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まあまあ秘境の米坂線と、けん玉の町、長井【山形県長井市】

山形県長井市の山奥に、知られざる絶景の秘境がある、と聞いて旅に出ました。

その話はまた次編で書くとして、その秘境へのベースとなる長井市もなかなか魅力的な町だったので、ここで紹介します。

今までぜんぜん知らなかったけど、ゴメンよ、長井!

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新潟まわり米坂線で山形へ

長井市があるのは、山形県の南部。山形市にも比較的近く、東京から公共交通機関を使っていく場合、山形新幹線で米沢まで行って、そこから山形鉄道フラワー長井線で行くのが普通の人です。

そんなわけで僕がまず向かったのは上越新幹線で新潟

山形に行くのにまず新潟とは不思議な行動よね。
山形の秘境行くんだ!とか爽やかナイスミドルのふりして、
ホントは新潟の港の女に会いに行ってるんでしょ?

と僕の内角高めに160キロのストレート投げ込む貴女、危なく釣り球に手を出しちゃうそうになったけど、新潟には港の女いないから。単に普通の旅人じゃないだけだもん。

今回新潟まで行ったのは、米坂線というローカル線に乗ってみたかったから。

新潟から「べにはな」という名前の快速列車に乗って北上、羽越線の坂町駅から米坂線に入ります。

米坂線は名前の通り、山形の沢と新潟の町を結ぶローカル線。
ずっと前に一度乗ったことあるけど、沿線は深山渓谷というイメージが残ってて、いつかまた乗ってみたいと思っていたのでした。

ちょっと川霧出てて幻想的ですね。川霧で有名な只見線ほど深い山の中じゃないけど、なかなかなの秘境路線ですよ、米坂線。

県境の峠を越えて新潟から山形に入ると列車はぐんぐんと下り、羽前椿駅を過ぎると山峡から米沢盆地となり、山形鉄道フラワー長井線への乗り換え駅、今泉に到着します。

今泉駅は、日本で最初の鉄道紀行作家と呼ばれた宮脇俊三さんがそのデビュー作「時刻表2万キロ」で、彼が子供のころ終戦を告げる玉音放送を聞いたのがこの駅だったと書いていました。僕はその情景を見たわけではありませんが、なぜか米坂線に乗るたびに当時のその様子が目に浮かんでくるのです。

今泉駅前の広場は真夏の太陽が照り返してまぶしかった。中央には机が置かれ、その上にはラジオがのっていて、長いコードが駅舎から伸びていた。正午が近づくと、人びとが黙々と集まってきて、ラジオを半円形に囲んだ。父がまた、「いいか、どんな放送であっても黙っているのだぞ」と耳もとでささやき、私の腕をぐっと握った。

この日も朝から艦載機が来襲していた。ラジオからは絶えず軍管区情報が流れた。一一時五五分を過ぎても「敵機は鹿島灘上空にあり」といった放送がつづくので、はたして本当に正午から天皇の放送があるのだろうかと私は思った。けれども、正午直前になると、「しばらく軍管区情報を中断します」との放送があり、つづいて時報が鳴った。私たちは姿勢を正し、頭を垂れた。固唾を呑んでいると、雑音のなかから「君が代」が流れてきた。こののんびりした曲が一段と間延びして聞え、まだるこしかった。

天皇の放送がはじまった。雑音がひどいうえにレコードの針の音がザアザアしていて、聞きとりにくかった。生まの放送かと思っていた私は意外の感を受けた。しかも、ふつうの話し言葉ではなく、宣戦の詔勅とおなじ文語文を独特の抑揚で読み出したのも意外だった。聞きとりにくく、難解であった。けれども「敵は残虐なる爆弾を使用して」とか「忍び難きを忍び」という生きた言葉は生ま生ましく伝わってきた。「万世の為に太平を拓かんと欲す」という言葉も、よくわからないながら滲透してくるものがあった。放送が終っても、人びとは黙ったまま棒のように立っていた。ラジオの前を離れてよいかどうか迷っているようでもあった。目まいがするような真夏の蝉しぐれの正午であった。

