岡山県の中国山地にある吹屋という町。
ベンガラの町として美しい紅色の建物が並ぶ景観で知られていますが、関東の方にはあまりなじみがなく、距離的に近い関西の方々の知名度の方が高いかもしれません。
でも、ここは僕の「いつか行きたい場所ノート」の中でもかなりの大物としてずっと前から大事にとっておいたところだったのでした。
吹屋は、いきなり紅色の町
「吹屋」があるのは岡山県の中北部。かつては吹屋町として単独の町でしたが、現在は高梁市の一部となっています。
備中高梁駅前の高梁バスセンターから吹屋行きのバスに乗って所要1時間ですが、1日に3往復しかありません。
当時、高梁駅を10:48に出るバスで吹屋に向かい、11:48に終点の吹屋着。
ちょうどその1時間後、12:48に吹屋を出て高梁に戻ってくるバス、という行程でした。
地方のバスは終点で10分くらいで折り返し出発してしまうことが多いのですが、吹屋で観光する客のことを考えて1時間後の出発にしてくれているのなら感謝です。なんといってもこの後のバスはまた3時間後までないのですから。
途中伯備線の備中川面駅までは高梁川に沿って盆地の中を進みますが、そのあとはいよいよ中国山地の山ひだへと切り込んでいきます。
写真のような、やや小ぶりのバスが、最後はすれ違いもままならないほどの狭い道を上りつめ、やや開けて明るくなった場所に出ると、吹屋の町並みが現れます。
吹屋は、いきなり紅色の町でした。
郵便局も、ポストだけじゃなく、見事にぜんぶ紅。
吹屋は、江戸から明治にかけて銅や鉄の鉱山町として栄えた町でした。
特に硫化鉄鉱石を酸化・還元させて製造したベンガラ(酸化第二鉄)の日本唯一の産地として繁栄を極めたのでした。
ベンガラは主に美術工芸用の磁器の絵付け・漆器、神社仏閣の外壁塗装に多用され、その紅色の塗装はもちろんこの町の建物にもふんだんに使われています。
吹屋の町の素晴らしいところは、個々の屋敷が豪華さをまとうのではなく、旦那衆が相談の上で石州(島根県)から宮大工の棟梁たちを招いて、町全体を統一されたコンセプトの下に作り上げて行ったという点にあります。
だから今もこうして調和のとれた見事な景観が残っているのです。
そんなこともあり、昭和52年には国の重要伝統的建造物群保存地区の認定を受けています。
旧片山家住宅。
吹屋にはこうしたベンガラで賑わった豪商の家もいくつも残っていました。
もんげー岡山?
広島に影響されたのか、岡山でもこんなポスターがありました。
「もんげー」って何かと思いましたが、岡山弁で「ものすごい」という意味らしいです。
この「もんげー」という方言、当時大人気だった妖怪ウォッチの狛犬妖怪「コマさん」の口癖で、全国の小学生の間で大ブームだったのです。
それに乗っかったんでしょうね。女子高生に「もんげー」言わせるとか、岡山的には超チャレンジングな試みだったに違いありません。
今でこそ、自治体のプロモーションもかなりくだけてきましたが、当時はまだおそるおそる、という感じでみんなちょっとずつ冒険してる感じでした。
ただ岡山の周辺には「おしい!広島県」とか「うどん県香川」とか、自治体プロモーションの強豪県が揃ってたので、きっと焦りはあったでしょう。
「もんげー岡山」で調べてみたところ、今も「晴れの国おかやま もんげー部」というサイトを立ち上げて頑張ってるじゃないか!
会員数もなんと「只今の部員 8326人」!
・・・もっと頑張れ、岡山県!
もんげークールな吹屋小学校
吹屋のもうひとつの見どころに、平成24年3月まで現役の木造校舎として国内最古とされていた、旧吹屋小学校校舎があります。
吹屋の町並みのちょうど真ん中あたりからゆるい坂を上って高台を越えると、もんげーカッコいいその雄姿が見えてきます。
標高550m、中国山地の山あいの小さな集落の小学校にしては不釣合いともいえる大きな規模と贅沢な意匠は、そのまま当時の吹屋の隆盛を象徴する建物だったのでしょう。
最近では古い木造校舎を再活用した施設もいろいろとでき始めていますが、この築110年を越える校舎をつい数年前まで現役の学校として使っていたのはすごいなあと思います。
おー僕が生まれる30年以上も前だ!
そんなことはないか。。。
この紅い部分は、やっぱり吹屋らしくベンガラ塗装を使っているんでしょうね。
もうここはすでに現役ではないのですが、「田舎の美しい小学校リスト」の番外編第1位に入れておこうと思います。
※吹屋小学校は現在工事中で令和4年3月まで見られないそうです
ちなみに、吹屋小学校のすぐそばに、似たような建物がありますが、これは「ラフォーレ吹屋」という宿泊施設。
もちろん吹屋小学校を模してあとから建てられたものです。
吹屋小学校から再び吹屋の町並みに戻り、途中の高台から見た、吹屋の町並み。
美しい格子戸の家。
旧成羽町公民館の吹屋分館跡です。
なまこ壁の家も、やっぱりここは色が違います。
紅ののれんが映える町並みですね。
この日は年末も押し迫った時期で、ほとんどの施設がクローズしていたため、めったに観光客をみかけず町全体が貸し切り状態。
普段の休日は、もっと賑わっているのかもしれません。
だから今日のようなこの静けさがやっぱりいいよな、と思う反面、こんなにもんげーな場所なのに、訪れる人があまりにも少ないのはもったいないよな、と感じた1時間でした。
<2014年12月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
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吹屋への旅
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