山形県の酒田市にある、かつては遊郭だった旅館、松山旅館。
事前にネットで調べてみると「宿のオヤジさんから気の遠くなるような歓待を受ける」と語るブログが頻出。
正直ちょっと迷ったのですが、迷ったらGOというのが僕の旅の鉄則なので、意を決して行ってみたら噂以上にすごい旅館でした。
すごすぎて1回で書ききれないので2回に分けて、これはその前編「酒田の妖しい夜」のお話です。
行くべきか、行かざるべきか松山旅館
最近元遊郭旅館めぐりを始めた僕のバイブル「遊郭に泊まる」にも載っている「松山旅館」。
だからもちろんその存在は知っていたのですが、最後まで行こうかどうか迷っていたのです。
事前に松山旅館について書いてあるいくつかのブログを読むと、ここに行くと宿のオヤジさんがのっけから日本酒もってきて歓待してくれるらしい。
でもファンのみなさんはご存知のとおり、僕は酒と女と貝が大の苦手なのでちょっと腰が引けていたのです。
酒田に泊まる予定だったのは5月3日のGWどまんなか。こんな日はきっと予約取れないだろうから、もし奇跡的に予約取れたら行ってみよう、と勇気を振り絞って電話をかけてみます(もちろん予約サイトやらWebからの予約はできません、とういうか公式サイトもありません)
もしもし?あのー予約をお願いしたいんですけど
はい?あー、予約ね、宿のね。んでいつですか?
あのー、大変申し訳ないんですけど5月3日のGWなんですよ・・・
はい?あー、5月3日ね。んで何人ですか?
ひ、ひとりなんです。すみません・・・
はい?あー、ひとりね。んじゃわかりました、とっておきますね(ガチャン)
え、電話切られたぞ!名前とか連絡先とかスリーサイズとか年収とかぜんぜん聞かれなかったけど、大丈夫か???
そんなわけではたして僕の予約は本当に取れているのか、もし宿のオヤジさんが忘れてたりしたらGWのさなかに宿なしでどこかに放り出されるのか、まったくもって不安しかなかったのですが、とりあえず行ってみることにしたのです。
まさかの特室「横綱部屋」へ
酒田駅から歩くと20分ほど、酒田の現市街地からも少し離れた小高い丘の周辺にかつての酒田の花街や遊郭があった日和山と呼ばれる地域があります。
市街地方面から日和山の丘を越えると「旧新町」という道標があり、趣のある建物が目に入ってきます。
このあたりにかつては貸座敷が31軒、娼妓も約100人いた酒田町遊郭が並んでいたようですが、今はすっかり住宅街となっていて、その中に松山旅館はありました。
趣はあるものの、ちょっと見ただけでは遊郭だったようには見えないこの奥の建物が、かつては「松山屋」という屋号の娼楼だったそうです。
予約取れてなかったらどうしよう、ていうかそもそも名前も聞かれてないのになんていえばいいのだ?と躊躇していたら、ちょうど箒を持った細身の女将さんらしき人が出てきて
あらあ、いらっしゃい、お待ちしてました
と出迎えてくれました。
よかった!とりあえずなんか受け入れられてる感じがする!
電話をとってくれたオヤジさんの姿はありませんでしたが、玄関に入っても名前も聞かれず、チェックインの手続きもなくとりあえずお部屋へ、と女将さんに案内されて部屋に入ります。
おおお、なんかめっちゃ立派な部屋だぞ!
床の間には高価そうな掛け軸と歴史のありそうなサムシング(なんだかわかりません)が飾られています。
するとここでお部屋にオヤジさん登場!
あーいらっしゃい。どうぞどうぞゆっくりしてってください。んで今日はね、お客さんひとりだけなんで特別なお部屋用意しましたよ!
え?今日、僕ひとりだけなんですか?
あーそうそう、貸切、貸切ですよ。だからね、今日は特別に横綱が泊まったお部屋用意しましたからね、ゆっくりして行ってくださいよ
あ、はい(GWどまんなかだぞ、大丈夫かおとーさん!)
