うちの娘が中学生だった頃、「とろろご飯」がマイブームだった時がありました。
おとーさんが前に旧東海道を歩いた時に、すごく有名な店でとろろ食べたぞ、と何かの時に話したら、行きたい行きたい行きたい!今度絶対連れてって!という話になりました。
そんなわけで旧東海道の鞠子(丸子)宿で400年の歴史を持つ「丁子屋」のとろろ汁を食べに行くことにしました。
おとーさん今時の中学生の嗜好はよくわかりませんが、かなり渋いんじゃないでしょうか?
まあ本人がそうしたいって言うのならいいんですけどね。
想い出の宇津ノ谷の町並み
とろろ汁で有名な「丁子屋」は旧東海道の府中宿(今の静岡市中心部)の次、丸子宿にあるのですが、まだお昼には早い時間だったので、少し歩いてお腹をすかせよう、ということで丸子宿とその先の岡部宿の境にある宇津ノ谷峠を家族で歩くことになりました。
何を隠そうこの私、旧東海道を日本橋から京都三条大橋まで完歩しているナイスミドルとして名高いのですが、実はこの宇津ノ谷峠、僕が東海道を歩き始めるきっかけとなった場所なのです。
とある年の夏休み、高校野球を見に甲子園に行こうと思っていたら、ちょうど西日本に台風がやってきていて、野球は2日間順延、しかし関西まで行っても暴風雨でなにもできない、という状況の時に、途中の静岡で時間でもつぶそうか、と思って旧東海道をなんとなく歩いてみたのです。
静岡駅から歩きはじめて、このあと行く丁子屋でとろろ飯を食べ、この宇津ノ谷峠まで来たのですが、この峠の手前の、宇津ノ谷の町並みが素晴らしいのです。
宇津ノ谷の峠に向かう狭い旧道の両脇に、なんとも味のある古い街並みが残っているんです。
しかもこういう町並みによくありがちな、商業的な雰囲気があまり感じられないんですよ。
これで旧東海道の魅力に一挙にハマってしまい、今に至る。。。という場所が、僕にとっての宇津ノ谷峠なのです。
おとーさん、嫁と娘にこの感動をぜひ共有したいと思って、そんな逸話を交えながら宇津ノ谷の素晴らしさを解説しつつ歩きます。
どう?なかなかいいでしょ?
いや、ここちょっと虫が多い。
そーいえば、とろろ屋でご飯はお代わりできるの?
帰りに安倍川もちの有名な店があるらしいね。
まだまだ共感を得るのは難しいようです。
しかしまあ、こうやってついてくるだけでも良しとしますか。。。
宇津ノ谷峠の明治のトンネル
宇津ノ谷の町並みの一番奥の階段を登ったところを右に行くと旧東海道、左に行くと明治のトンネルと呼ばれる道へと続きます。
眼下には旧東海道沿いの町並みが広がります。
素晴らしい眺めですよね。東海道というよりも中山道の木曽の宿場町のような雰囲気があります。
この先、宇津ノ谷峠越えにはいくつもの道があって、本来の旧東海道はさらに山を登って越えて行くのですが、僕たちは「明治のトンネル」と呼ばれるトンネルで峠を越えます。
明治9年に開通したこのトンネルは、当初は木造だったのですが、その後、失火により焼失してしまったため、現在のようなレンガ造りに修復されたのです。
ちなみに日本で初めての有料トンネルだったそうです。
このあとできた大正のトンネル、昭和のトンネル、平成のトンネルと、トンネルもなく山道を越える旧東海道も含め宇津ノ谷峠越えの方法はたくさんありますが、ここだけは旧東海道よりも明治のトンネルを選んでしまいます。
明治のトンネルを出で少し先から旧東海道に入ってそのまま藤枝側へと下り、道の駅にあるバス停から静岡駅行きのバスに乗ると丁子屋のある丸子宿まで戻ることができます。
丁子屋、まさかの大混雑で「一松園」へ
バスに乗ること10分、今日のメインの丁子屋に到着しました!
しかし・・・
この日はGWだったので、多少は予想していたことですが、行ってみるとめちゃくちゃ混んでる!
店に入り切れないお客さんの列のうしろに並んではみたものの、風の噂では待ち時間1時間とのこと。。。
そんなときに生きてくるんですね、僕の旧東海道情報ネットワークが。
実は旧東海道の港港、もとい、宿場宿場にいるお世話係の女の子(飯盛り女ではありません・・・)から、実は丁子屋の隣りにある「一松園」というお店も、丁子屋に勝るとも劣らないとろろ汁が食べられる、と聞いていたのです。
どうする?多少は待ってでも、一番有名な丁子屋行ってみる?それとも知る人ぞ知る名店、ってのに入ってみる?
このイベントを心待ちにしてきた娘にとってはなかなか酷な質問だ・・・と思いつつ問うてみると、
お腹空いたから早い方がいい
と非常に単純明快な答えだったので、夏を思わせるような厳しい日差しの下、丁子屋前で腹をすかせながら並ぶ人々を横目に、僕たちは迷うことなく、この一松園に入ったのでした。
中に入ってみると、店内の雰囲気もなかなかいい感じ。
そしてこれが一松園の一番シンプルなとろろ汁定食。
お櫃に入った麦ご飯に赤だし、小付、香の物、そしてとろろ汁、以上!
丁子屋のメニューとほぼ同じです。
ちなみに前回丁子屋に来た時のとろろ汁がこれ。
とろろ「汁」というだけあって、とろろにはあまり粘り気がなく、僕的にはもう少しコシがあってもよかったかなあ、とも思うのですが、娘は大満足らしく、3人分がまとめて入ったご飯もとろろも一番張り切って食べていたのでまあよしとしましょう。
こちらが、創業400年、十返舎一九の東海道中膝栗毛にも、安藤広重の東海道五十三次にも出てくる老舗中の老舗、丁子屋の全景。
今回は食べてないんだけど、写真だけ撮らせてもらいました。スミマセン。
丁子屋の詳細はこちらでどうぞ!
そしておやつは「あべかわもち」
ここから再びバスで静岡駅に向かう途中に安倍川という大きな川を渡るのですが、そのたもとの茶店で昔から出していたのが「あべかわもち」。
徳川家康がこの安倍川を通った際、茶店に立ち寄ったところ、店主が安倍川上流で取れる砂金に見立て、つき立ての餅にきなこをまぶして献上したところ、家康がこれを喜び、安倍川にちなんで安倍川餅と名付けたという由来があるのだとか。
もちろんわざわざバスを途中下車して食べましたよ、あべかわもち。
前回僕がひとりで東海道を歩いた時に寄ったのは、おばあさんが一人でやっているようなお店だったのですが、今回は「元祖あべかわもち」というのぼりの出ていた「せきべや」。
きな粉とあんこのセットで600円。
つきたてのお餅ですから、そりゃおいしかったですよ。
とろろを食べた直後でしたが、僕もペロッといっちゃいました。
ベツバラ(別腹)の力ってすごいねー
今回のお茶ととろろと安倍川もちの旅、楽しかったねー
と大満足だったようなので、よしとしましょう。
<2016年5月訪問 > 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
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