JR九州を走る人気の観光特急「海幸山幸(うみさちやまさち)」。
2両編成の車両は贅沢なレイアウトになっているため、定員数が少なく繁忙期はなかなか予約が取れない人気の列車だと言われています。
ところが僕が乗った時は、コロナ禍のGWだったため、乗客は数えるほどしかいませんでした。
めいっぱい混んでいて落ち着かないのも嫌だけど、こんなにガラガラだとゆったりできる反面、それはそれで寂しい気もしました。贅沢な悩みだけど。
「海幸山幸」と僕のめぐりあわせ
JR九州の「海幸山幸」は宮崎県の日南線内、南郷駅から宮崎駅間を走る観光特急。
2009年にJR九州のD&S(デザイン&ストーリー)列車としてデビュー、週末を中心に、現在は1日1~2往復運行されています。
その一番の特徴は「ななつ星」などで有名な、水戸岡鋭治さんによるデザイン列車だということ。
列車の側面は、沿線で有名な「飫肥杉」を使ったデザインで、コンセプトは「木のおもちゃのようなリゾート列車」。
水戸岡デザインの特徴でもありますが、内装もあたたかい木のぬくもりがあふれています。
実は僕はこの時、こんな切符を使っていたので、最初はこの列車に乗るつもりはありませんでした。
「旅名人の九州満喫きっぷ」は九州内の鉄道路線が3日間乗り放題になる切符ですが、JR九州区間は普通列車利用に限り、特急利用はできないのです(乗車券も適用外)。
僕はこの時、日南線で飫肥から宮崎に向かおうとしていたのですが、スケジュール上ちょうどいい時間帯に普通列車がなく、代わりにこの「海幸山幸」が
「どう?代わりに私に乗ってみない?」
と言わんばかりに走っていたのです。
そ、それは君みたいな色白美人にそんなこと言われたら乗りたくなっちゃうよ…
ということで、前から知っていた列車だし、これも何かのめぐりあわせかなと思い、わざわざ乗車券も特急券も別途買いなおして乗ってみたのです。
そもそも「海幸山幸」、その名前の由来を聞くと女子じゃなさそうですけどね。
「記紀(古事記と日本書紀の総称)」に出てくる「山幸彦と海幸彦(やまさちひことうみさちひこ)」の神話がそのネーミングの由来のようです。
「風祭記紀研究所」によるめちゃくちゃ簡単な解説によると
かつて山の猟が得意な山幸彦という弟と、海の漁が得意な海幸彦という兄がいた。
山幸彦がいやがる兄にめちゃめちゃ頼み込んで釣り具を借り、魚釣りに出掛けたが、兄に借りた大事な釣針をまさかの紛失。
やばっ、めちゃくちゃ怒られる!と困り果てていたら、塩椎神(しおつちのかみ)という爺やが現れ、釣針が見つかるかも、と言われ小舟に乗せてもらい、竜宮城みたいなところ(海神の宮殿)に連れて行ってもらうことに。
するとそこで出会った海神の娘、豊玉姫(豊玉毘売命・とよたまひめ)にひとめぼれされてしまいグイグイ迫られて結婚、気づくと楽しすぎて3年も暮らしてしまった。
地上に帰らなきゃ、と思った山幸彦は兄の海幸彦の怒りから逃れるため、豊玉姫に失くした釣針と、霊力のある2つの玉を貰い、その玉を使って怒る海幸彦をまんまと押さえこみ、忠誠を誓わせた。
その後、豊玉姫は山幸彦の子を妊娠したのですが、天神の子を海の中で産むわけにはいかないとして、陸に上がって浜辺の産屋で出産します。
豊玉姫は「絶対に産屋の中を見ないように」と山幸彦に言うのですが、そんなこと言われたら絶対見たくなるやつ!ということで悲しいかな、男の性、やっぱり見ちゃうのですが・・・
とまあ、こんなふうに続くのですが、ここから先は「風祭男と女の研究所」の管轄になるので、今回は割愛します。グイグイ来られちゃう男っていつの時代も大変ですね。山幸の気持ち、よくわかります。。。
めちゃめちゃ空いてる海幸山幸の車内
海幸山幸の上り列車の始発は「南郷駅」ですが、僕が乗ったのは途中の飫肥(おび)駅から。
車内はこんな感じで、はっきり言ってガラガラです。2号車の前方に3列だけ自由席があるのですが、急遽乗ることになった人たちなのか、観光客ではない人なのか、そこだけうまっている感じがしますが、通常の指定席部分にはほぼ人がいません。
かつては飫肥駅で10分程度停車し、ホームで「泰平踊(たいへいおどり)」保存会の出迎えや、地元産品の即売会なども行われていたようですが、コロナの影響なのでしょうか、今はそれもありません。
車両は1号車が「山幸」で2号車が「海幸」。
海幸は青、山幸は赤というように車両によってシートの色などのベースも違っています。
乗客も少ないため、観光列車独特の華やかさもないまま、わりと単調に走っていたのですが、途中で乗客全員に記念品のプレゼントがありました。
この海幸山幸シール、かわいくないですか?
このほかにクリアファイルとか付箋メモとかハンドタオルもセットでもらいました。
気前いいぞ、海幸山幸!と思っていたら実は海幸山幸のシール、車内イベントの景品で提供されていたもののようです。
今は乗客が少ないので、全員に配ってくれるんでしょうかね?
・・・と思っていたら、その車内イベントの抽選会が始まりました。
5枚のカードがあって、その中に海幸と山幸が1枚ずつあるので、それを引いたら大当たり!みたいなルールです。
どうしよう、当たり引いて豊玉姫とかに竜宮城に引きずりこまれちゃったら!!
あ、残念。はずれですねー
ちなみに、はずれだと何ももらえません。あたりは記念品です、としか聞いてなかったけど、竜宮いけるのかな?
はずれ券10枚で竜宮にご招待とかないのかな。
「海幸山幸」車窓のハイライト
やがて列車は日南線の車窓ハイライトのひとつ「鬼の洗濯板」に差し掛かります。
ここはJR青島駅の南側の海岸線に見られる波状岩で、長い間に波に洗われ、固い砂岩層だけが板のように積み重なって巨大な洗濯板のように見えることからそう呼ばれています。
列車はここでいったん停止して、車内ではアテンダントのおねーさんの説明が流れます。
今回は行きませんでしたが、青島にある青島神社は海幸山幸伝説の山幸彦や豊玉姫を祀っています。
青島からたくさんの乗客が乗ってきて、車内はにわかに賑やかになりましたが、ほとんどが宮崎市内に向かう地元の人。列車の本数が少ないので、こんな観光特急も貴重な足となっているんですね。
そして終着、宮崎駅。
JR九州のD&S列車は相変わらず車内が優雅で素晴らしいし、車窓も山あり海ありで変化に富んでたけど、やっぱり人が少なすぎるもの寂しいもんですね。
次はもう少し賑やかな時に乗って、竜宮行きのチケットをゲットしたいと思います。
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