、山中にいきなりインカ帝国の古代遺跡が!
なんじゃこりゃー!!! ってホントは知ってましたが。
ここは旧国鉄吾妻線の太子駅跡。
太子駅は、戦時中に鉄鉱石を搬出するために開業した貨物専用の駅で、戦後は一時旅客輸送も行われましたが、1971年に国鉄吾妻線の長野原~太子間が廃線となり、現在はその遺構が一部残されているのです。
かつてはここに駅前通りがあって賑やかだったと聞いてもまったく信じられませんね。
まさに古代文明の遺跡みたいです。
この太子駅の遺構で特徴的なのが、このホッパーと呼ばれるコンクリートの建造物。
ホッパーとは鉱山や炭鉱から掘り出した鉱石や石炭を出荷するまで貯め込んでおくためのもの。
おそらくこの上にホッパーがあって、出荷の際、天上の穴から鉱石を貨車の上に落として積み込んだんでしょうね。
この廃墟感!
鉄鉱石は、さっき見たチャツボミゴケ公園から掘り出されていたんですよ。
いやー、いいですな、六合村。
まさに僕が子どもの頃抱いてた妄想通りの異世界です。
養蚕農家の伝統的建造物群「赤岩地区」
六合村で僕が行ってみたかったもう一つの場所は、さらに少し下ったところにある「赤岩地区」。
ここは数多くの養蚕農家が残っている集落で、群馬県初の重要伝統的建造物保存地区に選定されたところ。
この町並み、歩いてみたかったんですよ!
赤岩は明治時代以前から養蚕が盛んだった集落で、「サンカイヤ」と呼ばれる養蚕に適した頑丈な農業建築が特徴的なんだそうです。
その「サンカイヤ」の代表的な建物「湯本屋」が中之条トリエンナーレの会場の一つになっています。
この湯本屋、幕末に赤岩地区に隠れ住んだと伝えられる蘭学者高野長英をかくまった家なんだそうです。
中之条トリエンナーレの「六合エリア」の作品は、この赤岩地区にたくさんあるのですが、残念ながら時間がなくなってきました。
ここから高崎まで70キロ弱。
18時の閉店までにバイクを返さなければならないので、余裕を持って3時には出たいのですが、赤岩に着いた時にはもう2時半をまわっていました。今日は昼ごはんもまだ食べてないんだけどね。
全部を見るのは到底難しいので、全会場のコンプリートもあきらめて赤岩の町並みをブラブラ歩くことに目的を変更。
ホントにいい雰囲気ですね。
この先にもアートがあるので行ってみたいのですが、また次回のトリエンナーレに持ち越すことにします。
ん?北関東の一部に生息していると言われる絶滅危惧種の「愚連隊」がこんなのどかな美しい村にもいるのかー
「無敵日本 神風特攻隊」が、「相席御免 難破特攻隊」に
「黒潮航路 一夜飾り」が、「旅恥掻捨 一夜限り」に
「陸の勇士 現場直行」が、「夜の勇士 天国直行」に見えたので、
んー、なかなかいいこと書いてあるなあ、と一瞬思ったけど、僕が小さい頃から崇拝していた六合村のイメージが大きく崩れたような気が・・・
と思ってよくみたらこのトラックもアートっぽいですね。
「千本桜 不夜城」、「男一匹旅」、「天下無敵 日本男児」
さて、男一匹でこれから原チャリに乗って峠越えて2時間、高崎まで帰るとするか。
いいじゃいか六合村、そして中之条ビエンナーレ。
またいつか来て、今度はコンプリートするからな!
<2017年9月訪問>
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