僕の「行ってみたいリスト」に「焼尻島 世界一のサフォーク(羊肉)」というメモでずいぶん昔から記載されながら、なかなか行く機会がなかった北海道、道北の離島「焼尻島」。
ところが島内の羊牧場が閉鎖されることになり、「幻の羊肉」といわれる焼尻の羊が、もう食べられなくなるかもしれない、というニュースがあり、慌てて焼尻島へと渡ったお話です。
※その後、羊牧場の存続が決まったので、今でも焼尻島で幻の羊肉は食べられます
焼尻島の羊牧場が閉鎖?
僕のようにレトロ喫茶やレトロ百貨店、そしてレトロラブホなんかをめぐっていると、「いつか行ってみたい」と思っているうちに、永遠にその機会を逃してしまうことがよくあります。
しかしまさか焼尻島を代表する名物「幻の羊肉」がなくなってしまうなんて思いもしませんでした。
そのニュースがこれ。
島唯一の「めん羊牧場」が人手不足により閉鎖されてしまうというのです。
この牧場で飼育される高級品種「サフォーク」が幻の羊肉だ、という記事をかつてなにかで読んだのでしょう。僕の行きたいところリストには「焼尻島 世界一のサフォーク」というメモがかなり前から書いてありました。
いつまでもあると思うなレトロラブホと幻グルメ。
そんなわけで焼尻島へ行くことにしたのですが、これがまた大変なのです。
いざ、焼尻島へ
焼尻島は北海道北部、羽幌町にある離島。
利尻島・礼文島より100キロほど南に位置しているのですが、空港のある稚内からフェリーが就航する利尻礼文にくらべると、交通アクセスはかなり不便です。
東京からだと通常はその日のうちに着けず、到着まで2日必要。
おまけに近くにメインとなりそうな観光地はないので「3~4日くらい焼尻島(と隣の天売島)のためだけに時間を費やしてもここに行きたいんだ!」という意思がないと行けない島なのです。
フェリーは羽幌から焼尻島経由天売島行きとして運航されているため、天売島とセットで訪問する観光客がほとんどだと思います。
羽幌から焼尻まではフェリーで1時間、高速船だと35分(焼尻から天売まではフェーリーで25分、高速船15分)。
船を運航する羽幌沿海フェリーの船体には謎の萌えっ子キャラが描かれていますが、話すと長くなりそうなのでここでは割愛します。
これが焼尻島が外とつながる唯一の場所、焼尻フェリーターミナル。
「天の贈り物 オンコの島」と大きく書いてありますが、このオンコがなんだかわかりません。
レンタサイクルでオンコ探索へ
焼尻島にはバス、タクシーなどの公共交通機関はありません。そのため徒歩以外で唯一の移動手段はレンタサイクル。フェリーターミナルの間の前にありますので、迷わず電動自転車を借りてください(坂がおおいです)。
自転車を借りると、手書きのこんな地図がもらえますので、この矢印に沿って行けば観光時間も含め2時間くらいで島一周できます。
港の裏手から坂を登って、民家が続く道をしばらく行くと「オンコ原生林入口」があります。
来たなオンコ、「天からの贈り物」って言われるくらいだから相当妖艶な姿で俺を誘惑しようと待ち構えてるに違いない。
そんなふうに胸いっぱいの期待でペダルをこいでグングン坂を登ると現れたのはこんなやつ。
奇木「亀の木」!これが憧れのオンコなのか?
実はオンコというのはイチイの木のアイヌの呼び方。
イチイは大きいものは15~20mほどにもなるのですが、焼尻島のオンコは、地を這うように低いのが特徴。海から吹き付ける風が強く、雪も積もって重くのしかかるため、高くなることができないのだそうです。
この島の気候の厳しさを物語っていますね。ぜんぜん妖艶な天からの贈り物じゃなかった!
オンコの森を抜けると島の最頂部の台地に出ます。オンコ海道と呼ばれる道がまっすぐに続き、実に気持ちのいいサイクリングができます。
道端には見慣れないたくさんの野の花が咲いています。さすが最果ての陸の孤島!
とか思って調べてみたら、これはオオマツヨイグサ(大待宵草)というわりとよくある花でした。
でも夜に開花し「打ち明けられない恋、無言の恋、自由な心、美人、うつろな愛、移り気な人」という花言葉を持つなんて、こっちが僕を待っていた妖艶なやつだったのかもしれません。
焼尻島めん羊牧場のサフォークたち
やがて島の西端にある鷹の巣園地と呼ばれる景勝地に到着します。
隣に見えるのは17キロ先にある天売島。
ここから海岸沿いの道を東に戻り、白浜野営場から少し高台に上るといよいよ焼尻島のめん羊たちが現れます。
焼尻島の羊はサフォークと呼ばれるイギリスサフォーク州原産の肉用種で、頭と四肢が黒いのが特徴。
生産量が非常に少なく、入手困難な羊肉で、肉用種としては最高品種に値する羊と言われています。
北海道といえばジンギスカンが有名ですが、意外にも海外からの輸入が多く、国産のサフォークが食べられることは稀なんだそうです。
焼尻島にはキツネや蛇などの天敵がいないので、ここのサフォークたちは、ストレスなく、のんびりと栄養たっぷりの牧草を食べて育つことができるため、世界最高峰のラム肉に匹敵する品質になるのだそうです。
その羊たちが育つめん羊牧場が廃業され、焼尻産の貴重なサフォークが食べられなくなるなんてもったいない。なんなら牧場ごと買い取ってみようかな、と思ってやってきたわけです(意気込みだけ)。
この風景が日本から消えてしまうのも惜しいですしね。
「島っ子食堂」でいよいよ幻の羊肉、実食!
郵便局や旅館、郷土資料館などがあるメインストリートが現れると島をほぼ一周したことになり、フェリーターミナルに戻ります。
焼尻サフォークが食べられるのは、フェリーターミナルに隣接する「島っ子食堂」。
店内はカウンター数席がある程度ですが、サフォークの焼肉はテラス席に炭火を入れてここで食べることができます。
これが焼尻島サフォーク定食、2500円。
離島の定食にしては高いのでは?と思うかもしれませんが、北海道でも札幌のフレンチレストラン「ミクニサッポロ」、東京だとミシュラン星付きレベルの高級レストランでしか食べることができない希少な肉をこの値段で食べられる、と考えれば安すぎる感じです。
身が締まっていて新鮮な感じはしますが、ほんとうに「世界一」「幻の羊肉」なのでしょうか?
マジでうまかった!
食感は見た目よりもずっとやわらかく、それでいて歯ごたえもあり、羊肉のクセもないのですが、噛むと天然の滋味のようなものがじわっと口の中に広がります。
味付けは塩コショウのみですが、それでじゅうぶん。
これを食べるためだけに焼尻島に来る人も多いと聞きますが、まさにその価値があると思います。
このお肉が食べられなくなっちゃうのはもったいないですね・・・
私たちもびっくりしてるんだけど、どうなるのかねえ。
当時はめん羊牧場閉鎖のニュースで持ちきりだったので、帰り際に話した食堂のおばちゃんも困惑気味でした。
が、その後、めん羊牧場が民間の会社に継承され、存続するといううれしいニュースがありました。
これでまた当面は焼尻島で世界一の幻の羊肉を食べることができます。
それでもレトロなもの、幻と言われるものはいつ突然その姿を消してしまうかわかりません。
いつまでも、あると思うな焼尻サフォーク。
ぜひ皆さんも、早いうちに焼尻島までこの幻の羊肉を味わいに行ってみてください。
<2023年7月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
焼尻島への旅
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