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こんなに泣いた美術館は、初めてだった。【気仙沼リアス・アーク美術館】

Ⓒリアスアーク美術館(転用禁止)

気仙沼に行くのなら、ぜひ一度見てほしい。

東日本大震災をきっかけに、復興支援で気仙沼の町に通うようになった僕の知人から強く勧められたのが、気仙沼リアス・アーク美術館。

外見はどこにでもありそうな普通の美術館ですが、ここに展示されている美術品は世界中のどの美術館とも異なります。

そう、僕がこんなに泣いた美術館も、初めてでした。

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気仙沼リアス・アーク美術館とは

リアス・アーク美術館は、気仙沼市街から少し離れた高台にある公立美術館。

1994年に開館した当初は、東北や北海道を中心としたアーティストの現代美術作品などを紹介する美術館だったのですが、東日本大震災後に「東日本大震災の記録と津波の災害史」という常設展示を新設、公開しています。

この「東日本大震災の記録と津波の災害史」で展示されているのは、リアス・アーク美術館の学芸員が被災現場で撮影した写真203点、収集した被災物155点、歴史資料等137点となっています。

リアスアーク美術館の展示手法

リアスアーク美術館の特徴は、その展示手法。

例えば、ひとつ目のこの写真。

🄫リアス・アーク美術館 ※転用禁止

2011年3月29日、気仙沼市浜町(鹿折地区)の状況。

津波被災現場を歩くと、目にする光景の非現実性、あまりの異常さに思考が停止してしまう。常識に裏付けられた論理的な解釈ができず、一瞬、妙に幼稚な思考が顔をのぞかせる。「巨人のいたずら…」、などと感じたりするのだ。実際、そんな程度の発想しかできないほどメチャクチャな光景が果てしなく続いていた 

ⓒリアス・アーク美術館

これは、被災地の外から来た報道陣が、ピカピカのスニーカーを履いて望遠レンズで撮影をした写真ではありません。ここに展示されているのは、自らも被災者だった学芸員たちが、着の身着のままで泥まみれになり、まさに命懸けで、時に涙を流しながら現場で目にしたものばかり。

それぞれの写真の横には、撮影者による長文のキャプションが添えられていました。

もちろん僕も震災直後の報道で、こうした悲惨な情景はいやというほど目にしてきたのですが、震災被害の当事者でもある気仙沼の人たちがとらえた「愛する町」や「愛するモノ」の変わり果てた姿は、訴えてくる力が全く違います。

この写真に添えられた言葉の、なんと生々しいことよ

彼らがそのとき何を想い、何を伝えるために撮影したものなのか、一度読み始めると、すべての写真のキャプションを読まずにはいられなくなってしまうほどです。

涙なしでは見られない、写真と言葉の力

美術館には学芸員が被災現場から拾い集めた被災者の家財や思い出の品も展示されています。

そしてその品々の横には、被災現場で彼らが発していた声なき声をもとに、学芸員たちが創作した物語が添えてあるのです。

🄫リアス・アーク美術館 ※転用禁止

平成元年ころに買った炊飯器なの。じいちゃん、ばあちゃん、わたし、お父さんと息子2人に娘1人の7人だもの。だから8合炊き買ったの。そんでも足りないくらいでね。今はね、お父さんと2人だけど、お盆とお正月は子供たち、孫連れて帰ってくるから、やっぱり8合炊きは必要なの。普段は2人分だけど、夜の分まで朝に6合、まとめて炊くの。

裏の竹やぶで炊飯器見つけて、フタ開けてみたら、真っ黒いヘドロが詰まってたの。それ捨てたらね、一緒に真っ白いごはんが出てきたのね・・・夜の分、残してたの・・・涙出たよ

ⓒリアス・アーク美術館

泣けました。正直、泣けて泣けて仕方ありませんでした

本来、客観性を重んじる博物館学的立場からは、展示物に主観やフィクションが入り込むのはご法度なのかもしれません。しかし、この美術館はあえてそうした手法を選んでいるのだと言います。

あえてそうした理由は、将来、この地域に再び訪れるかもしれない地震や津波災害に向けた防災教育や減災教育を目的のひとつとしているから。

人の命に関わることだからこそ、それを頭だけで理解するのではなく、身体が震え、気がついたら涙が出てくるような感覚にさせなければならない、という判断から、異例ともいえるこうした直情的な手法をとっているのだと言います。

🄫リアス・アーク美術館 ※転用禁止

家のタイル、
鉄くずのようになった自動車、
赤いランドセル、
3時33分で止まった時計、
泥だらけのミッキーマウスのぬいぐるみ・・・

館内は撮影禁止だったので、借りた写真以外を紹介することはできませんが、この美術館は、ぜひみてほしい。

もうひとつ学んだこと ―ガレキとは呼ばないで

それからもうひとつ、ここに行って初めて学んだことがありました。

マスメディアも私たちもなにげなく使っていた「ガレキ」という言葉は、被災地の人々にとって正しい表現ではない、ということ。

瓦礫とは、本来瓦片と小石とを意味し、転じて意味のないもの、価値のないものを表す言葉です。

そのため、この美術館では被災現場から収集した物品を「被災物」と呼んでいます。

被災者にとって被災物は「価値のない、つまらないもの」ではありません。それらは破壊され、奪われた大切な家であり、家財であり、何よりも、大切な人生の記憶なのではないでしょうか、と。

おっしゃるとおりですね。

🄫リアス・アーク美術館 ※転用禁止

リアス・アーク美術館を訪れて、僕が今までメディアから得てきた情報では足らなかったこと、気づかなかったことがたくさんあることがわかりました。

僕は社会派を気取るような人間ではありませんが、 みなさんにもぜひ一度ここに立って、身体が震えるような、気がついたら涙が出てくるような体験をしてほしいと思います。

知覧の特攻平和会館信州塩田平の無言館とともにぜひ行ってほしい場所のひとつです。

<2016年11月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください。

気仙沼リアス・アーク美術館の基本情報

住所:宮城県気仙沼市赤岩牧沢138-5

電話番号:0226-24-1611

開館時間:午前9:30~17:00(最終入館 16:30)

アクセス:気仙沼駅から気仙沼西高行きバスで約30分、リアス・アーク美術館下車

気仙沼リアス・アーク美術館は東日本大震災を未来に伝える唯一の美術館 | 宮城県 | トラベルjp 旅行ガイド
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