大分・日田市のはずれ、久大本線に「夜明」という駅があります。読み方はそのまま「よあけ」。
僕がこの夜明駅の存在を知ったのは中学生の頃。たまたま図書館で借りた本が、鹿児島の枕崎駅から北海道の広尾駅まで国鉄の一筆書き切符(発駅から着駅までの距離が最も長い片道乗車券。いわゆる最長片道距離切符)の旅をしているバックパッカーの旅行記で、これがめちゃめちゃロマンあふれる本だったのです。
その彼が一夜を過ごした駅のひとつにこの夜明駅があったのです。
夜明駅での夜明けだなんて、なんてロマンチックなんだ!
当時はまだ今みたいに自由に出かけることのできなかった僕は、いつかこの駅で本当に夜明けを迎えてみたいとずっと思っていたのでした。
夜明け前の夜明駅へ
2018年1月1日、未明。
その年の年末年始の旅行で九州に行くことを決めた時、そうだ、新しい年の最初の夜明けを夜明駅で迎えればいいじゃないか、と気づいたのでした。
そんなわけで前日の大晦日、日田駅前のホテルに泊まった僕は、当時不通だった日田駅から光岡駅までの区間の代行バスに乗り、夜明け前の光岡駅で久留米方面の列車に乗り換えます。
元旦の夜明け前の列車には、さすがにほとんど人影がありません。
次は夜明です。
そして間もなく2018年も夜明けです。
冬の九州は日の出が遅いので、朝の6時半近くといえども、まだ外は真っ暗。
九州とは言えども、夜明け前の盆地の日田は冷え込みも激しいので、しばらく駅の待合室に避難します。
夜明駅は無人駅ですが、おそらく地元の方のおかげでしょう、とてもきれいに整えられています。
駅舎の中にはなんと夜明のシンボルマークもありました!
夜明は人口約1000人の小さな集落。
かつては夜明小学校もあったみたいです。残念ながら廃校になっちゃったみたいだけど見てみたかったな。
夜明駅は「男はつらいよ」ロケ地
夜明駅と言えば「男はつらいよ」の第28作、「寅次郎紙風船」のロケ地となったことでも知られています。
寅さんが駅前旅館でフーテンの少女(岸本佳代子)と同室になってしまう設定となっているのが、この夜明駅。
駅舎内にはそのロケ風景の写真が残っています。
そして夜明駅には「夜明旅ノート」がありました。
この夜明ノートをモチーフにした物語は「夜明駅2018」として妄想紀行編に書いてありますので、まだお読みでない方はぜひ。
なお読後のファンレターは丁重にお断り申し上げておりますので、なにとぞご了承ください。
人生で一番記憶に残る夜明け
1月の九州の遅い朝も、7時を回るとようやくあたりはうす明るくなってきます。
これが2018年の、そして僕がずっと憧れてた、夜明けです。
夜明の集落も、ようやくその姿を見せてくれました。
夜明の駅前には、朝の蒼色の水をたっぷりと湛えた三隈川が見え、水面には真っ赤な夜明大橋が映りこんでいました。
夜明郵便局もいいですね。
昔、滋賀県の守山市にある浮気町(ふけちょう)という場所に行ったとき、浮気郵便局というのがありましたが、どちらもロマンあふれます。。。
夜明駅は久大本線と日田彦山線の分岐駅。
ホームの端に立つと、西へ向かう線路が15度のカーブを描きながら左右2つの方向に分かれ、2本の信号機の赤が青に染まってぼんやりと霞んでいました。
一つは久大本線として三隈川に向かって左へ、もうひとつは日田彦山線として英彦山に向かって右へ。駅のホームから、これほどはっきりと左右に線路が分かれていくのを見るのは初めてでした。
日田彦山線は2017年の集中豪雨の影響で不通となっていて、早晩廃止が予定されていますので、この分岐を見られるのもそんなに長くはないかもしれません。
僕が中学生の時にあの本を読んでから、いつか夜明駅での夜明を迎えてみたいと思ったのは、その駅の名前もさることながら、駅前から見える三隈川とかこの線路とか、きっとそんなことが書いてあったからなのでしょう。残念ながらその内容は忘れてしまいましたが。
2018年、新しい年の新しい1日もすっかりはじまったみたいです。
今まで生きてきた中で、一番記憶に残る夜明となりました。
<2018年1月1日 訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
夜明駅への旅
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