北海道のタウシュベツ橋梁は、旧国鉄士幌線にかかっていた鉄道橋で、糠平ダムの完成によってダム湖に沈む運命となりましたが、湖の水位によって見えたり隠れたりするため、幻の橋と言われています。
しかも現在は老朽化が進み、その姿を見られる時間も、おそらくそう長くはありません。
タウシュベツ橋梁に行くには本来、地元のガイドツアーに参加する必要があるのですが、今回、僕は地元の友達とガイドなしで幻の橋探検に出かけてみたところ、これがめっちゃ怖かったのです…
タウシュベツ探検のベースは糠平温泉
タウシュベツ橋梁があるのは北海道の十勝北部にある上士幌町。
現在、橋へと続く道は自由に通行することができず、一般の観光客は上士幌の糠平温泉にあるNPO法人「ひがし大雪自然ガイドセンター」のガイドツアーでしか訪れることができません。
ところが地元、帯広に住む港の女、じゃなかった、友人のカメラマン、帯広帯子(年齢不詳・仮名)によると、ガイドツアーに参加しなくても行く方法があるのだと言います。
そんなわけで帯広駅で帯子と待ち合わせし、彼女のクルマで糠平まで向かうことになりました。
帯広から1時間ちょっとで糠平の温泉街へと到着します。
糠平の温泉街から三国峠に向かってさらに車で10キロちょっと進むと、タウシュベツへ向かう林道の入り口となります。
しかし林道の入り口はこの通りクローズされています。
ヒグマ危険地帯につき立ち入り禁止
タウシュベツ橋梁へと向かう道が立ち入り禁止の理由はこれでした。
ヒグマだけではなく、この先は悪路極まりないため、一般車両の通行は規制されていて入れないのです。
徒歩とか自転車は絶対ダメ、車もバイクもダメ。
タウシュベツに行く方法は、本来は地元のガイドツアーに参加するしかないと思っていたのですが、帯子がこんなことを言ったのです。
上士幌町の管理事務所で通行許可証をもらって鍵を借りれば行けるっしょ
その結果、こうして開かずの門が開いたのでした。
やるじゃん、帯子!
僕たちのクルマ以外は誰もいないであろうダートの道を慎重に進むと、帯子が突然クルマを停めて外に出ます。
なんすか、これ?
あー、これどーみてもクマちゃんのフンよね
いやいや、クマちゃんとかかわいく言ってもヤバいの変わらないから…
大丈夫よ、クマ鈴もってるし
うーむ。
まだ車だからよかった。
とか言って、林道の駐車スペースに車を止めてから、糠平湖畔のタウシュベツ橋梁に着くまでこんな道、数百メートルも歩くのかよ!
しかもこの日は風速10メートルはあろうかと思えるほどの強風で、森は終始ゴーゴー鳴っていて、熊除けの鈴とかとてもじゃないけど効き目がなさそうです。
仕方ないわね、森のくまさん唄いましょう!
いやいや、森のくまちゃん唄ってもヤバいの変わらないから!
そして幻の橋へ
たとりついた糠平湖畔は、もの凄い風。
湖が、まるで海のように波立って、しぶきが上がって虹ができています。
そして振り返ると、そこにタウシュベツ橋梁がありました。
湖の水位が下がる冬から春にかけて姿をみせるのですが、例年は6月頃から湖に沈みはじめ、10月頃には完全に沈んでしまっていることが多いようです。
今年はまだかろうじて頭の部分だけが水没を逃れていましたが、真ん中からうしろはすでに水の中に沈んでいます。
近づいて見ると、さすがに老朽化が激しく、確かにいまにも崩れ落ちそうにも見えます。
風さえこんなに強くなければ、タウシュベツ橋梁の上をコトコトと音を立てながら、古めかしい2両くらいのディーゼルカーが走る姿を思い浮かべながら、しばらくここにぼーっとたたずんでいたいところでした。
帰りは森のくまさんの2番を唄いながらスタコラサッサと森を抜け、なんとか車のある場所までたどり着き、無事に探索を終えたのでした。
もう少し水位の低い時期にまた来てみたいのですが、ちょうど冬眠前の活動期で、おまけに熊除けの鈴がまったく役に立たないほど森が轟くような強風の日にはもう二度と来たくないです、はい。
帰り際、国道から湖越しにタウシュベツを展望できるスポットにも寄ってみました。
タウシュベツがないところでも、糠平湖はちょうど紅葉の真っ盛りで、これらもまた絶景でした。
タウシュベツ橋梁リベンジ&国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群
時は流れてその7年後、2021年の8月上旬、北海道に行き、タウシュベツの近くを通る機会があったので、リベンジしてみることにしました。
秋になると湖に沈むことの多いタウシュベツ橋梁ですが、年によっては夏場くらいまで姿を見せていることもあるので、今回はそれを期待していったのですが、事前にガイドツアーを主催している「ひがし大雪自然ガイドセンター」に問い合わせてみると
あー、今年は水位が高くてもう完全に水没してるんだよー
とつれない答え。
仕方なくツアーに参加するのはあきらめて、展望台からのぞいてみるとやはり水の中。
ご丁寧に「本当はこんなふうに見えます」という写真までありました。残念!
その代わり、このあたりには国鉄旧士幌線のコンクリートアーチ橋梁群が遺構として数多く残されているので、その中のひとつ第五音更川橋梁に寄ってみました。
第五音更川橋梁のすぐ近くには旧士幌線の幌加駅の遺構が残されていて、線路やホーム、駅名標が草に埋もれて静かに佇んでいました。
もうずっと昔、大学時代に僕はこのあたりを通ったことがあるのですが、その時はまだこのあたりは国道でも未舗装で、ごつごつした石が転がる坂道をひーひー言いながらバイクで登って、十勝と北見、上川にまたがる三国峠を越えた記憶があります。
今はその国道273号線もきれいに舗装されて、三国峠の手前では、雄大な松見大橋の絶景が広がっていました。
タウシュベツ橋梁も年々劣化が進み、崩壊の時が刻一刻と差し迫っているように思えます。
ここまでタウシュベツを引っ張っておいて、このままなんの写真がないのもアレなので、帯子が後日リベンジ撮影してインスタに上げていた写真をお借りしました。
iPhoneで撮ったにしてはまずますでしょ?
うーん、やっぱり一度見てみたいぞ、これ!
タウシュベツが消え去ってしまう前にもう一度、ぜひリベンジしたい、と思います。
<2014年10月/2021年8月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
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