あーそういえばあなた名前は?聞いてなかったね
え、名前は風祭です
あー風祭、風祭さんね。これからご飯食べに行くでしょ?酒田はおいしいものたくさんあるから、何でも聞いてくださいね。私このあたりの組合長やってたからね。みんな知り合いだからね、松山旅館で聞いたって言えばいいからね。じゃあ楽しんでくださいね。
去ってった!
到着するといきなり日本酒ふるまわれるって話どうなった?警戒してこんなの買って来てたのに!
とりあえずホッとして荷物をほどいていると女将さん登場。
持ってきてくれたのはビスケットとミルクコーヒー!(日本酒じゃなかった!!!)
ありがたく味わって出かけようとしていると、再びオヤジさん登場。
今度は酒田のガイドブックを2冊持ってきました。
あーこれにね、いろいろお店出てるからね、おいしいもの食べてくださいね。んで何でも聞いてくださいね。松山に聞いたって言ってもらえばいいからね。
去ってった!
また日本酒来なかった!(日本酒期待してたわけじゃないです)
部屋にいるとまたオヤジさんが登場しそうなので、とりあえず酒田の夜の街へと出てみます。
めちゃめちゃ妖しい酒田の夜
松山旅館を出て、山をひとつ越えたあたりに日吉町とか寿町と呼ばれる飲み屋街があります。
狙っていたのは「久村の酒場」と呼ばれる渋い居酒屋。
ところがGWということもあり、地元の人に加え観光客もいて満員。もともと人気のお店みたいなので仕方ないですね。
ほかにお店がないかと周辺をウロウロしているとかつての花街を彷彿させる建物が次々と現れます。
これは「舞娘茶屋 相馬樓」。
ここは江戸時代から続いた料亭を修復して、今は食事をしながら酒田舞娘の踊りを鑑賞できる施設になっているようです。
そして昼間も通りがかった「山王くらぶ」。
ここは明治28年建築の料亭を利用した博物館ですが、残念ながら夜はライトアップされているだけ。
続いては「キャバレーロンドン」と長じゅばんさろん「歌麿呂」。
ここも江戸時代から続く大人の社交場で国の非重要文化財となっていますが、現在は閉店中。残念!
そして「ナイトスポット白ばら」。
ここは現役営業のグランドキャバレーとして最北端だった昭和文化遺産。
かつてここが賑やかな歓楽街であったときの象徴的な存在でしたが、2015年12月に閉店、その後ステージつきBARとして週に数日営業しています。
この日は残念ながらお休みでしたが、ここはいつかぜひ再訪してみたいと思います。
結局市内の割烹食堂のようなところで酒田御膳的なものを食べましたが、これはこれでおいしかったです。
オヤジさんから日本酒攻撃が待っているかもしれないので、ゆっくり食事して、たっぷり散歩してから宿に戻ります。
日本と中国とロシアの春画?(以下R18&閲覧注意です!)
宿に戻って玄関を開けるとシーンと静まり返っています。
帰ってくるなりオヤジさんの日本酒攻撃が待っているかと警戒していたので、ちょっと拍子抜け(かえすがえすも日本酒飲みたいわけではありません)。
仕方なく(でもないけど)部屋に帰ってゴロゴロしていると、なんだか戸棚があるのでちょっと開けてみました。
ムム、こ、これは・・・
いやー、遊郭文化っぽくって趣がありますね。
「發禁圖書」とかいうタイトルの本もあって中身は結構すごいんですが、とてもここでは出せないので見たい人はこそっと連絡ください(逆にこーゆーの苦手な人はここでご退出ください)
そしてこんな珍しいものも!
おおお、中国4千年の歴史にもこんな本があるんですね!
日本の春画はわりとモザイクもなくストレートに描写してあるのですが、中国4千年の歴史は奥ゆかしくも塗りつぶしが入ってました。
いやー、文化って奥深い!
ん?これはロシア的な春画かなにかか?
と思って文化的探究心の高まりを押さえられずページをくくると、タイトル通り色の白い少女たちが次々と僕の研究対象として視界に飛び込んできたのでした。
<2022年5月訪問 後編へ続く> 最新の情報は公式サイト(ないけど)等でご確認ください
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松山旅館への旅
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