時は止っていたが汽車は走っていた。まもなく女子の改札係が坂町行が来ると告げた。父と私は今泉駅のホームに立って、米沢発坂町行の米坂線の列車が入って来るのを待った。こんなときでも汽車が走るのか、私は信じられない思いがしていた。けれども、坂町行109列車は入ってきた。いつもと同じ蒸気機関車が、動輪の間からホームに蒸気を吹きつけながら、何事もなかったのように進入してきた。機関士も助士も、たしかに乗っていて、いつものように助役からタブレットの輪を受けとっていた。機関士たちは天皇の放送を聞かなかったのだろうか、あの放送は全国民が聞かねばならなかったはずだが、と私は思った。

昭和二〇年八月一五日正午という、予告された歴史的時刻を無視して、日本の汽車は時刻表通りに走っていたのである。

宮脇俊三「時刻表昭和史」第13章米坂線109列車

そんな今泉にも、今は平和なお花の列車が走っています。

けん玉王国、長井

今泉から山形鉄道フラワー長井線という名前の通り、花柄デザインの列車に乗って沿線の中心、長井駅で下車しました。

長井、初訪問です。今回の秘境めぐりがなければ、おそらく一生来ることもなかったかもしれない町ですが、ここが意外といい味だしてたのです。

長井駅前の通りを歩いていると、いきなりこんなの発見!

けん玉ひろば スパイク!

無料けん玉体験
けん玉級位・段位認定
けん玉購入、けん玉ペインティング・・・

なんかいろいろディープで面白そうなんだけど、なんでここでけん玉?と思ったら、長井は競技用けん玉の生産が日本一で、けん玉を通じて地域の活性化や交流を推進しているのだそうです。

そんなわけで長井の町を歩くときはけん玉は必須。

t_ken5.png

●「大皿」成功でアイスサービス(レストランみよしの)
●「とめけん」成功で冷やしシャンプーグッズプレゼント(理容室オアシス・キクオ理容室)
●「ろうそく」成功で100円引き・「飛行機」成功で300円引き・「世界一周」成功で500円引き(ビジネスホテルシンシア)

とお店で華麗にけん玉キメれば、いろんなオトクがあるだけでなく、何より長井ではけん玉がうまい男が一番モテるのだとか。

※イメージ ©写真AC(転用禁止) 

長井の駅前の路上ライブはミュージシャンじゃなくて、けん玉パフォーマー。
カラオケボックスではタンバリンやマラカスの代わりに歌に合わせてけん玉競技。
そして合コンで男子がお目当ての女子へアピールする武器はけん玉のみ。
3級の技、日本一周をキメると女子が隣に座りたがり、2級の世界一周に成功すればLINE交換は確実、そして初段の宇宙一周を華麗に披露しちゃったりすればその夜は・・・(以下略)

ま、真偽のほどは別として、この長井市、「大皿リレー」を114人連続で成功させるというギネスの世界記録も樹立したそうで、とにかくけん玉にアツいのだそうです。

けん玉ひろば スパイク 【SPIKE】|山形県長井市
山形でけん玉をするなら長井市「けん玉ひろばスパイク」へ。けん玉検定員が常駐し、貸しけん玉を豊富に取り揃えております。気軽にけん玉を仲間と楽しめるけん玉広場です。

旧長井小学校第一校舎

次に現れたのが赤い瀟洒な洋館。

これは旧長井小学校第一校舎で国登録有形文化財にも指定された貴重な建築物。現在は「学び」と「交流」の拠点として活用されているのだそうです。

先を急ぐので中には入らなかったのですが、美しい小学校マニアとしては要チェックの建物ですね。

旧長井小学校第一校舎

隣には現・長井小学校もありましたが、やっぱり赤いんですね。

さて、そんなこんなで長井駅から歩いて15分ほど、最上川に突き当たったところに「道の駅 川のみなと長井」があります。

ここはよくある道の駅と同様、物産館やレストラン、休憩コーナーなどが揃っているのですが、観光案内カウンターもあり、無料レンタサイクルの貸出や、市内のツアーの申込もできるのです。

ここで申し込めるこのツアーが、今回のメインとなる絶景秘境ツアーなのです。

日本の宝、とは大きく出たな、長井!

そんなに期待をあおって大丈夫か?

<2019年7月訪問つづく>

長井への旅

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