東京・上野にあるラブドール国内随一のメーカー「オリエント工業」。(当時は)そこに誰でも入れるショールームはあると聞いて一度行ってみたかったのです。
もちろん最初はB級スポット探訪のつもりで行ってみたのですが、実際に行って話を聞くと、ラブドールには意外にもアートで、かつ想像以上に深い存在価値があったのです。
残念ながら今は誰もが気軽に入れるシステムではなくなってしまったのですが、どうしてもそれを紹介したくて記事にしてみることにしました。
(基本的に真面目な記事のつもりですが、一部成人向けの内容や画像が含まれます。18歳未満の方、またこのような情報を好まない方はここでご退出ください。)
オリエント工業とは?
オリエント工業は1977年創業のラブドールメーカー。創業当初は「ダッチワイフ」メーカーと言われていましたが、現在は主にシリコーン樹脂を使用した高級ダッチワイフを「ラブドール」と呼んで区別しています。
ダッチワイフは、もちろん男性の擬似性交具として使用するものですが、創業のきっかけは実に真面目なのです。
当時創業者と親交のあった医師から、性行為を行うこともままならない障がい者が性欲をもてあましているのに風俗嬢にも相手にされず、強いペインがあるという話を聞き、優れたダッチワイフの必要性を痛感したことがそのスタートなのだといいます。
すぐれた事業とは、今まで解決できなかった誰かの強いペインを取り除くこと。
まさにその教科書通りのスタートですね。
そのため開業当時は障がい者以外には販売せず、購入時には障がい者手帳が必要だったのだそうで、その後も障がい者割引制度や性の相談なども受け付けているのだそうです。
その後、販売ターゲットも広げ、商品も飛躍的に進化しましたが、ユーザーが抱えるさまざまな事情や悩みを解決するために「人の心の支えとなる人形」を提供するというミッションは変わっていないのだそうです。
尊い人を亡くしたというユーザーの手記を元に「いつも一緒に寄り添って離れないように」というコンセプトで命名された「面影」。そんな話を聞いてダッチワイフだとバカにできますか?
オリエント工業ショールームへ
今は完全予約制になってしまいましたが、かつては入場料を払えば誰でもオリエント工業のショールームを見学することができました。もちろん今も事前に予約をすれば入ることはできるのですが、入場は無料なので、購入を検討するガチな人が行く場所として目的を変えたのだと思います。
僕は購入の意思はなかったのですが、それでもひとりで行ってあれこれ勧められると困るので、近くに住むワンダースポット仲間の女子を誘ってみると
ラブドール!そんなの一生見る機会なさそうなので楽しそう!!
と、ノリノリでOKだったので、付き合いも長くなり、そろそろ何か刺激がほしいカップルに擬態して訪問してみました(それってよく考えると購入目的に見えるけど!)。
山手線の御徒町駅から昭和通りに出て小さな雑居ビルの3階に上がると、そこがショールームの入口。
当時は入場料一人1000円。けっして安くはないですが、無料で冷やかし客がわんさか来たら、ガチの購入希望者が寄り付かなくなってしまうので、これくらいのハードルはあってもいいと思います。
中に入ると「どーん!」
という感じでもなかったですが、手前にラブドールを使ったアート作品のギャラリーがあって奥にショールームや購入のための相談室がありました。
ギャラリーに展示されている作品はそれぞれ限定1点ものですが、購入することもできます。
入ってすぐのところにある豪華絢爛な「花魁道中」。おねだんなんと280万円(税別)。
そしてギャラリーの中でもっともインパクトがあったのが、蛸と海女、120万円(税別)。
これは葛飾北斎の同名の春画をモチーフにした作品。
なんかこれはもう、アートですね。
実際にオリエント工業は都内のギャラリーにラブドールを出展することもあるのですが、お客さんは8割がた女性だそうです。
これはぜんぜんアートではありませんが、おっぱい型の卓上ドリンクサーバー「モンデノーム」。
片方のおっぱいを揉むと、もう片方のおっぱいからお酒が注がれる、というからくり。
ネーミング、そのままやん!
わたし、一度女性のおっぱい揉んでみたかったので、風祭さんお酒をグラスで受けてください
わ、なんか出てきた!
パーティーイベントや夜のお店などでの話題づくりに最適なんだそうですよ!
ラブドールの並ぶショールームへ
ギャラリーの奥は実際のラブドールが並ぶショールームになっていました。
おっぱいを揉みながらわーわー言ってる僕たちは、どう考えてもガチで購入を考えているようには見えなかったと思いますが、ショールームエリアに入ると、スタッフの男性が側にきていろいろと説明してくれました。
ちょっと触ってみてください!
わ、弾力!
人間の肌ほど柔らかくはないけど、生身感あるね
それもそのはず、この一番リアルな「やすらぎ艶」というタイプのラブドールは女性から直接型どりをしているのだそうです。
ユーザーの方にとって、ラブドールは愛する女性と同じなんですよ
オリエント工業では、ラブドールをユーザーに届けることを「嫁入り」といい、長年連れ添ったラブドールを処分するときも、希望があれば「里帰り」として引き取って1体1体供養しているのだそうです。
表情やウイッグもいろいろなタイプのものを用意していて、その他にも肌の色や香りの有無、血管の造形まで選択できるのだそうです。
じゃあ実在の人そっくりに作ることもできるんですか?
もちろん技術的にはできるけど、それはお受けしてないんですよ
写真だけでは全身のリアルな再現は難しいし、全く新しいものをカスタマイズして作るのには相当な手間と時間がかかるので現実的には難しいのでしょう。それに相手の許諾もなく、分身のようなラブドールを作るのは道義的にもNGな気がします。
ちなみにこんな映画があるのはご存じですか?
これは高橋一生さんが演じるラブドール職人とその妻(蒼井優さん)のお話ですが、その中で「実在の人をラブドールとして作る」シーンが描かれています。ネタバレになるのでここでは書きませんが、ラブドールは、ある人にとっては愛する人そのものなのだ、ということがわかる映画です。もちろんオリエント工業もこの映画に協力しているそうです。
こちらは童顔で身長130~140cm台の女の子たち。
ロリータ向けの女子なのかと思ったのですが、ラブドールは想像以上に大きく感じるようで、実際はこのくらいのサイズのほうがフィットするユーザーも多いのだそうです。
いろんな偏見はまだあるけど、社会貢献の一つとしてのラブドールの存在をもっと知ってほしいんですよ
なのでショールーム内はすべて撮影OK、SNSでの発信も自由ということでした。ショールームに来たお客さんのブログを読んでいても、こうした説明を受けているからか、エロ目線だけのものはほとんどない気がします。
そういう意味では、購入目的ではなくても、女性がこうやって興味を持ってきてくれるのはうれしかったみたいで、お土産もたくさんもらいました。
ラブドール、想像以上に深い存在でした。
もしかすると将来はAIで会話やコミュニケーションが可能になる日も来るかもしれません。そうなった日には、彼女たちを必要とするユーザーにとって、愛する人としてさらに欠かせない存在になるのかもしれませんね。
<2023年9月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください ※2023年11月以降は完全予約制となっています
オリエント工業への旅
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