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昭和の香りと井上陽水 ~平成筑豊鉄道と日田彦山線【福岡県】

かつてまだ石炭が「黒いダイヤ」ともてはやされ、炭鉱の産地が元気だった頃、福岡県の筑豊地方には網の目のように鉄道路線が張り巡らされていました。

時代が変わり炭鉱が去った今、筑豊からは多くの線路が引きはがされてしまったのですが、それでもまだ昭和の香りをたっぷり残し、当時を彷彿させる鉄道路線があります。

今回はその中のふたつ「平成筑豊鉄道 田川線」とJR「日田彦山線」の一部を紹介します。

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平成筑豊鉄道は、井上陽水の世界

平成筑豊鉄道は、旧国鉄/JRの3つの路線(伊田線・糸田線・田川線)を引き継いだローカル線ですが、今回僕が乗ったのは行橋から田川伊田駅までの田川線

久しぶりに平成筑豊鉄道(「へいちく」とか「ていてつ」とか言うらしいです)に乗ったのはコロナ前の2019年7月。

かなり前に1度乗った時はもっと「筑豊筑豊ちくちくちくほー!」って感じで、もっと炭鉱っぽい町を走ってたような気がするのですが、乗ってみると意外に普通の田舎風景でした。

きっと日田彦山線とごっちゃになってたんですね(そのあと久しぶりに乗った日田彦山線は、めっちゃ「ちくほー」でした)

途中に「源じいの森」とかいう駅があったりして、なんだか井上陽水さんの「少年時代」的な感じ。

途中、列車すれ違いのため停車した油須原(ゆずはる)駅

古くて立派な駅舎がそのまま残ってます。

めっちゃ昭和!

そして反対側のホームには列車を待つ男女。

「恋の予感」がしますね。

おい男子、こんなチャンスにスマホなんか見てたらあかんやんか!

あつはなついね!あ、ちゃうわ、なつはあついね!

 よかったら源じいのかき氷でもしばかへん?」

(すみません、各自筑豊弁に言い換えてください)

とか言って夏の思い出くらい作れよっ!

しかしなんのドラマも起きないまま、やがて反対方向からディーセルカーがやってきます。

なんだか立ち去るのが惜しいような駅ですね。

「いっそセレナーデ」って感じです。

どうでもいいけど、いっそセレナーデ、今聴くと震えますね。

あまいくちーづけー

ですよ、いきなり。
あの低い声で!

青臭い若造には絶対に唄えない歌ですね。ナイスミドルになった今なら、少しは僕も歌いこなせるようになったんじゃないか、と思います。

甘い口づけ 遠い思い出
夢のあいだに浮かべて 泣こうか

「いっそセレナーデ」井上陽水

あ、でも貴女はたぶん聴かない方がいいな、堕ちちゃうから。

とかなんとか言ってるうちに、終点の田川伊田駅に到着しました。

筑豊の香りが漂ってきましたな。広い駅構内の撤去された線路跡とか、胸が詰まるね。

とか思ってたら駅舎はめっちゃ現代的なやつに建て替えられてました。

日田彦山線は、昭和の炭鉱鉄道のまま

JR日田彦山線は小倉から3つ南、日豊本線の城野駅から大分県日田市にある久大本線の夜明駅を結ぶ路線(実際の運行は小倉駅や日田駅に乗り入れています)。

ところが2017年の九州北部豪雨で途中の添田駅夜明駅の間が大きな被害を受け現在も運休中で、この区間はこのままバス路線に転換される見込みです。

今回、僕が乗ったのはその区間よりもずっと手前、城野(小倉)から田川伊田までの間。昔一度だけ全線に乗ったことがありますが、もっといっぱい乗っておけばよかったな。

大都会の小倉駅に煤汚れたディーセルカーが停まっていると、ここだけ違う場所のようですね。

列車は城野駅で日豊本線と別れ、しばらくは小倉郊外の住宅地を走りますが、やがて車窓に異様な姿の山々が迫ってきます。

このあたりは日本3大カルストと呼ばれる平尾台があり、良質な石灰岩の産出地でもあります。

平尾台、聞いたことはあったけど行ったことはないのですが、これ書きながら調べてみたらなかなかおもしろそうなところでした。

※平尾台イメージ Ⓒ写真AC(転用禁止)

カルスト台地があったり鍾乳洞があったり、キス岩なんてのもありやがる。

※キス岩イメージ Ⓒ写真AC(転用禁止)

ほんとにキスしてる。いいな、キスしたいぞ。

って、そうじゃなかった。日田彦山線の話だ!

このあたりの車窓風景はこんな感じです。

呼野駅のすぐ横には三菱マテリアルの東谷鉱山があります。

かつての炭鉱とは違うのですが、鉱山という意味では、昭和の雰囲気を残した場所ではあります。

そしてなんといってもこの駅、その名もスバリ「採銅所」

かつてこの近くの香春岳で銅が採掘されていたことにより、ここは1889年から1956年まで採銅所村と呼ばれていた場所だったのだそうです。

駅舎はきれいにリフォームされていますが、昔ながらの形で残されています。

1915年開業なので、100年を超える歴史を持っています。

そしてこれが香春岳。こちら側から見るとなだらかで大人しそうな羊の顔してますよね。

ところがこの反対側、香春駅から見るとこんな感じになります。

山肌が削り取られて内部が露出してますが、カッコいいですよね。

僕にとっての筑豊のシンボルは、この香春岳。そして筑豊出身の作家、五木寛之さんの代表作である大河小説「青春の門」の冒頭も香春岳。

香春岳は異様な山である。決して高い山ではないが、そのあたえる印象が異様なのだ。

~五木寛之「青春の門」

良質な石灰が採れるため、山が削られ標高がかつての半分になってしまったと言われる香春岳ですが、僕だけじゃなくて、筑豊みんなのシンボルなのかもしれませんね。

生まれ変わった田川伊田駅

香春駅の次は筑豊炭鉱の中心都市のひとつであった田川市にある「田川伊田駅」

2019年に来た時も感じたように、広い構内に敷き詰めてあった線路が取り除かれてスカスカになっている姿を見るたびに心が痛むのですが、この田川伊田駅はずいぶん立派になっていました。

駅の中には田川伊田駅舎ホテル「俺たちの旅」

俺たちの旅ってなんだよ、昭和の青春ドラマみたいじゃんかよ!(とか思ってたらホントにありました)

キャッチコピーは「日本で一番ノスタルジックな駅の真上の、日本で一番駅のホームから近いホテル」

寝台車みたいな4人部屋から個室まで、わりとリーズナブルなホテルのようです。

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でも「俺たちの旅」って名前、あのドラマと何か関係あるのかな?

この田川、けっこうじわじわくるスポットがとても多い町なのですが、それはまた改めて別の記事で紹介しますね。

<2019年7月/2021年7月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください

平成筑豊鉄道/日田彦山線への旅

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