栃木の岩下の新生姜ミュージアムがクレイジーだ、といううわさは前々から聞いていた。
なんでも企業の公式ミュージアムのくせに、今や次々に消えてなくなっている昭和遺産の秘宝館並みに攻めてるというのだ。
これはぜひ行かなくては、と思っていたところ、僕のオフィスのその年の社員旅行がたまたま日光・宇都宮方面だった。
そんなわけで、帰り道のトイレ休憩場所として強引にその日程にねじ込んだのである。
岩下の新生姜ミュージアムは真面目な企業ミュージアム
1泊2日の社員旅行、日光からの帰り道。
僕たちが乗った貸切バスは東北道の栃木ICを降りて渋滞気味の一般道をノロノロと進んでいた。
「トイレ休憩なのになんでわざわざIC降りてこんなに寄り道するのー?」
女子チームが騒いでいる。
うるさい。もうちょっと待て。
もうすぐおまえらのハートを12年と3か月ぶりくらいにドキドキときめかせてやるからベイベー。
そう、これはサプライズなのだ。行先は一応告げてあるけど、みんなその内容はたぶん全然知らないはずだ。
やがて独特の色合いの看板が見えてきたぞ、岩下の新生姜ミュージアム。
ここは「岩下の新生姜」を主力商品とする「岩下食品」の企業ミュージアムなのでもちろん無料。
一般的に企業ミュージアムと言えば、その企業の歴史や商品を紹介する展示があったり、工場見学ができたり、試食試飲ができたり、お土産ショップがあったりするもので、まあときどきそれなりに面白いものもあるけど、わざわざサプライズさせるような立ち寄り方はしない。
12月の夕暮れは早い。午後4時前、薄暗くなりつつある中、バスを降りたメンバーの98%は早く家に帰りたい、と思っているはずだ。
正面玄関前の巨大なピングのモニュメントを見て、初めて「あれ、ここどこだっけ?」と数人のメンバーが建物の名前を確認する。
中に入ると季節柄、巨大なクリスマスツリーが飾られている。
(。´・ω・)ん?
なんかちょっと生々しくないか?
かわいいふりしてもダメだぞ!
これどー考えてもあかんやつっぽくないか?
しかしこの企業ミュージアム、これが生姜だ!と言いやがるのである。
いや、生姜なら生姜でもいいけども、このテカリとか、ときどき飛び出てる突起とかは何とかしてもらえないものか。
さっきまでバスでの昼寝を邪魔されてぶーぶー文句言ってたおっさんの目が急にギラギラし始めただけじゃなく、女子たちの目ヂカラが早くも柴咲コウレベルに達しているではないか。
「い~わしたの~しんしょ~が!」でお馴染みですか?
岩下の新生姜と言えば、CMで「い~わしたの~しんしょ~が!」というメロディでお馴染みなんだという。
恥ずかしながら私はそのCM、身に覚えがないのである。
いや、岩下があまりにもヤバそうな会社なので、実はおまえ知らないふりしてるだけだろう、とか言われても本当に困るのである。
そんなわけでどんなCMがあるのかちょっと調べてみた。
やっぱり初めて見た。
しかしもし本当は知ってたとしても、やはり知らないふりをすべき内容であったので、知らなかったことを幸運に思いつつ、先に進むことにする。
そういえば館内には「ご自由にお使いください」的にこんなものが置いてあった。
バカを言ってはいけない。
これをこんな真っ昼間っからみんながいる前でどうやって使えというのか!
こんなもの手に取ることができるやつの気が知れないよな、とメンバーに話しかけようと振り返ってみた。
なにやってんだ、おまえら!
しかも舐めるふりとかするな!
新生姜の部屋とか、ジンジャー神社とか
あやうく我が社の女子チームのお里が知れそうになったけれども、よくよく聞いてみるとこれは「新生姜ペンライト」なのだそうだ。
どう考えてもペンライトをこの形にする必然性を全く感じないのだが、スイッチを押せば確かに光るので、ペンライトだと言い張られれば、そう認めざるを得ない。
OKわかった、これはペンライトだ。余計な妄想をした私が悪かった。
気を取り直して先に進むと今度は「新生姜の部屋」なるものがある。
これはTDLとかサンリオピューロランドとかによくあるかわいい女の子向けの部屋に違いない。
そうかようやく企業ミュージアムらしく本気出してきたか、岩下の新生姜。子どものうちから企業イメージを刷り込むのはブランド戦略上大切なことだよな。
は?それでいいのか新生姜!
胸をときめかせてこの部屋に入ってきた子どもたちは、死ぬまでこの絵面を忘れないと思うぞ。
コンセプトは「新生姜とラブラブなひと時を過ごせる!」
部屋の住人「新生姜」と一緒に恋人気分を味わえるお部屋なんだそうだ。
もしも私が同僚女子と一緒にこの椅子に座って撮った写真が流出したら、風祭B級ラブホ事件として米騒動以来の暴動がおこるに違いない。
さらに進むと今度は神社があったぞ。
その名も「ジンジャー神社」。
はっはっはっはっは!もうそれくらいでは全く驚かない私だぞ。
祀られているのはもちろん生姜の神様。
生姜の効果で夫婦や恋人の仲もポカポカアツアツになることにより、恋愛成就だとか、夫婦和合だとか、安産祈願だとか、その他もっとすごいこととかがご利益だそうだ。
・・・というかどうした、はるな!
すてきな新生姜って、どないやねん!
クリスマスプレゼントにぶっ太くって固ーい、、、とか、
おまえバカなのか、あやか?
はるなとかあやかとかいう名前の女子がうちのチームにいないことを祈る。
それでも真面目な岩下の新生姜ミュージアム
もともとこの建物は「岩下美術館」といって、先代社長の趣味だった美術品を展示するスペースだったのだそうだ。
今の社長に世代交代した際に、改装を考えたのだが、栃木に漬物のミュージアムなんかがあってもきっと誰も来ない。
だったら誰もが来たくなるようなぶっ飛んでるミュージアムにした方がいいんじゃないか、ということでこんな形になったというわけだ。
だからここ「真剣にぶっ飛んでる」のである。
フード、ドリンク、スイーツまで、すべてのメニューに「岩下の新生姜」を使用した「CAFE NEW GINGER」。
ミュージアムショップにもオリジナルのお土産がたくさん。
健康への願いを込めた魔法の杖「ジンジャーステッキ」で、カラダの中を巡りながら、いろいろな場所に元気の魔法をかけていくゲーム「ジンジャー・ツアーズ」。
1分以内にゴールできたあなたは、健康が約束されるが、誤って鉄の境界線に触れてしまうと軽く電動的な快感を味わうことができる電気ショックがあるという(テキトー)。
クリスマスシーズンだったので、途中でプロジェクションマッピング的なショーもあった。
高さ5m、世界一大きな新生姜のかぶりもののスクリーンに、例の固くて太っとい新生姜が何千本もにょきにょき生えてきたりする実に不思議なショーだったが、まあ無料だ。
ときどき生バンドのショーなども行われているという。
ということで、このミュージアムが実に真剣な企業ミュージアムであったことがご理解いただけただろうか。
機会あれば、ぜひみなさんもつまらない企業ミュージアム見学のふりをして、同伴者をめくるめく新生姜の世界にいざなってほしい。
ちなみに今回の社員旅行でもっともよかったと評価されたのは、圧倒的にこの岩下の新生姜ミュージアムであったことを付け加えておく。
<2018年12月訪問> 最新の情報は公式サイト等でご確認ください
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