保戸島は大分県津久見市の沖合にある周囲4Kmの小さな島。
ほとんどの人は、その名前さえ聞いたことがないと思いますが、実はこの島は「日本のナポリ」と呼ばれ、その景観はまるで地中海のように美しいといわれています。
さすがに日本のナポリは言い過ぎだろう、と思って行ってみたのですが、そこはわりとマジで地中海みたいなところだった、というお話です。地中海、行ったことないけど。
3度目のチャレンジでようやく保戸島へ上陸!
日本のナポリだとか、日本の地中海だとか聞いていたので、僕は前から何度か保戸島渡航にチャレンジしていたのですが、実は上陸できたのは今回が初めてでした。
一度目は、年末年始に大分をめぐっていたときにふらっと行こうと思ったら、なんとフェリーが休航。
確かにその日は元旦だったけど、まさかフェリーも正月休みだなんて思わなかったのです。
2度目は津久見の隣町の臼杵に来たときに、天気が良かったのでレンタサイクルで津久見まで行こうと思ったら、臼杵と津久見の間にある峠のトンネルが自転車通行には危険極まりなく断念。
確かに臼杵から津久見まで自転車でいくやつなんかいないと思うけど、もうちょっと路肩整備しろよ、国道217号!
そんなわけで今回が3度目のチャレンジだったのです。
保戸島行きのフェリー乗り場は、JR津久見駅から歩いて10分もかからない場所にありますが、今回は臼杵に移住している会社のパイセンを誘っていたので、津久見駅で待ち合わせて車で港まで直行します。
保戸島行きの航路は、1日4~5往復、高速船で所要は25分ほど。
津久見はセメント工業が盛んな町で、港の周辺にもセメント工場やパイプラインがびっしりと並んでいます。
出航してもしばらくの間はこんな景色が続きます。
めちゃめちゃカッコいいですね!ぜんぜん地中海に行く感じじゃないけど!
やがて前方に家々が山肌にびっしりとはりついた島が現れ、保戸島に到着します。
なるほど、これが日本のナポリか、というのが第1印象でした。行ったことないので実感がないやつですね。
路地と階段と高層住宅
保戸島が日本のナポリとか日本の地中海といわれる理由は、急峻な島の地形に合わせて、カラフルなコンクリート造りの高層戸建て住宅がびっしりと密集していることからなのでしょう。この景観は「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財百選」にも選定されています。
かつてはマグロ漁で賑わい、最盛期は5000人とも6000人ともいわれる人々がこの小さな島で暮らしていたため家を建てる土地がなく、多くの家族が住めるよう上に延ばしていった結果、3階建てや4階建ての建物だらけになったのだそうです(地元のばあちゃん調べ)。
確かにこんな狭い路地に鉄筋コンクリートの高層住宅が並ぶ様子はちょっと日本離れしてますね。
保戸島の集落は海岸沿いのわずかな平地と、南に面した山肌部分に集中していますので、まずは集落の上のほうに向かいます。
集落内は坂道と階段の続くハードな道しかありませんが、車も自転車も通ることはできず、お年寄りも背中に大きなカゴを背負って上っていくしかありません。
保戸島の現在の人口は3~400人。そのほとんどが高齢者だと思うので環境は過酷ですが、毎日歩いているので足腰は強いのかもしれませんね。
ねこ発見!
というか、保戸島、ねこ天国です。
ねこと一日中戯れたい女子に絶賛おすすめですよ!
魚のねんぶつ寺「海徳寺」と日本の地中海
山の集落の中腹あたりに「魚のねんぶつ寺」と書かれた海徳寺がありました。
境内には、古くから漁業によって成り立ってきた保戸島の人々が、海への感謝と魚への供養、豊漁を願って建立された「魚鱗塔(ぎょりんとう)」があります。
この海徳寺の墓地の上から保戸島の集落がよく見えました。
この写真をFacebookにアップしたところ、友人たちから意外な反応がありました。
日本の地中海に来ましたー!
保戸島、ぜんぜん知らなかったけど、アマルフィみたいですね
もう少しカラフルだとチンクェ・テッレかな
建物に色がつけばポルタジーノ?
もうこれ、日本の地中海でいいでしょ!
というかなんでみんなそんなしゃれおつなところ行ってるんだ。なに言ってるかぜんぜんわからないぞ!
保戸島名物「ひゅうが丼」
保戸島にいったらぜひ食べてほしいのが「ひゅうが丼」。
ひゅうが丼と聞いて、お隣、宮崎県の「日向」が由来かな、と思っていたのですが、どうやらそうではないらしく、マグロ漁に出た漁師たちが過酷な漁の合間に手早く栄養が取れるようにと考案された漁師料理で、「ひゅーひゅー」と風が吹きすさぶ中でも火を使わずに食べられることから名づけられた、という説もあります。
ひゅうが丼を提供している食堂「穂門島 大川」は閉まっていましたが、桟橋の横にある「海道」という小さな食堂兼カフェ&お土産屋さんで食べることができました。
あとから知ったのですが、この「海道」は「穂門島大川」の新店舗なんだそうです。なので出てくるひゅうが丼は同じですね。
ひゅうが丼は、甘めの醤油とすりごまのタレをマグロの切り身にかけて熱いご飯に乗せて丼にします。
もちろんマグロは新鮮だし、ごまダレがよく合ってめちゃめちゃおいしかったです。保戸島に来たら必食ですね。
食後はパイセンがナンパした島のばあちゃんからいろいろ情報収集をして、今度は海沿いの通りに行ってみます。
保戸島銀座と保戸島小中学校
港沿いの広い道を歩き、保戸島漁村センターや漁協の建物を過ぎると、大分県道612号へと入ります。
この日本一狭い県道ともいわれる通りが、保戸島銀座ともいうべき繁華街。
狭い路地に(かつては)商店がびっしり並んでいたと思われます。
ばあちゃんによると、昔はスナックも20軒くらいあって、夜もたいそう賑やかだったそうです。
確かにその時代の残り香はいろんなところに感じました。
でもこの通りも、なんとなく地中海沿いの町って感じもしますね。行ったことはありませんが。
この理髪店なんか、今にもちょい悪オヤジっぽいイタリア人が出てきてもおかしくなさそうですよね。
保戸島銀座を抜けて島の南端近くに出ると、保戸島小中学校がありました。
現在中学生が2人、小学生が1人在校してるそうですが、ばあちゃんによるとそのあとの入学予定者はいないそうです。
保戸島小学校を調べていたら、こんな動画がありました。
2016年のもののようですが、当時は小学生が4人。たぶんこの中の一番小さな子が今、中学の最上級生となっているのでしょう。そんなことを考えながら見ていると、なんだかグッとくるものがあります。
これは歴代の在校生たちが描いた絵なんでしょうね。
この静かで平和な保戸島小学校ですが、終戦の直前に大きな空襲を受け、在校生960人中124人が命を落としたのだそうで、今も学校の横にはその慰霊碑が建っています。
そろそろ津久見に戻る時間が近づいてきました。
保戸島滞在はわずか2時間ほどでしたが、ここが日本のナポリや日本の地中海と言われている理由が少しは分かったような気もします。
けれども保戸島はナポリにならなくても、地中海にならなくてもいいとも思いました。
保戸島は保戸島のまま、いつまでも残ってほしいと思います。
<2023年11月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
保戸島への旅
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